修羅の終わり |
〜謎解き編〜 |
第一の物語「久我編」と、第三の物語「真木編」の繋がりについては、ラストで明らかになる。年代は同じ1971年。改めて言うまでもなく、公安刑事の久我が、先輩の藤倉に命じられるままに芝浦の空き倉庫で犯した女が、真木俊吾の自殺した姉である。
真木は、山瀬から姉の仇である久我の名を教わり、復讐を誓う。久我が藤倉に「蛆虫としての生」を与えてアパートに帰り着いたところに、真木が襲い掛かる…というところで物語は終わる。
山瀬なる人物は、初めから真木を利用するつもりだったのだろう。真木の元へ小織を差し向けたのも、もしかしたら山瀬かもしれない。「斎藤」と「斉藤」の違いには気付かなかったが…。
第一と第三の物語だけでも、十分に作品として成立する。では、年代が1992年と大きく異なる第二の物語「鷲尾編」は、どのように繋がるのか。ここからは僕の推測だが、久我への復讐を遂げた真木は、20年以上も捕まることなく逃げ延びたのだろう。ラスト近くに、こんな一節がある。
「だから今こそ、僕は逆襲する。…(中略)…すなわち僕の戦いの開始なんだ。」
警察官を懲戒免職になった鷲尾に接触してきた白木なる人物こそ、1992年の真木俊吾だったのではないか。鷲尾が懲戒免職になるよう、警察の公安部と結託して根回しする。なおかつ、鷲尾の腹の中の「蟲」に付け込んで、警察関係者への傷害行為へ、ついには爆弾テロへと走らせる。白木こと真木俊吾は、憎むべき警察へ、そして社会への復讐のために鷲尾を利用したのだろう。
真木の復讐は、未だ終結してはいないに違いない。望み通り(真木の思惑通り)大輪の「華」を咲かせた鷲尾は、いずれ逮捕されるだろうが、真木にとってはただの捨て駒に過ぎない。もしかすると、未だ復讐心をたぎらせた真木は、あなたのすぐそばに潜んでいるのかも…しれない。