Overseas Isaac Asimov

黒後家蜘蛛の会 3

Casebook of the Black Widowers

2010/08/15

 「黒後家蜘蛛の会」シリーズ第3弾。個人的に、ここまでで最も面白かった。今回は「マガジン・オブ・ファンタジー・アンド・サイエンス・フィクション」(F&SF)に回された作品はなく、「エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン」(EQMM)に7編、「アイザック・アシモフス・サイエンス・フィクション・マガジン」(IASFM)に2編が掲載され、3編が未発表である。

 英語圏以外の読者には難しい作品が多いこのシリーズだが、今回は特に多い。それでも本作を面白いと思えたのは、蘊蓄の要素よりお遊びの要素が強いからではないだろうか。刊行時期が1981年と近代であり、時事の話題についていけることも大きい。

 以下、各編に簡単に触れておく。

ロレーヌの十字架 ―― The Cross of Lorraine, EQMM 1976.5

 世界的有名企業だが、日本ではそのブランド名で展開していない。だからこのロゴを知らなかったと言い訳しておく。

家庭人 ―― The Family Man, EQMM 1976.11

 当時はマイクロソフト社の黎明期。いち早くネタにしたアシモフの先見の明はさすがと言うしかない。理系的にはツボなのだが、わかるかこんなもん。

スポーツ欄 ―― The Sports Page, EQMM 1977.4

 そこにヘンリーがいたら、アメリカの歴史は変わっていたかもしれない? スポーツ欄からそんな連想をするのはヘンリーだけだろう。

史上第二位 ―― Second Best 未発表

 歴代米国大統領の実名がずらり。勉強になりました。日本の場合はどうだろう?

欠けているもの ―― The Missing Item, IASFM 1977冬号

 ずるい引っかけだが、なるほど盲点だった。しかし、これで目が覚めても、また同じことを繰り返しそうな気がするが…。

その翌日 ―― The Next Day, EQMM 1978.5

 このシリーズには定番の手法です、はい。実在するかは知らん。

見当違い ―― Irrelevance!, EQMM 1979.3

 日本でも応用可能な手ではある。悪用はだめよ。

よくよく見れば ―― None So Blind, EQMM 1979.6

 いっそのこと名前を言い残せよというのは禁句なんだろうな、やっぱり。その職業に就いていながら脇が甘いのでは…。

かえりみすれば ―― The Backward Look, IASFM 1979.9

 この画期的アイデアを実行に移した例はないのだろうか。彼は作家として大成はしないだろう。

犯行時刻 ―― What Time Is It? 未発表

 いくら職業柄でも、そんな見間違いするか? 普及し始めた時代とはいえ。

ミドル・ネーム ―― Middle Name 未発表

 欧米ではその作家も作品も有名なのかもしれないが、ミドル・ネームを持たない日本人には馴染みがなさすぎる。

不毛なる者へ ――  To the Barest, EQMM 1979.8

 初めて元メンバーが登場。こんな遺言残されても迷惑だろうが。ヘンリー以外こんなもんわかるか。そんな単語、日本人は知らん。

年月はEQMMまたはIASFMの掲載号を示す。



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