岡嶋二人 16


七日間の身代金


2006/10/19

 タイトルからしていかにも誘拐もの。人さらいの岡嶋は今度はどんな手を繰り出すのか。しかし、さすがは食えない岡嶋二人なのだった。

 プロデビューを目指す音楽家カップルの千秋と要之介は、富豪の後添いとなった友人から相談を受ける。その内容とは、弟と義理の息子が一緒に誘拐されたというものだった。受け渡し場所に指定されたのは、逃げ場のない湘南の小島だったのだが…。

 誘拐ものらしい展開を見せるのは実は序盤だけ。もちろん詳しくは書かないが、あらあらいつの間にやら密室ものに。こういうありそうでない展開は盲点だった。

 途中で真犯人の目星はついている点がミソ。「どうやった」かだけが見破れない。ハウダニットに特化しつつも、さすがひねりが効いているねえ。ただし、本格として読んでしまうとフェアとは言えない。密室を作った手段といい、禁じ手だらけである。真犯人の目星をつけたきっかけが〇〇ンというのも偶然に頼りすぎの感がある。

 探偵役の二人に特に魅力は感じないが、千秋の父は警察署長である。それをいいことに我がもの顔で現場を巡る二人。千秋も千秋だが、父も父だ。しかも、二人の捜査活動は警察に先んじてしまうのだから苦笑するしかない。

 後先考えずに殺しまくった真犯人にも呆れてしまう。実行力があるようで行き当たりばったりだし、詰めが甘い。勝ち誇るなんて早すぎるだろうよ。

 とまあ、突っ込みたい点は多々あるのだが、本作は構成の妙を楽しむべき作品であり、僕のようにごちゃごちゃ言うのは野暮というものだろう。そう頭では理解しているのだが、大満足とは言いがたい。十分に楽しめたし、水準以上の出来なのにである。

 その原因は、岡嶋二人ならこのくらいは当然という先入観にあるのではないか。本作の最大の不幸は、岡嶋二人の作品であるということなのかもしれない。



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