岡嶋二人 10


5W1H殺人事件


2006/03/10

 時代によってその面白さが風化することがない岡嶋作品だが、それでも作中に描かれる技術ネタにはノスタルジーを感じさせるものもある。僕が最初に本作を読んだとき、強く印象に残ったのは肝心の内容よりもある技術ネタだったのだ。

 次々と違う興信所を訪れては、奇妙な依頼をしていく謎の女・平林貴子。それぞれの依頼を受けた探偵には、彼女の目的が皆目わからない。それらの調査報告が一つの輪のように繋がり、明らかになる大事件の全容とは?

 初版刊行時のタイトル通り、平林貴子の依頼内容とは、WHO? WHERE? WHY? HOW? WHEN? そして最後に、WHAT? 事件の真相とは、という趣向である。

 WHO? カメラの持ち主は誰? 活字から臭ってきそうな死体発見シーンは序章に過ぎない。WHERE? 喫茶店はどこ? 涙ぐましい若いカップルの執念。それにしても、いかにも今どきの兄ちゃんかと思ったらえらく物知りじゃないか。WHY? 〇ー〇が外されていたのはなぜ? 理由そのものは簡単に勘付くが、全体とどう絡むのかはまだわからない。

 そしてHOW? どうやって情報を取り出す? これは僕くらいの世代で、「マイコンBASIC Magazine」や「LOGiN」を買ってプログラムを打ち込んでいた人なら経験があるだろうなあ。すっかり懐かしさに浸ってその後はおまけみたいになってしまったよ(おい)。WHEN? 奴はいつ戻る? 〇〇〇〇なんて話が出てくるのが唐突すぎるぞ。

 序盤から中盤にかけてはわくわくしたけど、WHAT? に至る終盤の流れはばたばたしてしまったかな。結局、本作で最も特筆すべきは警察でも探偵でも真犯人でもなく、平林貴子の行動力だったんじゃないだろうか。最後の詰めは探偵を使ったにしろ、それぞれ核心に迫っていたことになるのだから。執念のなせる業か。

 結末にびっくり仰天、というタイプの作品ではない。趣向を楽しむべき一作だろう。



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