貫井徳郎 31 | ||
北天の馬たち |
貫井徳郎さん曰く、友情についての物語を書きました、嘘も裏切りもない本当の友情です、とのこと。なるほど、これほどまでの直球勝負は大変珍しい。
横浜の馬車道近くで、母親と共に喫茶店を「ペガサス」を営む毅志。ある日、空室だった「ペガサス」の2階に2人の男が入居し、探偵事務所を開いた。タイプは違うがそれぞれにスマートな2人、皆籐と山南に、毅志は憧れを抱く。
頼み込んで仕事を手伝わせてもらうことになった毅志。だが、その初仕事は奇妙なものだった。どう奇妙かは書けないが、探偵の仕事を逸脱している。決して人付き合いが得意ではない毅志は、彼なりに懸命に任務に取り組むのだった。
2つ目の仕事はさらに奇妙だった。ずいぶんと回りくどい手段に出たものだ…。鈍い僕でも色々疑問を感じたくらいだから、当然毅志も疑問を感じるわけである。2人は何かを隠している…。背景には、2人の探偵とある女性との絆があった。
その絆に、自分が決して割って入れないことに、毅志は打ちのめされる。そして彼は独自調査に動く。危険な目に遭っても挫けない。彼を突き動かしたのは、嫉妬なのか、見返したい反骨心なのか、あるいは認められたい焦がれるような心なのか。
努力の甲斐あって(?)、毅志はようやく2人の意図を知る。一般人にもすっかり有名になったあの団体をモデルにした点は、興味深いアイデアだ。その団体に詳しいライターの話を聞くにつけ、どうやって立ち向かえばいいのか、術がないように思える。
最後はこうなっちゃうんだろうなあと、毅志も読者の僕も予想できた。そしてその通りになり、正直なところ釈然としなかったし、友情を全うした2人に拍手を送る気にもなれなかった。最初は一応スマートにやっていたのに、こうするしかなかったのか。
最後の最後まで直球すぎて、意外性がないのが意外という作品だった。