坂木 司 10
	短劇

　坂木司作品のファン、特に「ひきこもり探偵」三部作のファンが読んだらどう感じるだろうか。坂木司さんの新刊は、これまでのイメージを覆す作品集である。

　ショートショートと呼ぶにはやや長い短編が全26編。当初は「いい話」の連載だったという。実際、最初の「カフェラテのない日」は典型的ないい話だ。しかし、ほとんどはブラックな話で占められ、中には暴力描写がきついものもある。僕自身の評価は、今まで読んだ短編集の中でもかなり高い。しかし、熱心な坂木ファンは心して読むべし。

　最初に書いておこう。いわゆるいい話は、「カフェラテのない日」「物件案内」「カミサマ」のみ。「カミサマ」はこのご時世だけに考えさせられる。いい話とはちょっと違うが、「最後の別れ」「ビル業務」は従来の作風からそう遠くない。「ビル業務」は意表を突かれた。

　もう少しチャレンジする気がある方は、サイコホラーっぽい作品はいかが。「幸福な密室」って幸福かよ。「迷子」って焦るよねえ。導かれた先には…「ほどけないにもほどがある」。「壁」に〇あり?　「並列歩行」していて抜かれるのは癪だよねえ。

　まだ行けるなら、ドロドロ系作品はいかが。〇〇〇は見た、意外な「目撃者」。届かぬ思いを込めて、「雨やどり」。様々な愛憎が絡む中「ケーキ登場」。嗚呼、ここまで体を張ったのに…「しつこい油」。まだまだ行けるなら、ちょっとグロい話はいかが。「最先端」アートは刺激的すぎた。人間なんてららら…本当は恐ろしい「眠り姫」。

　グロはだめなら、社会派作品はいかが。ネット社会を象徴する「MM」「最後」。高齢化社会を問う（嘘）「恐いのは」。環境問題を問う（また嘘）「穴を掘る」。あ、ちょっとグロい?　食糧難を問う（大嘘）「肉を拾う」。あ、かなりグロい?　些細なことでイラつくと…僕も肝に銘じよう「試写会」。おらこんな村いやだ〜♪おらこんな「秘祭」いやだ〜♪

　ここまで来たら、毒を食らわば皿までだ。「変わった趣味」は、「ゴミ掃除」したい衝動は、想像するにとどめましょうね。暗くならないうちに帰りましょうね「いて」。

　分類は個人的主観に基づいたいいかげんなものなので、あてにしないように。いい話だけ読みたいという人以外は、まあ読んでみてくださいよ。