辻村深月 13


ツナグ


2010/11/10

 「使者」と書いて「ツナグ」と呼ばれる者がいるという。ツナグの役目は、生者と死者を繋ぐこと。ただし、イタコの口寄せのように、死者の言葉を伝えるだけではない。実際に生者を死者に会わせる。死者は生前の姿のままで、手を触れることもできる。

 その代わり、厳然としたルールがある。ツナグは生者からの依頼を死者に伝えるが、面談の機会は、生者と死者、双方にとって一度限り。それ故に、死者には面談を断る権利もある。また、死者の側から働きかけることはできない。

 設定だけならどこかで読んだようで、目新しさはない。これで単純な感動路線だったらどうしよう。辻村深月さんのひねりに期待して読み始める。

 ツナグには、身内や恋人に会いたいという依頼が圧倒的に多いと思われるが、最初の依頼者が会いたいのは急逝したアイドルタレントだという。ひたすらマイナス思考な依頼者に共感はできないが、やはり若くして急逝したタレントを思い出した。

 次の依頼者が、ひねくれた奴である。長男として実家の工務店を引き継ぎ、色々と苦労もしたとはいえ、憎まれ口しか叩けないのかよ。信用していない相手に淡々と応じ、手続きを進めるツナグのプロ精神。こんな奴でも母には弱かった。

 中には会わなければよかった例もある。次の依頼はビターな結末だ。高校の演劇部の役争いを巡り、親友に憎しみを募らせていた依頼者。最後の伝言ですべては暗転する。機会は永遠に失われ、もはや救いはない。だが、ツナグの与り知るところではない。

 次の依頼者は、婚約者が失踪してから7年、抜け殻のように生きてきた。冷静なはずのツナグが激昂する? 救われたような、知らないままがよかったような…。

 これら各編は、それなりに読ませるけれど、1編を除きちょっといい話以上のものではない。そこで最後の章である。ツナグの仕事の舞台裏や後日談、そしてツナグ自身の事情が語られる。……。うーむ、僕ならその役目、丁重に辞退させていただきます。



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