ドイツの自転車旅行環境   

(1) 専用道路の充実
  
   ドイツは自動車道路のほかに、自転車専用道路が用意されている。その充実度に、政策的な意図と確実な実行が感じられる。サイクリングのガイドブックに書かれているようなところなら、自動車を気にすることなく、三メートル幅の道路を何百キロも行くことができると考えてよい。

   この道路には、サイクリングコースの名前と行先を示す矢印の書かれた標識が立っている。ロマンチック街道でも古城街道でもそれそれ400キロ以上に標識が立てられている。このほかの幾つものコースが入り組んでいて、標識には名前を入れての矢印が必要だ。
   
    ちなみに、町を離れれば、コースは独り占め走行になる。ドイツは北海道をさらに人口密度を低くしたような農業大地という印象だ。人も自動車も広大な土地の中では希薄なものになる。


(2) サイクリング地図が充実

   標識があっても地図は必須だ。現在の所在地と行き先の道路の伸び方を知るために必要だ。サイクリング専門の地図が多く市販されている。 小生が使ったのは、サイクリングルートごとに売り出されている120ページほどの小冊子。30ページはルートに沿った五万分の一のか7.5万分の1のサイクリング地図、残りは地図のページごとに対応して、観光案内が付いているというもの。 ドイツ語なので、観光案内部分は利用価値が少なかったが、長距離のサイクリングではこれ以外の地図の利用は考えにくい。

   ちなみに、この本のシリーズは、コース(一冊)あたり500キロから1000キロで、ドイツを中心に48コース(48冊)売り出されている。www.esterbauer.com 他にもサイクリング地図が多数売り出されている。これらは幅広い自転車旅行者愛好者のいることによる。


(3)宿は安くて快適
   
   人気のあるコースに沿った町には、1日に百人以上のサイクリストが泊まって行くようだった。どの宿も自転車置場を当然のごとく用意していた。自転車の安全に不安を感じたことはなかった。
   
   サイクリストたちはツインで50EUROくらいの宿に泊まりながら町を巡っていく。宿は清潔でインテリアも不細工ということもない。朝食が付いていて生ジュース、ハム、果物など日本人には贅沢と感じるものだ。ハイシーズンの真夏の観光地でも宿がないということはない。90EURO出すとプールとサウナが付いていたりして楽しめる。 今回の旅のルートでは二十キロごとに宿がある印象で、好きなだけ走って、好きなとき宿に入れる。       


(4)親切な自転車屋が町ごとに

   自転車の整備は簡単そうに見えても経験を積まないと、自転車屋は無用というっことにならない。ちなみに、今回の旅行では四回ほど自転車屋に足を運んだ。ドイツは上記のような環境だから、自転車屋が町ごとにあり心配がない。おまけにとても親切。ドイツの自転車も部品がシマノで、いつでも交換可能のようだ。      


(5)電車は自転車持込可能     

   電車は自転車持込可能だ。そのお陰で今回の旅行では、面倒な自転車の組立と分解を一度ずつで済ませた。また、旅のルート変更も臨機応変に行えた。このことは、一回の自転車旅行で、いくつかの趣の異なるコースを走ってみることが出来ることだ。旅に変化を付けることが出来るのは嬉しい。         


(6)静かな川辺や田園でペダルを踏める

    これがいつもの旅行で、このコースなら午前中に二時間ほど電車かバスに乗り、昼過ぎ頃に目指す観光地のダウンタウンで宿探しをして、午後は町に繰り出す。半日は駅と電車の喧噪に付き合う。午後も観光地の喧噪にいることになる。このようにヨーロッパの夏なら、電車も町も喧騒ばかりで疲れる旅になる。

   自転車なら、午前中の出発は10時頃で、五分もすると川辺か、田園を漕いでいる。一時頃まで漕いでいて、途中の野原で昼食。そのまま、二時頃半まで昼寝。その後、五時頃に次の町に着く。このように一日の大部分を自然の中に、こころを置いておくことが出来る。誰もいない川辺や田園のどかな緑のなかに自分の足だけが動く世界がある. 静かで平和過ぎて眠くなるようようだ。
   
   街道を連続的につぶさに見ることが出来るのもよい。遠景のシルエットから町に近づき、入口となる城門のたたずまいを見て、町の中心に近づいていくのは、町ごとに雰囲気が違うだけに異なるショウを見るようだ。