花と霧訪山散歩 山行報告

先鋭的な雪山もいいが、誰でも参加できる気軽な山遊びも、と企画したのが今回。最近、中高年の里山歩きがブームだそうで、ガイドブックもかなり出てますが、霧訪山はそのなかでも最近とみに人気の山になっていて、快晴の花霞の中、山頂はすごい混雑でした。でも帰路の大芝山コースはメインルートからはずれるせいか人混みもなく、カタクリの大群落も今が盛り、ニリンソウなどと相俟って期待どおりのご機嫌な「散歩」になりました。下山後も、塩尻にしかない希少種のカタオカザクラの見学もできて、充実した一日となりました。


1 期 日  2008年4月29日(火・昭和の日)
2 参加者  小野朋士(2回卒)・美佐子、岡澤佑吉(4回)、二木昭至(7回)、青山誠(松南高校長・顧問)、西村清亮(16回)、三輪力(23回)、植松晃岳(24回)、篠原敏宏(26回)、小林充(42回)、牛山貴史(42回) 以上11名

3 山行記録
8:00 塩尻市役所駐車場集合。天候は快晴。小林くん、牛山くんは豊科、松本から自転車で上ってきた。そのままその足で下西條山の神へ。三輪さんから少々遅れるとの報あり。

◆下西條・山の神自然園を出発
8:30 他の参加者は、1台に乗り合わせて下西條・山の神自然園へ。駐車場で記念撮影の後、「山の神」を拝み、ダークグリーンの清澄を満々に湛える「たまらずの池」を眺めながら、9:00登山口。

コブシの大振りな白い花が混じる松林の急登を経て、9:25送電線鉄塔で小休止。回りのコシアブラは少々早く、2〜3センチの若芽をのぞかせている。あと3日か。

いつしかクリ、コナラなどの雑木林を透かして雪の穂高の威容が顔を見せるようになり、ゆっくり休みながら登ること約1時間でブナ分岐、そこからカタクリの可憐なピンクがちらほら姿を見せるようになった。ピピピ、チチ…と啼く小鳥の声だが、さすが植松さんはあれはヒガラ、これはヤマゲラなどと聞き分ける。カラスかウグイスくらいしかわからないこちらにはみな同じただの小鳥のさえずりにしか聞こえないのだが。

10:45 カタクリの「女坂」を登っているときに三輪さんが追いついた。そしてまもなく山頂へ。

◆霧訪山頂は人の波、波…
360度の大展望・・・なのだが、人の頭の波、波…!
槍の頂上ほどもない狭い山頂は足の踏み場もないくらいのラッシュアワー。聞くと地元北小野の公民館のみなさんの親睦登山だと。小野先生の知り合いが何人もいる。弁当を広げる者、「霧訪山」という歌を大合唱するコーラス隊、あちらこちらで撮影会…、ということで、最近、低山歩きでとみに人気の霧訪山。鉢盛山、槍・穂高〜常念・燕〜蓮華岳・鹿島槍の北アルプス、美ヶ原・鉢伏山から高ボッチ、霧ヶ峰から蓼科山、八ヶ岳・・・南アから中ア将棋の頭、御嶽山あたりは春霞みでほとんど見えないが、ぐるりの大パノラマは掛け値なしの一級品。こちらも山頂でゆっくり乾杯!のはずだったが、記念写真だけ撮って早々に退散することにした。

直下の「男坂」を下ってここらでは珍しいブナが近くに1本だけある「分岐」から大芝山方面へ。こちらのコースはメインルートからはずれるので人はあまりいない。なだらかな雑木林の尾根筋をちんたら辿るコースは、いつしか結構風が強い。

11:40 遠望のきかない雑木林コースのなかで腹も減ってきた、霧訪山頂でできなかった乾杯を早くしたい、風も避けたい…という皆の欲求が阿吽の呼吸で一致して、本当は気が進まないのだが、風防の土手もある送電線鉄塔の下で乾杯、昼食となった。

◆送電線銀座
朝日村の変電所に幹線が集中する関係で塩尻近辺は「送電線銀座」だが、このコースを辿るとそれを実感する。切り開きで眺めがいいので尾根筋コースでの休憩ポイントは必然的に鉄塔下が多くなるのだ。違和感と現状の複雑な気持ちについては、青山先生のブロクをどうぞ。→(「松本松南高校・校長先生のブロク  http://www2.matsumoto-shonan.ac.jp/blog02/index.html

◆花のプロムナード
12:45 さてそこから大芝山までのルートは、この時期花と高山植物・山野草のプロムナードだ。目的のカタクリの大群落に目を見張るが、目を凝らせばニリンソウもスゲー、ほかにもエンゴサク、エンレイソウ、ヤマシャクヤク、マイヅルソウ…と低山の割に多種多様な高山植物・山野草がいま花盛り。小野先生の奥様と植松さんが自然にネイチャーガイドだ※。途中で、縄張りに入り込んだ大きなクマタカを小さなノスリが空中戦で撃退する珍しい光景も見られた。(植松さんの講義がないと大きなトンビと小さなトンビのただのケンカだ)

頂上が広くてはっきりしない大芝山を通り過ぎ、塩尻平を眼下に一望できる洞の峰・西條城跡を経て急な斜面をトラバース、またも鉄塔の下を過ぎて下西條・山の神自然園に無事、帰り着いた。15:15

◆稀少種「カタオカザクラ」を見学
目的の霧訪山散歩はここまでだが、帰りがけに珍しい「カタオカザクラ」を見学した。塩尻・中挾の小澤潔さん宅裏に大切に育てられている稀少種だ。ちょうど松商学園放送部の取材で同種の保存に尽力されている小澤さんにお会いし、お茶をいただきながらカタオカザクラに関する詳しい講義を拝聴することができたのは幸運だった。小澤さん、ありがとうございました。

というわけで、記念事業の「霧訪山散歩」は、無事終了しました。あとの「反省会」が盛り上がったのはいうまでもない。
(報告者;篠原敏宏・26回卒)


※ 当日お目にかかった生き物たち(植松晃岳ネイチャーガイド監修)
【花】(草本)
ヒカゲスミレ、タチツボスミレ、ヒナスミレsp、カタクリ、ショウジョウバカマ、ワチガイソウ、イワウチワ、オキナグサ、ハルリンドウ、ヤマエンゴサク、ヒトリシズカ、エンレイソウ、ニリンソウ、ムラサキケマン、キケマン、エゾタンポポ、カキドオシ、
【花】(木本)
コブシ、ウリハダカエデ、ヤシャブシ、ヤマブキ、モミジイチゴ、
【野鳥】
ノスリ、クマタカ、キジバト、ヤマドリ(羽)、ツツドリ、ツバメ、イワツバメ、ゴジュウカラ、キクイタダキ、ウグイス、ヤブサメ、センダイムシクイ、ヒヨドリ、メジロ、オオルリ、カワラヒワ、イカル、ミソサザイ、ルリビタキ、アカハラ、ヒガラ、コガラ、シジュウカラ、ヤマガラ、エナガ、コゲラ、ホオジロ、カケス、ハシブトガラス、ハシボソガラス、30種
【蝶】
ヒメギフチョウ、キアゲハ、ヒオドシチョウ、ルリタテハ、テングチョウ、
【動物】
ニホンカモシカ、ツキノワグマ(糞)、イノシシ(痕跡)