貫井徳郎 06

崩れる

結婚にまつわる八つの風景

2000/07/23

 貫井さんは、本作に収録された8編を書いている途中で結婚されたそうである。貫井さんご本人は、もちろん本作に描かれたような結婚生活を送ってはいないだろうけど。本作は、サブタイトル通り結婚をテーマにした短編集であるが、貫井さんが書くからには希望や喜びに溢れた作品ではないのは言うまでもない。

 冒頭の「崩れる」から、いきなりガツンと一発。ダメ亭主とダメ息子を抱え、家事とパートに疲れ果てる妻。専業主婦の苦痛が余すところなく描写されていて、男としては何とも居心地が悪くなる。

 ところが続く「怯える」は…これ反則だよ、貫井さん。世の夫に反省を促す作品だとだけ言っておこう。さらに「憑かれる」に至ると…こういう話は嫌いじゃないけど、貫井さんが書くとは意外である。この2編だけは本作の中では異色作だ。

 その後も笑えない話が目白押しだ。「追われる」はそのまんまストーカーの話である。このエンディングはまじで怖いぞ。「壊れる」は『失〇園』の作者に読ませてやりたいね。「誘われる」はこれまた夫に反省を促す、とっても切ない話。「腐れる」もそのまんまだな…。こ、怖いよお…。

 そして、ラストの「見られる」は、本作の締めくくりに相応しい好編(?)だ。これは男女を問わずに鳥肌が立つ。僕自身も学生時代にやっていた覚えがあるので、反省しないと…。僕が言う資格はないのだが、マナーは守りましょう。

 テーマがテーマだけに、とにかくリアリティがあること…。基本的に男性のだらしなさが際立っているので、女性と男性では受け止め方は違うかもしれないが、妙にうなずける作品集である。そして、改めて貫井さんの実力に唸らされる。

 きっと貫井夫妻の仲は円満なんだろう。末永くお幸せに。



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