若竹七海 06


サンタクロースのせいにしよう


2006/02/10

 ええと、これは「日常の謎」系…なんだろうか。裏表紙には、「愛すべき、ちょっと奇妙な隣人たちが起こす事件を描くミステリ短編集」とある。ちょっと奇妙? ちょっとどころじゃないってば。愛すべき? すみません、心の狭い僕には愛せないんですけど…。

 友人の彦坂夏見からの紹介で、京王線柴崎駅から徒歩15分の一戸建てをシェアするという話に乗った岡村柊子。家事さえすれば家賃はタダ。同居する銀子さんは、俳優で監督でエッセイストの松江丈太郎の四女なのだが…ぶっ飛んだお嬢様なのであった。

 引越し早々、柊子の周囲ではトラブルが続発…って、いきなり幽霊がいるよ! 続け様に語られる、松江家のとんでもない家庭事情。柊子のある想像は、とても銀子さんには話せないよ! 最初からこれでは先が思いやられる…。

 って、次は恐怖のチェック魔の襲撃かよ! また家庭事情がとんでもないよ! だからって度が過ぎるよ! 俺なら柊子みたいな可愛いいたずらじゃ気がすまないぞ…。って、変わり者が一人増えてるよ! しかし、内容は唯一正統的な(?)「日常の謎」系なのであった。消えたチューリップの謎とは。美味しいのかね、それ?

 って、次は悪徳工務店の襲撃かよ! 某元建築士よりたちが悪いよ! 幽霊の正体が明らかに? って、また松江家にとんでもないトラブル発生だよ! 何なんだよこの家は! そりゃ銀子さんも寝込むよ! 柊子はよく寝込まないもんだ…。

 って、追い討ちをかけるように迷惑カップルの襲撃かよ! 台湾までのフライトがとんでもなく長く感じるよ! 真相を聞いてもちっとも心温まらないよ! そしてトラブルだらけの共同生活が終わりを告げようとしている。思い出が走馬灯のように…巡らないよ! ああ感嘆符使いすぎた、ぜぇはぁぜぇはぁ…。「完走」した柊子に惜しみない拍手を。

 「日常の謎」にちょっと毒をふりかけようとしたら、あらあら入れすぎちゃった…という実に若竹七海さんらしい作品集だ。あなたも柊子と同様、うんざりした気分が味わえること間違いなし。読んでみる? ただし、苛々しているときは避けるのが無難。



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