高野和明 04 | ||
幽霊人命救助隊 |
タイトルだけではさっぱり内容が想像できない本作は、かなりしんどい作品だった。
二浪目の受験に失敗し、自殺を図った高岡裕一が、断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザの八木、気弱な中年の市川、まだ若い美晴。そこに神が現れ、4人に指令を下す。地上に戻って自殺志願者100人を救え。そうすれば天国に行かせてやる。
遺族に対して、どうして徴候に気づかなかったのかなどと言う人がいるが、はっきり徴候を示すくらいなら、この国で年間3万人もの自殺者が出るはずがない。そして、自殺者の心理は本人にしかわからない。後からならどうとでも言える。
実は4人とも自殺者の幽霊だったのだ。自殺者の幽霊が自殺者の救出に奔走するという、奇妙な構図を持つ。100人救出までのタイムリミットは49日間。しかし、どうやって自殺の徴候を見抜けというのか? そのために、彼らには特別な装備があった。
救助作戦といっても、具体的には自殺をやめるよう説得することになる。場合によっては救助対象者本人以外の人間の力も使う。説得するには、まず救助対象者本人について知らなければならない。当然辛い話のオンパレードになる。代表的な何人かについて詳しく触れながら物語は進む。延々と同じパターンが繰り返されるから、これはきつい。
目の前の命を救いたいという4人の気持ちは痛いほど伝わってくる。自殺者としての後悔が、彼らを駆り立てていると受け取ることもできる。だが、やっぱりこの構図には矛盾を感じてしまう。4人とも、どうして自分自身は救えなかったのか? 自殺者の言葉に説得力はあるか? ミッションを1つ終えるとほっとするけれど、同時にもやもやも募る。
4人が自殺した時代はばらばらで、最年長(?)の八木に現代社会の不条理さは理解できまい。そんな八木の単純なキャラクターと猪突猛進さに、本作はかなり救われている。それだけに、八木が自殺を選んだ不可解さが最後まで拭えなかった。
基本はエンターテイメントなのだろうが、テーマが重い上に冗長なので、誰にでもお薦めはしにくい。高野和明さんとしては、娯楽性と社会性、どちらを重視したのか。