乃南アサ 36





2007/03/12

 タイトルの「躯」という字は、正確には正字体で表記する(JavaScriptで別ウィンドウが開きます。15秒後に閉じます)。

 積読している本の中から、何か読むものはないかと物色していたところ、目に付いたのが本作である(かなり失礼)。タイトル通り、臍、膝、髪、尻、顎と体の一部をテーマにした作品集だが、乃南アサが食えない作家であることを久しぶりに実感したのだった。

 「臍」の整形手術を娘にせがまれた母親。ところが母の方が美容整形にはまり、目尻の小皺を取り、瞼のたるみを取り、顎の脂肪を取り、どんどんエスカレートしてやがて体が崩れきゃあああああ…というオチかと思ったらこんなオチですか…。

 怪しさという点では本作中No.1、「血流」。膝フェチサラリーマンかと思ったら、もっと悪質な行為に走り、家庭にトラブルが持ち上がり、結局どういう話やねん…。

 ア〇〇ン〇やらアー〇〇〇〇〇ーやら〇ー〇21やらに頼っても無駄という現実を突きつける「つむじ」。もがいた挙句の結末にリアリティがありすぎて、男の悲哀漂う一編。乃南さん性格悪いっす…。自分がこういうことになったら潔くしよっと。

 望まぬ形で東京の私立高校へ進学した弘恵。民間の学生会館で言われた一言が「尻」に火を着けた。個人的に、モデル体型って苦手だ。やせすぎモデル規制には大いに賛同する。なるほど、結末だけならホラーだが、これまたリアリティありすぎ…。

 さてどんじりに控えしは、中卒で家を飛び出し行く当てもない少年の苛立ちが弾ける「顎」。このお方に裏切られたのは一度や二度ではないが、最後にこんな話を持ってくるセンスに恐れ入った。だってさ、普通にボクサーの成長記でしょこれは…。

 つくづく芸の幅が広いもんだ。乃南アサさんの作品をもっと読んでみよう。



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