恩田 陸 51


きのうの世界


2008/09/22

 誰にも予想できない結末が待っている!!

 という一文が、再三刊行が延期されてきた本作の帯に踊る。読み終えて思ったよ。そりゃそうだろ、誰がこんなもん予想できるかっ!!!!!

 三つの塔と水路がある町のはずれにある「水無月橋」で見つかった死体は、一年前に失踪した会社員の男だった。生まれも育ちも東京の彼は、なぜか接点のないこの町に住み付き、何やら調査めいたことをしていたというのだが…。

 恩田ファンなら百も承知のことと思うが、恩田陸さんは、序盤からこれでもかというほど謎や伏線を散りばめ、大風呂敷を広げる作品が多い。ところが、読者をぐいぐい惹き込んだ挙句に…フィニッシュでこける作品がこれまた多い。今では謎が深まるほど警戒するようになってしまった僕は、当然本作も警戒しながら読んだわけである。

 様々な関係者の視点で語られ、時間は前後する。こうした恩田作品にはお馴染みの手法が、さらに警報を鳴らす。しかし、謎の魅力という点ではおそらく恩田作品で一二を争う。特に、町のシンボルであり、ちょっとした観光スポットになっている三つの塔。なぜか三の塔だけ上部が折れたまま。歴史的建造物であるこれらの塔の役割は、諸説あるらしい。

 その塔には、町の秘密が隠されていた。ゲリラ豪雨が多い昨今に何とタイムリーな。これぞ究極の地球温暖化に負けない町作り。そんなわけあるかっ!!!!! 町の謎には百歩譲るとしても、ひた隠しにしてきた理由がわからん。積極的にアピールしなさいよ。

 最後に犠牲者の死の真相が明らかになるのだが、いっそ書かずに終わった方がよかったような。このシーンを書いたとき、恩田さんご自身が熱でもあって似たような状態だったのだろうか。ジャンルミックスが得意な恩田さんとはいえ、最後にそっちの方向に行くか。

 過去の大風呂敷作品は、一応すべての謎が説明されていたと思うが、放置されたままの謎が多いのも本作の特徴と言える。刊行が遅れたのも無理はないわ。



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