月村了衛 01 | ||
機龍警察 |
2011年に『機龍警察 自爆条項』が『このミス』第9位、2012年には『機龍警察 暗黒市場』が『このミス』第3位、『文春ベスト10』第9位。本作は、一気にブレイクを果たした月村了衛さんの小説デビュー作にして、シリーズ第1作である。
ネット上では『機動警察パトレイバー』との類似を指摘する人が多い。僕はその大ヒット漫画を読んだことはないが、タイトルと人型のロボットメカが出てくることくらいは知っていた。本作を特徴づけるのも、機甲兵装と呼ばれる人型の近接戦闘兵器である。
機甲兵装という要素がなければ、時代設定は現代と変わらない印象を受けるが、本作の世界では機甲兵装が戦場に投入され、テロに用いられていた。ある事件をきっかけに、警視庁内に特捜部SIPD(Special Investigations, Police Dragoon)が設立される。
この特捜部が、警視庁内に軋轢を生んでいた。沖津部長は異例の外務省出身。SIPDが擁する『龍機兵』を操るのは、傭兵の姿、テロ組織出身のライザ、元モスクワ民警のユーリという3名。出自が出自だけに、特捜部内にも3人を認めない者がいる。
序盤から3機の機甲兵装が暴れ、凄惨な展開となる。市民の犠牲を厭わない逃亡劇の末に…。実は、戦闘シーンは最初と最後に集中していて、特捜部の地道な捜査を中心に描いている。他部局に忌み嫌われながら、意地と誇りで這いずり回る特捜部員。
おいおいなんて迂闊な、と突っ込みたくなるが、絶体絶命下での連絡手段に戦慄する。本人の精神力もすごいが、本作ならではのシーンと言える。訳ありな3人の過去が挿入されるのも本作の特徴である。しかし、正体はベールに包まれたまま。
本作はほんの序章に過ぎないようだ。敵はあまりにも強大だし、残された謎も数多い。この先、特捜部がさらなる苦難に見舞われるのは容易に想像がつく。それ以前に、今回の件の責任をどう処理するのかが気になるが…。現時点で言えるのは、このシリーズはSF的派手さだけに頼らない、濃密な人間ドラマであること。