奥田英朗 09


真夜中のマーチ


2003/10/14

 毎度作風を読ませない奥田英朗さんの新刊である。早速手に取ってみたところ、割とオーソドックスなエンターテイメントだろうか。

 青年実業家気取りのパーティー屋、ヨコケンこと横山健司。一流商社勤務だがどこか抜けているミタゾウこと三田総一郎。高飛車で強がりな元モデル、クロチェこと黒川千恵。どういう巡り合わせか十億円強奪を目指して組むことになった三人。

 三人は最初から組んでいたわけではなく、知り合うに至るまでが序章になっている。いよいよ一致団結か…と思えばそうでもなかったりして。

 「この世は金」を地で行くすかした人物ばかりの中で、一人世間ずれしたミタゾウ。しかし不思議と馴染んでいる。大金が絡んでいる割には全編からっとしている。うむ、さすが奥田さんならではの筆の冴えか。

 さて、ヨコケン・ミタゾウ・クロチェのトリオを含めた四つの勢力が大金を巡って争う構図はなかなかに凝っている。四者が微妙な利害関係で結ばれていることを知るのは、我らがトリオと…読者だけという趣向である。四者の目的が金ということがはっきりしているため、純粋に楽しめるハリウッド映画的作品と言えるだろう。

 登場人物たちはどこか憎めない。適度にコミカル。適度にスリリング。適度にピンチに遭う。最後まで安心して読めるエンターテイメントの王道だ。だがしかし…奥田英朗の作品として読むと今一つなのが正直なところ。もう一ひねりが欲しかったかなあ。

 繰り返しになるが、映画化するとしたら傑作娯楽大作になるのは間違いない。自分なりのキャストを考えながら読むのも一興だろう。 

 どうも最近、ついケチをつけてしまう。我ながら良くない癖だと思っているのだが…。どうか読み流していただけると幸いである。



奥田英朗著作リストに戻る