西澤保彦 39

腕貫探偵

市民サーヴィス課出張所事件簿

2013/06/24

 ……うーむ。面白いとは思うが、何だろうこの微妙な空気感は。これはまるで……。

 文庫で平積みになっていた西澤保彦作品を手にとってみたわけである。さて、「腕貫」ってご存知だろうか。「腕抜き」と表記したり、「腕カバー」と呼ぶ方が多いだろうか。事務仕事の際、シャツの袖が汚れないように、筒状に覆うあれのことですね。

 本作の探偵役は、「腕貫探偵」のタイトル通り、今時ほとんど見かけない黒い腕貫がトレードマーク。この腕貫男は、なぜかあちこちで市民サーヴィス課臨時出張所を開いている。神出鬼没なのである。そもそも本当に市の職員なのか怪しい。全7編、たまたま通りかかった人が腕貫探偵に相談するというパターンが繰り返される。

 「腕貫探偵登場」。大学生が酔い潰れて目覚めると、そこには顔見知りの死体が。慌てて警察に通報すると…。初登場に割には、何だこの存在感のなさは。「恋よりほかに死するものなし」。恋愛に年齢制限はないけれど、知らぬが花ということもある…。

 「化かし合い、愛し合い」。律儀に答える腕貫探偵もどうかと思うが、勝手にしろ。後日談を読みたいような読みたくないような…。「喪失の扉」。軽いタッチながら内容はかなりブラック。腕貫探偵を見かけてしまったばかりに…。

 「すべてひとりで死ぬ女」。捜査情報をペラペラ話す刑事もどうかと思うが、あまりにも不運というか何というか。「スクランブル・カンパニィ」。社内でも悪名高いプレイボーイの2人。しかし、相手が強敵すぎたね。「明日を覗く窓」。何だよこのまとめ方…。

 本格として読んだらいずれもアンフェアだが、一応理屈は通っているか??? 人物の背景など妙にディテールに凝る割には、読後感、納得感は微妙。そう、これって蒼井上鷹作品とよく似ているではないか。そして何より、腕貫探偵の掴みどころのなさ。一言のアドバイスで済ませたかと思えば丁寧に説明することもあり…。有能ではあるのだろうが。

 でも、不思議とまた読みたい気にさせられるのも蒼井上鷹作品に似ている。



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