貫井徳郎 08


鬼流殺生祭


2000/06/11

 本作の裏表紙には、京極夏彦、山口雅也両氏による賛辞が掲載されている。それを読んで、僕の期待は大いに高まった…が、内容は色々と疑問が残った。

 舞台は、維新後間もない「明詞」七年の帝都東京。霧生家の屋敷で、留学から帰国したばかりの青年軍人が刺し殺される。彼の友人であり、つい先日に帰国した彼を出迎えたばかりの九条惟親(くじょうこれちか)は、行きがかり上事件の解決を依頼される。事件は混迷を極め、さらなる惨劇が起こる。九条は、病気がちの友人朱芳慶尚(すおうよしなお)に助言を求めるが…。

 本作を読んで、僕は京極さんの一連のシリーズとの類似性を強く感じた。九条惟親に関口巽を、朱芳慶尚に京極堂こと中禅寺秋彦を重ねて見てしまったのは、果たして僕だけだろうか? 九条は関口ほど鬱病気味ではないし、朱芳は京極堂ほど偏屈ではないけれど、二人の役回りは酷似している。ましてや、〇〇〇〇原理の話題まで持ち出されては。

 肝心の事件の方も、霧生家の人間関係が京極堂シリーズの某作品とかなり似通っていないか? 時代設定にしても、京極堂シリーズは大戦後、本作は維新後。共通点があまりにも目に付く。

 本格としては良くできた作品だと思う。霧生家が〇〇〇〇〇の一家だという真相には驚いた。と言うより、まったくそんな発想は思い浮かばなかったのだが。少々アンフェアじゃないのかと思う点もあるが、僕が鵜呑みにしただけのことである。

 僕が京極作品を読んでいなかったら、もっと楽しめただろうし、感想も違っていただろう。その点は残念ではある。しかし、京極堂シリーズのイメージと重なってしまうのは、如何ともしがたい。パクリではないのだろうけど…。



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