貫井徳郎 04 | ||
天使の屍 |
貫井作品としては、ずいぶんとあっさりしているような。さくさくと読み進められた。相変わらず、どろどろとしているのだが。
本作は簡単に言ってしまうと、自殺した中学二年生の父親が息子の自殺の真相を探るという物語である。同級生たちに話を聞こうとする父親。しかし、一人、また一人と同級生たちが自殺を図る。
本作に登場する若き教師は、諦観が滲んだ言葉を漏らす。子供には「子供の論理」があって決して大人にはわからない、と。確かに、本作で自殺を図った子供たちの論理は、僕の理解をはるかに超えている。そんな理由で、あっさり自殺に踏み切れるものか?
一方で、奇妙に現実感を伴ってもいる。昨今の少年が関わる様々な事件の報道を耳にするにつけ、こんな事件が起きてもおかしくないような気もする。不可解な事件の数々に、大人は何とか動機付けをしようとする。しかし、彼らの論理は彼らにしかわからない。もしかしたら、彼ら自身にもわかっていない。
自分の中学時代を思い起こすと、そんなに将来のことで思い悩んだ覚えはない。田舎育ちだし、受験戦争なんてものには無縁だったのは確かだが。しかし、何でも環境に転嫁してしまうのは疑問に思う。罪は罪として、はっきり認識させなければならない。やり直しが可能なうちに。
本作を読んでいて、中学の教師をしている妹のことが頭に浮かんできた。妹の苦労が、心底しのばれる。僕には「子供の論理」に立ち向かう自信はない。「大人の論理」も誉められたものじゃないのだが。
最後に、一言苦言を呈すると、結末が綺麗にまとまりすぎかな。