沼田まほかる 05 | ||
痺れる |
沼田まほかるさんの初の短編集が文庫化された。まほかるは、短編こそ凄かった! という煽り文句に乗せられ、手に取ってみた。
最初の「林檎曼荼羅」は長編に近いサスペンスタッチな1編。登場する母は認知症らしいが、不可解な言動の裏には…。うまいけど、長編ネタを無理に短編にアレンジした感がある。「レイピスト」。男性読者としてはそのまんまとしか言いようがない。多恵子に救いはあるのか? というより、救い有無など論じる意味はない。
「ヤモリ」。タイトルと内容があまり関係ない気もするが、本作中出色の出来。どちらかといえば、美沙子と若者の交流記かと思っていたら、最後に…。「沼毛虫」。曽祖母が語った話はどこまでが真実か。結局沼毛虫とは何? どちらかといえば、とギッツァンと綾乃の交流記…なのかな…。本作中唯一、割り切れない謎が残る1編。
「テンガロンハット」。実際にありそうという点で、最も怖い。新手の悪徳商法ではないか。しかし、立件は難しそう。このままエスカレートしたところを読みたかった気も…。「TAKO」。これまた男性読者としてはそのまんまとしか言いようがない。ローマ字表記の方が卑猥な印象を受けるのはなぜだろう。比呂美に救いは…ないよなこれ…。
「普通じゃない」。こういうご近所トラブルも実際にありそうだが…オチといい、全体的にはブラックジョークの範疇か。暗闇に光る○○○とか、笑うしかない。「クモキリソウ」。シチュエーションは「テンガロンハット」とやや似ているが、嫌悪感ははるかに高い。あんな設定やこんな設定は必要なのかという気がするが、結末があんまりだ…。
最後の「エトワール」。不倫関係らしい男女を描いた、本作中最も俗っぽい1編。当然ドロドロの展開に…って、何だよそのオチはっ!!!!!
確かに短編もすごかった。どうして真夏に文庫化するかね…。嫌な短編の名手としては乃南アサさんが思い浮かぶが、有力な対抗馬が現れた。解説の池上冬樹氏は、僕と違い愛や温かさも読み取っているようだが、「嫌さ」を徹底追求してほしい。