「どうしたんだね、ご老人。」

道端にうずくまっていたその老人は、スカジー学派の僧でした。うずくまったまま、問わず語りに語りはじめました。その、救いのない物語を。

伝統あるストレージデバイス教会は、サジーを開祖とするスカジー学派と、西方の新宗派、アイデーイー学派(略してイデ派)に別れて、もう長いこと不毛の論争をつづけてきました。どちらが速いのか、どちらが便利か。

アップル教では、シーピーユーへの負荷が軽いことを理由に、いち早くからスカジー学派を重用し、用いてきましたが、アップルへの反感根強いアイビーエム/ドス学会は、当然のようにイデ学派と手を結びました。しかし、強力なカリスマを持たない彼らは、それぞれが勝手な解釈でドライブを造り、しかもコネクタ形状だけは共通だったので、相性グールの大いなる跋扈を招きました。また、日電宗のように、独自のスカジー規格を持ち出すものまで現れる始末!ドス信者達は、自分だけの最強パソコンを安く手に入れるために、同じイデなのにその、バベルの塔のような統一されないカオスの中に相性問題の試練を喜びとして受け止めていたのです。

しかし、数年前より、イデ会派にルネッサンスが訪れます。強力な統制のもと、ドライブのコントロールを専門に受け持つコントローラを基板の中に増やし、シーピーユーからその役目を取り上げたのです。シーピーユーが、いつの間にか強力になって、しかもマザーボードのクロックも上がったこともあって、転送速度が劇的に強まったのです。考え方がスカジーに歩み寄ったとも申せましょう。

イデ派に比べて贅沢の気があったスカジー派は、ターミネーションも理解しようとせず、クレームばかりつけまくる、愚かな信者(愚か者にも使えるパソコンが、彼らのモットーなので。モットー自体はとてもいいことだと思います。)に脅えるアップル教からも見放され、異端の1394会派なども現れるなどして、かつての光もどこへやら、悲しいことでございます。そこでこうして、私はスカジーの行く末を案じているのでございます。

老人の話を聞いて、ぼくは考えてしまいました。スカジーとアイディーイー、雑誌とかにはスカジーはボロクソに言う人がほとんどです。しかもイデのほうが安い。

でも、本当にそうなのでしょうか?

「くらべてみるしかないね!」

トホホ妖精が大きな声でささやきました。

「おねがいいたします、冷静なご比較を!」

老人が真剣な顔でいいました。

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