一日何キロ走れるか

   一日何キロ走れるかは、走ってみないと分からなかった。すべては体力次第と思っていた。だから自信はなかった。しかし、体力ばかりでないことが分かった。旅の前に多摩川に自転車を走らせて見た。二時間漕ぎっぱなしで、ようやく二十キロにしか過ぎなかった。ここから一日四十キロくらいなら、毎日漕いでも大丈夫だろうと予想していた。  

(1) 計画  
 
   英語のガイドブックEUROPA BY BIKE(the mountaineer book社)の中で、自転車旅行環境のよさそうなドイツを選択。次にその中で"ペダルするのは簡単" とあるモーゼル・ライン川コースと、"丘は所々にあるが主に川沿いの道で、ヨーロッパでも比類のない素晴らしいコース"とあった"(古城街道から行く)ロマンチック街道コースを選択した。

   ガイドブックでは走行距離は1日75`から45`くらい。初旅でいきなり75`を走るのはきつい。この部分はほぼ半分に分けて、二日で走ることにした。走行をしない休養日は3日か4日に1日とした。   

(2)実績

   1) 一日の走行時間は4時間半

   今回の旅は大体七時半か八時起床、十時頃宿を出発。 まずは一時頃まで漕ぐ。昼食を野原で済ませて昼寝。二時半頃から再び五時頃まで漕ぐ。これで四時間半ほど漕いでいることになる。人も自動車もいない三メートル幅の舗装道路を漕ぐ。これに比べて 朝六時に起きて七時に出発すれば午前中に同じように目的地に着いて観光できる。南ドイツの真夏の炎天下を少し回避できるからこれが理想だ。しかし、前日に漕いでいるからとても起きられない。間に一日の休みを取っても起きられない。戦争に来ているわけでないから、気楽にやろうという本音がそんなことになる。  

   2)走行距離

   旅の実行は、体の様子を見ながら休養日を取り、無理のないように行って次のようになった。

      モゼール川&ライン川     327`6日走行   一日 平均55`
      古城・ロマンチック街道    338`8日走行   一日 平均42`     
          
           総計         665`14日     一日平均 47.5`         
   3)道の分かりやすさが、走行距離を左右       

   川沿いのサイクリングコースは走行距離が伸びた。道が平坦で坂がない。川からは外れないから、行く道筋は明快で道を確認することも少ない。川の右岸を行くのか左がいいのか、地図で確認するだけだった。モーゼル川の下流では、道幅も広かった所為で、速度計が時速二十二点三キロをしばしば記録した。      

   それに比べてロマンチック街道は、農業生産地区を行くので、所々に必ず数十軒の村があり、それを繋ぐ道を使うが、まるで迷路のようだ。コースは景観を求めて右往左往する。始めのうちはサイクリングの方向標識を求めて、道が分岐するごとに辺りを見渡す。何キロも標識が無ければ不安になるし、実際、何度も何キロも元に戻っていく道を修正した。時々止まって、地図とにらめっこしなければならなかった。しかし、慣れてきて、標識が置かれる場所の規則性を把握できるようになった。そのため、後半は余り気を揉まないで走れるようになった。

   ロマンチック街道では、坂道があるのも、距離が出ない大きな原因だった。それでも、四十五`くらいは走れた。問題は翌朝だ。いつもより、体が疲れている感覚が頭を覆っている。疲れが翌日に来る。坂道が多い日の翌日は休んで、一日おきに行けば、無理は少ない。これは自転車の総重量が25`であるときの話だ。     

   自転車の魅力はなんと言っても山岳コースのように思える。自転車の荷物を取り払って総重量十`くらいにして、四、五日コースを走って荷物を取りに戻ってくる計画にすれば、山岳コースも夢ではなさそうだ。