乙一 04


失踪HOLIDAY


2001/12/09

 本作を求めて、僕は書店の角川文庫のエリアをうろついていた。しかし、どこにもない。なくて当然だった。本作は角川スニーカー文庫だったのだ。かくして僕は、未踏のエリアに初めて足を踏み入れたのだった。

 最初の一編「しあわせは子猫のかたち」は、我孫子武丸さん推薦の好編。一人暮らしを始めた大学生が引っ越してきた伯父が所有する家は、殺人事件が起きたばかりだった。そこには子猫が住み着いていた。

 愛猫家なら涙なしでは読めまい。実家で猫を飼っていたので、これはツボにはまってしまった。ああ、切ない。ああ、許せん! 詳しくは書けないが、乙一氏面目躍如のこの一編、一読の価値ありだ。いつかまた、猫を飼いたいものである。

 もう一編の表題作「失踪HOLIDAY」は180pくらいと長めで、こちらがメインなんだろうけど…どうでもよろしい、と言ったら怒られるか? いい話だなあとは思うが、それ以上でもそれ以下でもない。あくまで、30歳の野郎の感覚ではだが。

 主人公は、14歳の大金持の一人娘、ナオ。タイトル通り、この女の子が家出をして…という話だ。同年代の女の子が読んだ方が訴えるものがあるだろうなあ。もしも十代の女の子がこれを読んでいたとしたら、まあ読み流してください。

 僕の感想を一言で述べると、なんて人騒がせな! である。彼女が大金持の一人娘になるまでには紆余曲折があったので、色々思うところはあるんだろうけどさ。なかなか凝った構成のミステリータッチの作品だが、感情移入するにはちと厳しかったか。

 当たり前のことだが、僕は角川スニーカー文庫がターゲットとする読者層ではないのだ。乙一氏には何の落ち度もない。角川スニーカー文庫から出ているもう一作、『きみにしか聞こえない ―CALLING YOU―』も同時に買っておいたんだが…。



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