タクシードライバー

ダウンタウンのざわめき・・・街の女
光のカクテル・・・アスファルト
けだるいジャズの吐息・・・
ニューヨークの夜が、ひそやかな何かをはらんで
今、明けてゆく・・・・

1976年度カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品


  製作   マイケル・フィリップス
        ジュリア・フィリップス
  監督   マーチン・スコシ―ジ
  脚本   ポール・シュレイダー
  撮影監督マイケル・チャップマン
  音楽   バーナード・ハーマン
  編集   マーシア・ルーカス
  衣装デザイン
        ルース・モーレイ       

キャスト

ストーリー

 ニューヨーク。
毒々しい夜の色彩と光の洪水に
飾りたてられたその闇をじっと見つめる虚ろな、
しかし熱っぽい感情を込めた視線があった。
 彼の名は、トラビス・ピックル。タクシーの運転手だ。
彼は他の運転手のように仕事場をきめていない。
客の命ずるまま、どんなところへも行く。
高級地区だろうと黒人街だろうと。
そして朝、帰社すると、客席に残された精液や
時には血の掃除をする。
汚い街で、彼はその重労働に耐えた。
稼げるだけ稼いだ。
仲間は守銭奴とあだ名した。

ある日、彼は大統領候補候補の選挙事務所に勤める
美しい選挙運動員ベッティに目をつけた。
数日後、彼は事務所をたずね、選挙運動に参加したいとベッティに申し込み
デートに誘うことに成功した。
しかし デートの日、ベッティをポルノ映画館に連れて行き、彼女を怒らせてしまった。

    

彼の懇願にもかかわらず、それからというもの、ベッティは彼を避けるばかりだった。

毎日、街をタクシーで流しながら「この世の中は、堕落し、汚れきっている!」
その思いは、いつしか確信に近いものにまでなっていった。
 ある日、彼は、闇のルートでマグナム、ウェッソン、ワルサー等強力なガンを買った。
射撃の訓練にはげみ、間も無く4丁の拳銃と軍用ナイフを身体に帯び、
それらを手足のように使いこなせるまでになった。

麻薬患者、ポン引き、娼婦たちがたむろするイースト・ビレッジ。
 ある日、ポン引きに追われた13歳の売春婦アイリスが車に逃げ込んできた。
しかし 彼は、連れ去られる娘をいつまでも見送っていた。

 ある晩 彼は食料店を襲った黒人の強盗を射殺した。
この頃から 彼はタクシー仲間から“キラー”と呼ばれるようになった。

         

そしてアイリスとの再会、泥沼から足を洗うよう説得するのだった。
彼は、いっそう運命的な使命を信じるようになった。

    

大統領候補の大集会、
サングラスにモヒカン刈りの男が現われ、
拳銃を抜こうとした。間一髪、
シークレットサービスが見つけ、その男を追った。
トラビスだった。
彼は、人ごみを利用して逃げまくった・・・・・


ダウンタウン。
彼は ポン引きの売春アパートを襲撃、
重傷を負いながらも、ポン引きをはじめ、
用心棒や、客の暗黒街の大物を射殺、
アイリスの部屋で倒れた。

彼は死ななかった。
アイリスは泥沼から救われ、彼女の両親は手紙を送り、新聞は英雄扱いした。
ベッティは彼のもとに戻ろうとした。しかし彼は それを無視した。
 トラビスは何事もなかったように、またタクシー稼業に戻った。

解説から
オープニング・シーン あたかもヒッチコック映画の名場面をおもわせる。
この音楽を書いたバーナード・ハーマン(映画完成後、惜しくもこの世を去った)は、
ヒッチコック作品を多く手がけている。
 スコルセーセ監督自身が 画面に登場する。
タクシーの乗客のひとりで、濃いヒゲと眉を持ち、停車を命じて、
裸の女のシルエットの写る窓を見ろと運転手のロバート・デ・二―ロに強要する男を演じている。

ポルノ映画の売店の売子の扮しているのがダイアン・アボットで デ・二―ロ実生活での妻である。