2001年宇宙の旅

1968年・英

STAFF

監督:スタンリー・キューブリック 
製作:スタンリー・キューブリック 
脚本:スタンリー・キューブリック/アーサー・C・クラーク
撮影:ジェフリー・アンスワース/ジョン・オルコット 
特撮:ダグラス・トランブル

CAST

主演:キア・デュリア 
ゲイリイ・ロックウッド 
ウィリアム・シルヴェスター 

STORY

地球外生命によって埋められたと思われる黒石版(モノリス)が月で発見される。その後、木星で新たに発見されたモノリスの謎を解明する為、ボーマン船長以下5人の科学者を乗せたディスカバリー号は木星に向かうが、任務の遂行を優先するコンピューターのHAL9000は乗組員に対して反乱を起こす。HALによって仲間を失ったボーマン船長はモノリスと遭遇、彼は人間の知識の限界を超えた未知のトリップに巻き込まれる。



スタンリー・キューブリック

SF映画「2001年宇宙の旅」など前衛的な映像で時代を先取りした米映画監督のスタンリー・キューブリック氏が七日、ロンドン北方のセントオルバンズ近くの自宅で死去した。七十歳だった。死因は明らかにされていない。

一九二八年ニューヨーク生まれ。幼いころから写真に熱中、高校卒業後、米写真誌ルックのカメラマンとして働いた。五○年代に映画製作に転じ、カーク・ダグラス主演の「スパルタカス」や、ナボコフの小説「ロリータ」を映画化。 最先端を行く映画監督としての地位を確立したのは、冷戦下での核戦争偶発を戯画化した「博士の異常な愛情」(六四年)、宇宙船のコンピューターが反乱を起こす「2001年宇宙の旅」(六八年)、暴力的な青年を洗脳する刑務所の近未来を描いた「時計じかけのオレンジ」(七一年)のSF三部作だった。その後もスティーブン・キング原作のホラー映画「シャイニング」(八○年)などの話題作を発表。ベトナム戦争をテーマにした「フルメタル・ジャケット」(八七年)が最後の公開作品で、今年七月にはトム・クルーズ、ニコール・キッドマン夫妻主演の「アイズ・ワイド・シャット」の公開が予定されている。マスコミ嫌いの完全主義者として知られ、一つのシーンに五十回も撮り直しを命じることも珍しくなかったという。六○年代から英国に住んでいた。(共同/ロンドン99.03.07)

こだわり続けた芸術性
 
 七日死去したスタンリー・キューブリック氏は、娯楽性最優先の米映画界にあって、芸術性にこだわり続けた数少ない監督の一人だ。

 それが可能だったのは、高度産業社会の矛盾が露呈する人間の狂気を扱いながらも、詩的な美しさをたたえた作品が、常に新しい映像世界を切り開いてきたからにほかならない。個々の作品への賛否は別として、観客や批評家はこの天才監督の新作を待ち望んだ。

 宇宙船のコンピューターが意思を持ち、飛行士に反乱する「2001年宇宙の旅」。際限のないテクノロジーの発達を題材に、一九六八年当時としては最先端の撮影技術を駆使しているが、仕上がりは抽象的だ。筋立てもはっきりせず「難解」との評価が付きまとう。

 しかし、多様な光の輝きをとらえた映像と、R・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」を用いた音楽は見る者を包み込み、理屈抜きの衝撃を与えた。

 監督自身、かつて米誌に「言葉による説明を避け、音楽のように直接無意識に達する視覚経験をつくり出そうとしてきた。哲学的な意味をどう考えるかは観客の自由だ」と語ったことがある。

 芸術を志向しつつ広い支持を得たキューブリック氏は、その人気を背景に大手映画会社の組織的な製作システムに反抗し、演出だけでなく配給などにまで口を出したことでも知られる。ハリウッドはまた一人、伝説を失った。(共同/ニューヨーク99.03.07)