殊能将之 01


ハサミ男


2001/02/14

 面白いという評判を前から聞いていた本作だが、ようやく読んでみた。結論から言って、僕も面白いと思った。が、想像していた作風とはかなり違っていた。

 世間を騒がせた二件の連続美少女惨殺事件。絞殺した後、犠牲者の喉にハサミを深々と突き立てるという手口から、「ハサミ男」と称されたシリアル・キラー。ところが、その手口を真似た第三の事件が起き、自ら真犯人を捜すことになってしまう…。

 最初の方は、やや冗長かなあと思いながら読んでいた。が、決して無駄に長いわけではないことが徐々に明らかになってくる。ハサミ男の犯行そのままの、周到な罠。普段から注意を払って読んでいない僕は、当然ながら騙された。

 言うなれば、インコースぎりぎりのストライクのような、はたまたオフサイドぎりぎりのスルーパスのような。微妙なところである。しかし、僕はボールと判定はしないし、オフサイドフラッグも上げない。些細なことには目をつむってしまおう。第三の殺人の真相についてのみ…ちょっと不満が残るが。

 「元祖」ハサミ男の人物描写に、是非注目したい。言葉の端々からうかがえる、高度な知性。自殺願望と殺人願望の狭間で揺れつつも、決して明かされない内なる深い闇。この手の犯人像は、ある意味でお手軽だろう。狂っていると言い切ってしまうのは容易い。しかし、それだけではない何かを強く感じる。読者を惹きつける何かを。

 不気味な余韻を残すラストシーンが、本作を象徴している。これはあくまで僕の印象に過ぎないが、どちらかといえばサイコサスペンスに属する作品かな。どこでミステリーとの境界線を引くのかは、非常に難しいのだが。

 続く二作は色々と言われているようだが、とりあえず読んでみたい。そう思わせるだけのものを、殊能さんは確かに持っている。



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