小野不由美 13


月の影 影の海


2001/08/14

 小野不由美さんの十二国記シリーズを、ようやく読み始めた。X文庫ホワイトハートの既刊作品はすべて講談社文庫化されており、今後は講談社文庫から先行刊行されるとのこと。これで野郎でも安心だ。

 十二国記シリーズとは、その名のごとく慶、奏、範、柳、雁、恭、才、巧、戴、舜、芳、漣の十二国が織りなすファンタジーである。虚海の彼方、神々が住まう五山を戴く黄海の地を、十二国がぐるりと取り囲むようにして存在している。各国には、王とその補佐役である麒麟がいる。霊獣である麒麟が天啓によって王を見いだし、玉座に据える。大雑把に設定を述べるとこんなところだが、これ以上詳しくは書けない。

 高校生の陽子が、謎の男ケイキに異界へと誘われた。気が付くと、そこは地図にない国、巧国の東海岸だった。次々と襲いかかる妖魔との苛烈な戦いに、いきなり突き落される陽子。天の真意とは何か?

 いきなり拉致しようとする妙な男に対し、陽子は大いに抵抗し、戸惑う。そりゃそうである。気付いてみたら当の男はいない。しかも巧国では罪人扱い。有無を言わさず孤独な旅を続けるはめになる陽子。陽子と同様、これには僕も戸惑ったが、それでもぐいぐい引っ張られるのは何故だ。戦い疲れた陽子の不安に付け入る蒼い猿が、実に嫌な奴なんだこれが。

 下巻に入り、ようやく唯一の親友である楽俊と出会い、海を隔てた隣国、雁(えん)国に渡る陽子。どうして陽子が異界に旅立たねばならなかったのか。そしてどうして襲撃を受けるのか。その真実がようやく明かされる。最初に説明しろよケイキさん、と思ってしまうが、それじゃ物語にならないか。

 解説でも触れているが(絶対に最初に読まないこと)、緻密なようで矛盾をはらんでもいる十二国記の世界の一端が、全編を通して垣間見える。本作は、一大叙事詩のプロローグに過ぎない。ファンタジーを侮るなかれ。これははまるぞ。

 つかみとしてはばっちりだ。もう続きを読むしかないじゃないですか。なお、刊行順と時系列順は一致していない。主人公も変わる。そこがまた読者を惹き付けるのだろう。



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