奥田英朗 21


純平、考え直せ


2011/01/27

 2011年に入って早々に、奥田英朗さんの久々の新刊が届けられた。昨年は新刊が出なかっただけに、奥田節に飢えていたのだ。今回のテーマは…。

 主人公の坂本純平はヤクザ。といってもまだ21歳、盃をもらって2年目の下っ端である。一般の人なら十分びびるだろうが、歌舞伎町界隈では人気者。心酔する兄貴分の北島を真似てみるものの、歌舞伎町の住人は誰も怖がってはくれない。

 ある日、純平は組長から鉄砲玉になることを命じられる。この業界で生きていく決意を固めていた純平は、二つ返事で引き受ける。決行までの3日間、純平には金と自由時間が与えられた。さて何をしよう。娑婆にいられるうちに、あれもこれも食べておきたい。

 本作は、一言で言えば純平の3日間の交流記である。夜の街で知り合った加奈。先生で通っている西尾のジイサン。同年代のテキ屋信也。いつも24間営業のコインランドリーにいるゴロー。そして、密かに思いを寄せているショーダンサーのカオリ。

 純平が決意を告げると、加奈がネットに書き込んだ。決行が迫るにつれ、どんどんレスが伸び、つい携帯を見てしまう。西尾も信也も、街の住人も、普通に接してくる。銃の密売人は言った。気が変わったら、同じ値段で買い戻すと。だが、決意は揺るがない。

 ある目的を兼ねて、地元の東松山に行く純平。暴走族時代の後輩に歓迎され、何だかんだで地元は心地よいが、長居する気はない。ある出来事の後、後輩の目から思慕の念が消えていた。一線を越えようとする純平は、違う世界の住人だ。

 豪遊しようにも、高級店の店構えやスーツ姿のサラリーマンに気後れしてしまう。勇んで他の組のシマに乗り込むも、ボコボコにされる。そんな純平に人間臭さを感じないこともないし、一見淡々としているようで彼の感情が波立っているように感じられなくもない。

 しかし、躊躇せず薬に手を出す辺りはやはり裏社会の人間。そうでもしなきゃ鉄砲玉なんか務まらないのかもしれないが。根っからの悪人ではなさそうな純平だけに、違う生き方はできなかったのだろうかとは思う。それでもやはり、感情移入は難しかったかな。



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