比の好きなもの  「虫」
------------------ Caution -------------------
これは、私の記憶のみで書いています。
とくに、資料を準備して、確認しながら
書いていないので、間違いもあるかもしれませんが、
話半分で読んでください。
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1.こどもの頃の虫捕り
捕虫網は、ばあちゃんに作ってもらいました。
竹ざおと、針金を自分で準備して、袋を縫ってもらいます。布は、日本手ぬぐい
が、ほとんどでした。このやりかたは、近所のこどもたちも、まったく同じで、
特別な子だけが、市販の網を買ってもらっていました。
網と言っても、手ぬぐい地の袋ですから、虫が入っているか、入っていないか、
つまり、捕まえたか、逃げられたか、そおっと、覗きこむまでは、わからない場合が
多いのです。それでも、楽しい虫捕りでした。

2.蜂に刺された
幼稚園の時です。家の裏には、銭湯の燃料保管の小屋がありました。当時は、
材木のくずと、かんなくずなどが燃料でしたから、屋外に材木がうずたかく
積まれていました。そこは、巣作りには、最適な環境です。スズメバチ類は
材木をかじりとって巣作りをするからです。詳しくは覚えていませんが
たぶんキイロスズメバチだろうと思います。米沢の方言で、カメバチと呼ばれる
この蜂は、外形が瓶のような巣を作ります。その巣のそばを通るのが、近道の
ためよく通過しました。はじめはよかったのですが、だんだん蜂が増えてくると
危険になってきます。危険を承知で通っていたのですが、あるとき、ブンブンと
集団で襲ってきました。あっというまに、周りを取り囲まれ一斉に襲ってきました。
何ヶ所も刺されました。気がついたら、家で寝ていたという状態です。近所の人が
連れてきてくれたということです。


3.ねらいはセミだ
小学校時代の虫捕りのねらいは、セミでした。カブトムシやクワガタは、
たしかに、魅力のある虫ですが、捕まえる醍醐味は、セミとトンボでしょう。
特に、セミは、木の高いところにいるため、技量が要求されると考えていました。
愛用したのは、日の丸を掲揚するための、竹ざおのお古でした。通常の網を
その竿に縛り付けると、4メーターくらいの長さの竿になります。それをかついで
セミ取りに行きます。自分の家の近くでは、できるだけ取りません。遠くに行って
捕まえてきて、家の近所で放すのです。そのうち、家の周りが、セミだらけに
なるだろうという、長期計画をもくろんでいました。
7月のうちは、小型であまり魅力がない、ニイニイゼミですが、8月に入ると
アブラゼミと、ヒグラシが、続いて、ミンミンゼミと、ツクツクホウシが出てきます。
アブラゼミの数が多かったので、雑魚あつかいで、羽根が透明なセミが
もてはやされます。そのなかでも、数が少ない、ツクツクホウシとヒグラシ、
それも、鳴かないため、見つけにくい、メスが一番捕まえにくいとされていました。


4.また蜂に遭う
また蜂にめぐり合ったのは、高校に入ってからです。岩波書店の本で、
岩田久二雄という著者の、蜂の進化のことが書いてあるものと出会いました。
蜂というと、スズメバチとアシナガバチという感覚で、刺すもの、怖いものと
いう考えでしたが、この本を読んで考えが変わりました。種類から言えば、
刺さない蜂の方が多いのですから。蜂の困る面だけを見ていたわけです。
家の周りで、蜂を観察しました。花に集まる蜂でも、いろいろいました。
家の周りでも、ジガバチは見ることができました。なんてすばらしい形の
蜂だろうと思いました。思い出すと、昆虫の説明の図は、蜂でした。
頭、胸、腹の3つの部分に分かれ、6本の脚、4枚の羽根を説明するのに
なんと、理想的な、姿をした、昆虫でしょう。あれを、形の良い標本に
仕上げたら、さぞかし、きれいでしょうと思いました。いろいろな、蜂を
見てみたい。きれいな標本を作ってみたい。このことで、蜂を捕まえ
はじめました。


5.蜂の標本
昆虫採集をしたことのある人は、展翅板というものを知っているでしょう。
しかし、あれは、蝶やトンボなどの、羽が大きな昆虫には、都合がよいもので
蜂の場合は、羽は大きくないし、脚も大きな要素ですので、羽と脚の両方を
一度にきれいに形を整える必要があります。しかも、蜂の大きさは、さまざまで
展翅板を作るにも、バリエーションがたくさん必要になります。高校生のお小遣い
では、なかなかできないため、自分で作れる展翅板が必要でした。お手軽なのは
発泡スチロールだろうというふうに思いました。カッターナイフで、都合の良い
大きさに簡単に切れます。まず、平らな発泡スチロールに、脚をきちんと広げます。
発泡スチロールに、ツメが食い込むので、針で押さえなくとも、ある程度は、
固定できます。そして、薄く切った発泡スチロールを2枚準備して、横から
刺しこんで、羽を固定できるようにします。これで、脚と羽を固定して、場合に
よっては、触覚を固定する、発泡スチロールの小さな板も切り出します。
つまり、一匹ごとのカスタムになるわけです。それで、きれいに仕上がると、
とても満足できました。

6.なんの蜂が好き
蜂は、どの蜂も好きでした。進化の順でいくと、木蜂と葉蜂の仲間は、蜂らしからぬ
形が面白く、なかなか興味がありました。とくに棍棒葉蜂は、面白い形で、
模様がスズメバチのように怖い、ナシアシブトハバチ(梨脚太葉蜂)、銅色に輝く
アカガネコンボウハバチ(赤金棍棒葉蜂または、銅棍棒葉蜂)、小型の
アケビコンボウハバチ(あけび棍棒葉蜂)。
寄生蜂も変わり者が多いので好きでした。背中に針を背負った、コキブリヤセバチ
長い産卵管の、ウマノオバチ(馬の尾蜂)。
狩蜂は、形が変わっているのは、少ないのですが、ジガバチは、形は変わっています。
集団生活の蜂は、蜂らしい姿で好きです。ホソアシナガバチ(細脚長蜂)、キアシナガバチ
(黄脚長蜂)、クロスズメバチ(黒雀蜂)、モンスズメバチ(紋雀蜂)

7.ぴっくり
もう、標本は、ほとんどのこっていません。作ってから30年近くが経過しました。
虫に食われて、ぼろぼろになったためです。
こどもが幼稚園の時に、幼稚園に来て、虫のことを話してくれた、虫が大好きで
定職にもつかず、昆虫採集をしたいためにだけ、仕事をしている人がいます。
うちに遊びに来た時に、昔の標本を見ていいました。「ここに、採集者として
書いてあるxxxxxxという人は、○○さんのことですか?」。びっくりしました。
私が高校時代の虫仲間とも今の、虫のマニアがつながっているのです。
標本でなくとも、それに付けていたラベルを捨てるべきではなかったと、言われました。
何年にどこに、どの虫がいたという資料になるのだそうです。それも、普通の
種類を絶対間違えない種類ほど、貴重だというのです。なぜかといえば、
まちがえっこない種類ほど、情報は確かだし、何年にここに、その種類が生存していた
という、情報は大事だいうことです。残念ながら、そこまで、考えずに、虫を捕まえて
いただめ、いまでは、手遅れです。

もう、昆虫採集に戻ることはないと思いますが、高校時代にあのように、
時間をさいていた行動が、結果として、貴重な資料として残せなかったのを
いまでは悔やんでいます。

(2003.1.2)



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