岡嶋二人 08 | ||
チョコレートゲーム |
何だか可愛らしいタイトルである。しかし、中身はタイトルとは裏腹に重い。その実体は、百万円単位の金が絡んだ危険なゲームだった。
名門秋川学園大付属中学3年A組の生徒が、次々に惨殺される。事件は、実行犯の自殺という形で片付けられようとしていた。息子の犯行とは信じられない父親の、学校社会との孤独な闘争が始まる。
先に述べた通り、タイトルの『チョコレートゲーム』とは要するに賭け事である。詳しくは書かないでおくが、正直に言って僕はゲームの正体を知っても大して驚かなかった。実際に起きたとしてもやはり大して驚かないに違いない。5000万円もの金額を恐喝する中学生がいるような御時世である。事実は小説より奇なり、とはよく言ったものだ。
初版刊行当時にはセンセーショナルな内容だったに違いないが、現代においてはインパクトが薄いのではないだろうか。両氏には何ら責任がないのだが。現代社会の荒廃ぶりを恨むべきか。もちろん、本作の内容に衝撃を受ける読者もいるだろう。たとえ現代でも、これだけの金額が動くケースなど稀だろうから。衝撃を受けた読者の感覚は健全で、大して驚かなかった僕の感覚は麻痺しているのかもしれない。
僕が注目するのは、事件そのものよりも息子の犯罪を隠蔽しようとする父親の愚かさである。我が子が罪を犯したとなれば、そりゃあ世間体は悪いだろう。だが、罪を隠すことが果たして子供のためになるのか? 父親の行為は、息子のためを装っているようで、実は自身の保身のために他ならない。それは決して愛情じゃない。
少年法では少年は救えない―某事件で犠牲となった少年の父親の言葉を思い出す。少年法改正が叫ばれる昨今である。本作が訴えるものは大きい。
大人だって、賭け事はほどほどにしないとねえ…。