Overseas Isaac Asimov

黒後家蜘蛛の会 2

More Tales of the Black Widowers

2010/05/07

 「黒後家蜘蛛の会」シリーズ第2弾。マニアックさが前作より増しており、主な掲載誌であった「エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン」(以下、EQMMと略す)にボツにされた作品もある。それらは「マガジン・オブ・ファンタジー・アンド・サイエンス・フィクション」(以下、F&SFと略す)に掲載されて日の目を見ることになった。著作のジャンルが多岐にわたるアイザック・アシモフらしいエピソードである。

 正直、薀蓄系ミステリと呼ぶには、ネタにした分野を深く掘り下げているとは言えない。短編の制約があるとはいえ、単なる知識のひけらかしになっている感がなきにしもあらず。それでも、これだけのネタをひねり出し、惜しげもなく短編に使うのは大したものだと思う。このシリーズは各編にあとがきがある。訳者あとがきではアシモフの照れ隠しだと指摘されているが、このやや尊大な言い方が天然のように思えるのは自分だけだろうか。いずれにせよ、このまめさに免じて読み続けよう。

 以下、各編に簡単に触れておく。

追われてもいないのに ―― When No Man Pursueth, EQMM 1974.3

 この回のゲストは嫌味な奴だと思ったら、アシモフ自身がモデルだという…。

電光石火 ―― Quicker Than the Eye, EQMM 1974.5

 盲点を突いた数少ない本格らしい1編だが、日本にはない習慣だよなあ。

鉄の宝玉 ―― The Iron Gem, EQMM 1974.7

 こちらも盲点を突いた1編。自分も集めていたことがあるので、気持ちはわかる。

三つの数字 ―― The Three Numbers, EQMM 1974.9

 ナンバーズのことではない。本作の一押し。現在でも紛らわしいのに変わりはない。

殺しの噂 ―― Nothing Like Murder, F&SF 1974.10

 EQMMがボツにしたのも無理はないだろう…。

禁煙 ―― No Smoking, EQMM 1974.12

 アシモフは嫌煙家の走りだったのか。その割にはよく観察している。

時候の挨拶 ―― Season's Greetings! 未発表

 前作からこういうパターンの話が多いが、だからEQMMに断られたのかは不明。

東は東 ―― The One and Only East, EQMM 1975.3

 この分野に弱いので、勉強になりましたとしか言いようがない。

地球が沈んで宵の明星が輝く ―― Earthset and Evening Star, F&SF 1975.10

 専門的すぎる上に、日本語に訳すのは苦しいネタだな…。

十三日金曜日 ―― Friday at Thirteen, F&SF 1976.1

 数学の入試問題にでも使えそう。自分は好きだが、一般読者には…。

省略なし ―― The Unabridged 未発表

 またしても日本語訳は苦しいネタだが、英語圏の読者でも何人がわかるのか。

終局的犯罪 ――  The Ultimate Crime 未発表

 シャーロック・ホームズは好きだが、BSIに入会するのはとても無理。

年月はEQMMまたはF&SFの掲載号を示す。



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