我が国の防衛装備は、はたしてちゃんと使い方を考えられ、バランスよく調達されているでしょうか。

我々が労働して支払った税金で購入される防衛装備が、国防において、どのような事態に備えて、どのような対処をする予定で調達されているかを考えてみることは、株主が、自分が投資した企業の経営状態を知ることと同じように、我々の民主主義日本のシビリアンコントロールという観点から大変重要です。民主主義とは、最終的に国の経営責任を官僚ではなく市民が負うことだからです。国を滅ぼすような国会を構成してしまうような選択は避けなければいけません。・・・話がそれました。

自衛隊別に装備からその目的を見てみましょう。

航空自衛隊:

戦闘機による制空権の確保と、対艦ミサイル攻撃による敵上陸勢力の海上撃破、陸上兵力の展開支援にあるようです。

島国である日本の防衛ということでは表面的には悪くありません。

海上自衛隊:

敵潜水艦の制圧と、弾道ミサイル監視と防御?、港湾の掃海というところでしょうか。

どうも、彼らの興味は国土の防衛ではなく、ひたすら対潜水艦で、敵上陸兵力を水上撃破するのは空自におまかせという感じです。海国日本のシーレーンを守るということなのでしょうが、単能すぎかも。

陸上自衛隊:

北海道での極東ソ連軍上陸に備えた野戦による防衛と、内地の焦点の定まらない(敵を定めていない)ヨーロッパ型野戦による防衛のようですが、三軍の中で一番目的があいまいだと言えます。ただ存在させるためだけにムリヤリこしらえた目的があるというか。だいいちもうソ連はこの世にありません

そして、これらの装備からおしはかることのできる、彼らの予想する「有事」とはどのような状況なのでしょうか。

空:

敵攻撃機が国土を空襲しようとするであろう。それを早期に発見し撃退する。また、上陸部隊が海を越えてくるであろうからそれを攻撃し撃退する。

海:

敵潜水艦や機雷が我が国を海上封鎖するであろう。それを撃退、あるいは掃海して海上交通を確保する。

陸:

上陸してしまった敵とヨーロッパ型の野戦をする。

・・・

見事に棲み分けされています!これならお役所間の対立はないネ!しかし、よく考えると、なにかおかしい。なにがおかしいかといえば、1945年以前と違い、日本は完全な島国で、もし敵国がどこに侵攻を図ったとしても海を越えてこなければなりません。海を越えて一国を占領しようとするのに必要な兵力の輸送には結構な船の数が必要で、それだけの数を急に調達できる国は、ソ連が無くなっちゃったので、いまのところアメリカしかありません。先の戦争の教訓は「アメリカとだけは戦争しちゃいけない」というものだったはずで、アメリカが攻めてくるかといえば、いまアメリカにとっては日本に戦争しかけるよりほっといてビジネスしたほうが得で、アメリカと戦争になる事態を想定するなら、それは日本が自ら狂信的反米テロ軍事国家になり、産業そっちのけで反米イデオロギー防衛のための武装をしはじめたときくらいのもので、そんなおかしな国に日本人自ら選んでなったなら滅んでもしかたがない。アホな国民を育てたバカ教育を恨みつつあきらめるべき。

これからウン十年先にどうなるかはわからないけれど、当面は「海を圧する敵上陸部隊が襲来!」という先の大戦みたいな有事のシナリオは起こらなそうです。しかし今現在の我が国の国防は、海を圧して押し寄せる敵上陸兵力を空自が対艦攻撃で漸減、海自は全くそれに触れずにひたすら対潜哨戒、撃ち残して上陸してしまった敵上陸兵力(戦車含む)を陸自が機甲兵力で迎撃!という形に近い。ありえない敵に対処し、そのありえないシナリオのための装備に税金をつぎ込んでいるようです。しかも大部分を高価で普通な国産品で賄っています。武器を輸出できない我が国で、国内の小さな需要のためだけに生産される装備は、性能のわりに非常に高いものについていて、たとえば戦車は国際常識の4倍、小銃は7倍などという狂った感覚の代価が支払われ、そのぶん弾が買えないので実際に動かしての訓練はあまりできないという、まさに銭ドブ!これは日本国経営ののバランスシートにおける大問題ではないでしょうか。

今現在の我が国において一番ありそうな有事、危機のシナリオといえば、

パターン1)北朝鮮が外向的にも経営的にもいきづまり、恫喝の引っ込みがつかなくなり自暴自棄になって弾道ミサイルを撃ちはじめる。

ミサイル発射を関知し、迎撃するためのシステムと法律を整備すべき。

パターン2)韓国との日本海での面子をかけたささいな小競り合い。

できるだけ外交で解決。しかし恫喝に屈しないための武力は必要。主に見せつけるための水上打撃力でしょうか。

パターン3)売国日本人による政治運動の勝利によって、本土の在日米軍が撤退する。そのあとで、特定の国に属する在日外国人の、日本国内のいずこかの数万人規模のコミュニティーが参政権を求めて運動、要求をエスカレートさせ、自治独立を求めて日本各地で暴動やテロを起こし、国内騒乱状態になる。騒乱に乗じて暴動外国人の母国及び同盟国が「在日本の同朋を救助する」と宣言、空襲とともに派兵宣言してくる。空襲と、売国日本人の様々なサボタージュ、内閣と官僚の組織上の優柔不断などで指揮系統が混乱する中、敵兵力が少数で何派も浸透上陸し、ゲリラ戦を展開、日本の国防兵力を各個撃破した後集結して首都占領、親敵国政権を樹立する。

国内があっさり戦場になる点でこの「パターン3」が一番恐ろしい。たぶん今の内閣や官僚、陸自のシステムではちゃんと対処できないでしょう。戒厳令の決断を下せないのではないでしょうか。米軍が介入するにせよ国土は戦場になります。市民がいっぱい死にます。貧しくなります。せっかく築いた繁栄も、またゼロからやり直しです。子供たちのためにもこんな事態は事前に避けなければなりません。

まずあまり外国人に媚びないことでしょう。国防は、まず我々国民が、平和とか有効をダシに不良外国に媚びるような政治家や政党には投票しないところから始めましょう。かといってあまり強硬な過激な排外論をぶち上げるヒステリックな人物や政党も要注意です。区切りのむつかしいところですが、国民一人ひとりが感情に流されない、お財布と安全と未来を考えた冷静な智慧と理性を持つことが、民主主義と平和の命綱です。

国土を戦場にしてはいけないといっても上記のシナリオは暴動から始まるのだから、起きることに備えて、警察と陸自は暴動鎮圧装備を、騒乱時のマニュアルとともに整備しなければいけません。

戦争になったら空襲も避けられません。これは洋上にあるうちに発見、撃墜しなければなりません。優秀な早期警戒システムと大量の迎撃戦闘機、地対空戦闘装備は必須です。また、撃墜されたクルーを確実に救出するためのシステムは絶対必要です。

そして潜水艦や小型艇などによる少数規模のゲリラ上陸。これらは規模からいって牽引式重火器などはもてないので、まず交通の不便で隠れやすいところを多数選んで上陸して浸透してくるはずで、こういった狭い地域には少数しかない戦車の出番はありません。コスト的に合いませんし、国内の交通網に不似合いな巨大な戦車では展開する前に逃げられてしまうでしょう。そこが身軽なゲリラの強みです。しかし、逆に言えば上陸したことがわかってしまえばその潜んだ山なり森なりのどこかに必ずいるので、遠巻きにして砲兵火力で面でたたきつぶしてしまえばいい。それには沿岸監視システム、ヘリや無人偵察機、軽便な装甲車と、短期間で機動集中できる砲兵チーム(輸送ヘリつき)が大量にあればいい。狭い日本では何十キロも届く大砲はいりません。東京から豪華な巨砲で一円を撃つとか言うのは一見かっこいいけど、それだと東京を叩くだけで我が砲兵が全滅してしまう。また、敵の上陸地点は撹乱の意味もあって非常に分散するでしょうから、兵員の頭数はたくさん必要です。しかも訓練の行き届いた頭数が。

沿岸監視システムはこういった騒乱計画に合わせて事前に密輸入されるであろう武器弾薬の水際摘発にも役立ちます。

そのためには防衛と警察が内閣のコントロールの下で有効な協力関係になっている必要があるでしょう。

さて、以上のシナリオで必要な装備のうち、どうしても市価より高い国産装備にする必要のあるものはどれでしょうか。

まず、いわゆるブラックボックスというかハイテク系。過去の戦争の教訓から敵を探知するというハイテクは、敵にその内容を知られてはならず、敵よりすぐれている必要があります。たやすくジャミングとかされてはならない。当然国内で開発し、国内で生産管理すべきでしょう。早期警戒監視システム、レーダー、赤外線センサー、ソナーなどの感知装置やミサイルや魚雷のの誘導部、無人偵察機、機密を擁する通信に使う通信機なども必要ありです。潜水艦もその特性から国内開発生産を行なうべきでしょう。これらは投資して損のない装備です。

また、弾薬は国内で独自開発の必要はないものの、国内にそれなりの効率のいい大きな生産量のラインを数ヶ所確保しておくべきです。効率のいいラインの開発も、いいことかもしれません

逆に、国産する必要がないものは、とりあえず世界の市場に転がっているもので安く済ませられるもの、小火器、砲、戦車、装甲車などの車両、練習機、戦闘機、輸送機など飛行機一般です。これらは消耗品で、通常、輸出されるような外国製品はプルーフも国産より時間をかけてよくなされており、売るために作られているので凝りすぎて高いということもほとんどなく、有事の際は普段の外交さえしっかりしていれば、たやすく新品や中古を調達できるでしょう。ある程度大切に使ってやるなら、使い捨てにしてもトータルなコストは国産よりは安くつくかもしれません。そうして余ったお金で自衛隊員の数と給与を増やし、弾や燃料に当てて訓練時間を増やし、優秀な予備自衛官のストックを大量確保することができます。先の戦争での戦艦大和の教訓は、いくら世界に誇れるすごいかっこいいハードウエアを大金かけて調達しても、それがたった二隻しかなくて燃料と訓練に回す金がないならただの役立たずのお荷物だったということです。飛行機や鉄砲は、普段の外交と信用さえしっかりバランスをもってされていれば、いよいよとなれば借金してでも買えるけれど、時間をかけた訓練を受けた優秀な人員は急には増やせません。これも先の戦争の教訓であるはず。また、色々な国の色々な装備に雑食性になることで、融通の利く兵隊ができあがるのも利点です。徴兵制がない今、兵士は一銭五厘じゃなくちゃんとした技術職として丁寧に育てるべきです。

国産することの意味に、有事における調達性ということを言う人がいますが、現在の細々〜とした五月雨慈善事業みたいなラインにそんな緊急生産能力はないでしょう。火器のような、単純なわりに生産に特殊な手間のかかる装備なら、出来合いを買ってもってきたほうがはるかにはやいし安い。国内産業のためとかいいますが、コスト無視の、まともな国際競争力もないようなものに高い金払っておだてて過保護にしても企業が腐るだけです。受注側も発注側も能力向上といったメリットはありません。特に陸自は、どこからでも買えるような装備に回す金を確保するために人員削減とか、狂ってるとしかいいようがありません。訓練された頭数の補充は直ちにできるものではありません。もう、ただ防衛産業に金を回したくて戦略を考えてるようにしか見えません。責任者、天下り狙ってる?

戦車は、もしも我が国が見渡すかぎり広大な平地で、都市と都市の間はなにもなく、どこかと地続きであるなら確かに国産する価値があると思いますが、残念ながら我が国に戦車を有効に使えるような広い土地は少なく、需要は少なく、敵の戦車兵力が上陸することはまずありません。はっきり言って日本の防衛にはいらない。アメリカにしか射場がとれないような射程距離で命中できるとかいっても「ふうん、それで、どこで使うの?」ってかんじですよ。北海道には必要とか、世界常識としての機甲戦の技量維持のためというのならドイツかアメリカの出来合い製品でじゅうぶん役に立ちます。アメリカと戦わない以上、アメリカより強い必要はないのです。

それに、もし有事に万が一機甲戦がおき、手持ちの希少な国産戦車がすりつぶされてしまうような事態になったら、国産戦車の追加生産を待ってる間に外国戦車を使うことになるに違いなく(国産にこだわって、外国戦車を拒否して戦争に間に合わなかったらそれこそ大馬鹿者です。戦車のために日本があるわけではない)、それなら最初から調達性の高い外国戦車で訓練したほうがよい。

戦闘機は、世界で、まともなものを一国で国内開発している国はアメリカのみです。アメリカのを買っとけば最強ですが、仮想敵にその最強がないかぎり次善の装備でじゅうぶんでしょう。訓練がじゅうぶんで、さきに敵を発見できてミサイルがよければ空戦では負けない世の中です。それより数です。敵の攻撃に飽和されないだけの数です。タクシー会社が全財産はたいてキャデラックやっとこ一台だけ買ってもガソリンと車庫がなきゃどうしようもない。一台だけじゃ稼ぐ額は知れてるし、余った運転手がもったいないし、事故ったら一発で開店休業状態です。

何度も言いますが、我が国はアメリカを敵に回したらおしまいなのです。別にアメリカ様に媚びよというのではなく、外交を使ってアメリカにビジネスパートナーとしての我が国を守らせろといっているのです。アメリカはいまのところ近隣諸国の中で一番強力で、理性的で、信用経済なだけに、信用できます。

そして、最大の防衛は日本が自国の有事の防衛政策の指針を公表し、それ自体が抑止力となることであって、それには防衛担当の役所の、議会に対しての誠実な報告や、公開された粘り強いプレゼンが必須であります。なんでも機密指定してコソコソすることではない。その案を採用するしないの結果については、その国会を選んだ国民が自らの血で責任を負うのです。公表したら敵に弱点を分析されるというけど、公表する以上、そんな弱点は把握済みにして逆に罠に使うくらいのズル賢さはほしいですね。

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