考案者
考案者
故 奥村松之助氏
                日本独特の発声器について

              -1982年7月第三回喉頭摘出者世界大会から(東京)-


 みなさん、遠い日本にお越しくださいまして誠に有難うございます。この有意義な世界大会に
おいて沢山のお友達が出来たことは非常な慶びであります。
 さて、私が今お話をしています、日本独特の発声について、ご説明申し上げたいと思います。
 私は第二次世界大戦の終わった1945年から病み、翌1946年に皆様と同じ
喉頭摘出手術を受け声を失いました。当時の日本では発声舗装具は何もないので、筆談で
暮らしましたが、その時に、今までなにげなく話をしていた声の有難さを痛切に感じました。皆様も同じ想いをなさったことと思います。
 以来、声を出すことに没頭し、先ず発声法ですが、笛で話すこと、食道発声で声になることを知りました。しかし、どちらを選ぶにしても指導者はなく発声の近道である笛を自分で造り、なんとか話したいと思い、多種多様に色々な笛を造り、なんとか話の通じる笛を造りましたが、それ以後研究を重ねて、最後に造ったのが、いま皆様の前で話をしているこの笛であります。

 もともと私達は手術前には、ここに(指で場所を示す)声帯があり、この声帯と現在呼吸をして
いる気管穴までの気管の一部を、手術によって摘出されたのでありますから、その削除された声帯と気管の一部を補うことによって、元に復すと考え、代用声帯を口の中に、また気管のなくなった一部を身体の外側からこの代用声帯に継ぐことによって手術前の身体に復すと考えて、この笛、すなわち発声器をつくり、以来33年の長きにわたり不自由のない生活をしてきました。

 最後に、話のできない方にこの笛をお勧めするにあたり、この発声器のよいところと悪い所を
お話しておきます。
 よい所は、稽古の必要のないことです。 手術前のとうり話せば良いのですが、気管穴のところから空気が漏れないようにしなければなりません。また空気を吸い込む時このラッパ型を少し開いて空気を吸わなければなりません。悪い所は、2ヶ月くらい使用していると発音体の振動ゴム板が弾力がなくなるのでゴム板の取替えをしなければならないことです。この時に、声の高低に注意して張り替えていただく必要があります。 また、この笛についての質問は(会場内)展示ホールでご相談に応じています。
 どうもご清聴ありがとうございました。


Last modified : Mon Dec 30 2002
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