荻原 浩 21


ちょいな人々


2008/11/09

 長編を立て続けに読むと、短編集で息を抜きたくなる。というわけで、荻原浩さんの最新短編集を手に取った。タイトル通りのちょっとしたお話かと思ったのだが。

 突然のカジュアルフライデー実施に、中年社員が右往左往する表題作「ちょいな人々」。なるほど、「ちょい」ってそのことね。巷ではちょい悪オヤジはもう時代遅れらしいが。毎日がカジュアルな技術系社員の僕に、今さらスーツ着用の職場は無理です。

 隣家同士の仁義なき「ガーデンウォーズ」。庭があるっていいねえ。最近の建売住宅は庭なしも多く、こんなことも起きないのだろう。そんな隣家が手を結んだ理由とは。

 大吉のおみくじはいつまでも財布に忍ばせ、今日の占いカウントダウンを気にする小市民。行列のできる「占い師の悪運」が尽きた理由とは。商売と割り切るには、その質問は重すぎた。某スピリチュアルカウンセラーは、この質問にどう答えるか?

 ちょっといい話を集めた本作中では異質な「いじめ電話相談室」。大人に頼れないから電話するのに、元校長の言葉はそこいらの啓蒙書のようにおざなりだ。聡子のやり方が正しいとは思わないが、じゃあどうすればいい? 考えさせられる1編。

 続く2編はセットで笑おう。空前のペットブームの中、「犬猫語完全翻訳機」は市場に受け入れられるのか? モニターの声は…まあ、知らぬが花ですな。しかし、それ以前の盲点が…。身に覚えがある飼い主は多いのでは。iPhoneブームの中、フィンガレスホンの「正直メール」は市場に受け入れられるのか。電話で済むこともついメールに頼りがちな現代人。こういう認識技術はまだまだ不完全だよねえ。この会社の将来はいかに。

 阪神ファンの彼と、「くたばれ、タイガース」という巨人ファンの父。球界の人気No.1の座が阪神に移って久しい昨今、無事にゴールインできるのか?

 そして我が家は、横浜F・マリノスの不調に振り回されているのだった。



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