学校管理運営規則の廃止でさあたいへん!…ってほんとう??
       〜学校管理運営規則をめぐる、学校事務職員の勘違いのいくつか〜(2000.7)

 基準規則が廃止になって「学校管理運営規則」が改正される?それはタイヘン!!…と、なにやらタイヘンな面だけが強調されて、挙句は「これを絶好のチャンスととらえて夢を実現する機に転換しよう!」などと、一部ではまるで自己啓発セミナーのような盛りあがりを見せています。その勢いは「自分たちで学校管理運営規則<案>を作らなければ、事態は暗転するのだ!」といわんばかりです。

 あんまりにも「タイヘン、タイヘン!」と言われると、ほんとに不安になってくるもの…。だが!ちょっと待ってね。実を言うとワタシはこれまでに、基準規則はおろか自分の勤める市町村の学校管理運営規則さえも、きちんと読んだことがないのです。そもそも普段の仕事の中で、基準規則や学校管理運営規則を紐解く機会なんて、いったいどれくらいあるんだか…。そんなことを考えはじめたら、今回の基準規則の廃止で

   ●何が変わるのか
   ●変わりうる部分はどの範囲なのか

が、とっても気になってきました。そこで、ちょっぴり<自分のアタマ>で考えてみようと思い立ちました。

 まず、教義第1623号「新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則を廃止する規則の公布について」平成12年2月28日新潟県教育委員会教育長から市町村(組合)教育員会教育長あて通知から抜粋し、わかりやすく文言を整理してみます。


地方分権一括法の制定により、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(以下「地教行法」という。)第49条の規定が削除(※1)されました。これまで県内の教育水準の維持向上を図る観点から、県教育委員会が市町村立学校の組織編制等に関する基準を設定できるとされていましたが、「地教行法」第49条の削除によって、基準となる「新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則」(以下「基準規則」という。)が廃止(※2)されました。

 なお、今回の「基準規則」廃止により、今後は、各市町村教育委員会が主体的かつ積極的に教育行政を行うことになります。

 

※1)削除された「地教行法」の条文

第49条(基準の設定)

 都道府県教育委員会は、法令に違反しない限り、市町村教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の組織編制、教育過程、教材の取扱その他の教育機関の管理運営の基本的事項について、教育委員会規則で、教育の水準の維持向上のため必要な基準を設けることができる。

 

※2)廃止された「基準規則」は次のように構成されています

新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則

第1章 総則

第2章 小学校及び中学校
第1節 学期及び振替授業
第2節 教育課程及び生徒指導等
第3節 教材の取扱い
第3節の2 職員の編制
第4節 指導要録、表簿及び出欠席の取扱

第3章 高等学校

第3章の2 養護学校

第4章 幼稚園

 

また、この「基準規則」の廃止によって、「市町村立及び組合立学校管理運営に関する準則」(以下「準則」という。)が平成12年4月1日付けで廃止(※3)となりました。

 

※3)廃止された「準則」の構成

市町村立及び組合立学校管理運営に関する準則

第1章 総則

第2章 学年、学期及び休業日

第3章 教育課程及び生徒指導等

第4章 教材の取扱

第5章 入学期日、転学期日、卒業期日等

第6章 職員の編制

第7章 職員の服務

第27条(赴任)

第28条(出勤、欠勤、退出、遅刻及び早退等)

第29条(出張)

第30条(年次有給休暇及び特別休暇等)

第31条(給料を控除しないで勤務を欠く場合)

第32条(病気休暇)

第32条の2(介護休暇)

第33条(氏名本籍の変更)

第34条(事務引継)

第35条(日宿直)

第36条(兼職及び他の事業等の従事)

第37条(雇用人の服務)

第8章 指導要録及び表簿

第9章 雑則

 

 基準規則・準則は廃止によって、県が市町村に対して法的拘束力を持って「行うものとする」指導が「行うことができる」にかわりました。県の基準規則をもとに作成されていた市町村学校運営規則は事実上、各市町村ごとに制定できることになりました。しかし、だからといって、例えば解釈の違いに著しく問題がある場合には、県は市町村に対して指導を行うことができることにはかわりありません。

 基準規則・準則の廃止によって、これまでに出された「基準規則の施行通達」「基準規則の一部を改正する規則の施行通達」及び「基準規則の一部改正通知」も法的には廃止になりました。(12年4月1日付)
 ところで、基準規則や準則「規則の一部を改正する規則の施行通達」を順を追って見てみると、学校に事務職員が配置されてからどのように位置付けらてきたか、実はとてもよくわかるのです。
「基準規則が廃止されたのだから、それらはもう関係ないこと」なのではありません。それらを基礎として、これからの学校事務職員像を描かなければならないのです。
 どんなことが書かれていたのか、具体的な部分をピックアップしましょう。

 

新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則の
一部を改正する規則の施行について(昭和35年8月17日)

◆改正のタイミング
昭和32年12月4日学校教育法施行規則の一部を改正する政令が
公布施行され(規則第22条の2として「教頭」が規定)昭和33年
4月10日学校保健法が制定された(保健主事、学校医、学校歯科医、
学校薬剤師等が新しく規定された)ことに伴う改正。
◆主な改正内容 
第2章「小学校及び中学校」の第3節の次に、新しく第3節の2
「職員の編制」を加えた。この第3節の2「職員の編制」の部分は、
従来「市町村立及び組合立学校管理運営に関する準則」(以下準則と
いう。)で示し、「新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に
関する規則」(以下「基準規則」という。)には規定しなかったもの
であるが、教頭制の実施等に伴って準則の規定とほとんど同じ規定を
基準規則に取り入れたものである。

(5)校務の分掌
  ア …したがって、校務には、正規の事務職員が行う事務だけで
     なく、公共的な教育作用としての教師の事務も含まれるの
     もと考える。(略)
  イ …「職員に校務の分掌を命ずるものとする。」とは、校務を
     個々の職員にわりふって、それぞれの職務が明確であるよ
     うに分掌されなければならないことを明らかにしたもので
     ある。

 

新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則の
一部を改正する規則の施行について(昭和39年10月1日)

◆改正のタイミング
昭和33年8月28日文部省令第25号による学校教育法施行規則の
一部改正及び昭和38年12月21日法律第181号のによる市町村
立学校職員給与負担法の一部改正に伴う改正。
◆主な改正内容 
3 第10条の2について 従来「その他必要な職員」とあったもの
  を、事務職員及び事務雇員と関連して明記したものである。
4 第10条の6について 事務職員と事務雇員の職務及びその職に
  ついて新たに規定を設けたものである。事務職員とは、地方自治
  法第172条第1項に規定する吏員に相当する者をいう。
 (2)「つかさどる」と「従事する」と用語を区別したのは、実際
    の職務遂行上は差異がないとしても、若干でも前者に主体的
    な色合いをもたせるためである。
 (3)事務職員は主事に、事務雇員は主事補にあてられる。
    昭和38年度以前に、すでに、事務職員、事務職員心得、書
    記事務心得、事務官その他の名称で発令されている者は、各
    市町村教育委員会の学校管理運営に関する規則の改正をまっ
    て、辞令を用いずにして、事務職員(主事)または事務雇員
    (主事補)に切り換えられる。このことについては、追って
    各該当者及びその者の属する教育委員会に別途通知する。市
    町村教育委員会では、改正した学校管理運営に関する規則を、
    昭和39年10月1日から施行されるように取り計らわれた
    い。なお、昭和39年度に発令された暫定事務補佐員、事務
    員は臨時の措置であり、第10条の2第2項の「その他必要
    な職員」として考えられるものである。

 

新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則の
一部を改正する規則の施行について(昭和49年10月1日)

◆改正のタイミング
昭和49年6月1日学校教育法の一部を改正する法律第70号が公布
され、昭和49年9月1日から施行されることに伴う改正。
◆主な改正内容
1 教頭について  2 教育課程について他改正

 

新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則の
一部を改正する規則の施行について(昭和51年4月15日)

◆改正のタイミング
昭和50年12月26日文部省令第41号をもって「学校教育法施行
規則の一部を改正する省令」が公布されたことに伴う改正。
◆改正の意図・主な改正内容
改正規則の趣旨は、学校においては、調和のとれた学校運営が行われ
るためにふさわしい校務分掌のしくみを整えるものとすることとし、
現在各学校に設置されている各種の校務を分担する主任等のうち、特
に、学校における教職員の組織の基本的なものである教務主任、学年
主任、生徒指導主事等について、新潟県市町村立及び組合立学校管理
運営の基準に関する規則(以下「規則」という。)にそれらの設置と
職務内容を明確に規定し、それらの主任等が積極的に学校運営に協力
することを期待するとともに、その他の規定の整備を図ったものであ
ります。
1 改正の趣旨
  およそ学校は教育の場であり、常に明るく伸び伸びとして充実し
  た教育活動が行われるように運営されなければならない。そのた
  めには、教育活動を円滑かつ効果的に展開し、調和のとれた学校
  運営が行われるような教職員の組織が必要である。現在、学校の
  教職員の組織については、学校教育法で校長、教頭等が、学校教
  育法施行規則で保健主事、進路指導主事等が規定されている。
  (略)
  事務職員の組織についても、小学校及び中学校においては事務主
  任について、
その設置と職務を規則上明確に規定したこと。
2 改正規則の内容の概要
 (3)小学校及び中学校には、事務主任を置くことができることと
  し、事務主任は事務職員の中から命ずることとするとともに、そ
  の
職務を規定したこと。

 

新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則の
一部を改正する規則の施行について(昭和54年3月22日)

◆改正のタイミング
昭和54年4月1日から市町村立養護学校が設置されることに伴い、
関係規定の整備を図ったもの。
「各市町村(組合)教育委員会では、下記事項に留意の上、それぞれ
の学校管理運営に関する規則を早急に改正されるようご配慮願います。」
◆改正の概要
研究主任の職務を規定、保健主事の職務に関する規定を整備、小学校
の生活指導主任等

 

新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則の
一部を改正する規則の施行について(昭和54年7月21日)

◆改正のタイミング
昭和54年4月5日付け文体第81号の文部事務次官通知で「児童・
生徒の運動競技の基準」が改正されたことに伴う改正。
◆主な改正内容
学校教育活動としての対外運動競技の範囲を規則で定めていたが、
今回の改正で学校が対外運動競技に参加する場合の基本的配慮事項の
みにとどめ、細部基準については通知によることとした。

 

新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則の
一部を改正する規則の施行について(平成7年年5月24日)

◆改正のタイミングと主な改正内容
学校教育法施行規則の一部を改正する省令(平成7年3月28日文部
省令第4号)が改正されたことにより、保健主事に当該学校の教諭だ
けでなく養護教諭も充てることができるようになった。

 

 これらの改正を経て、廃止される直前の「基準規則」には、学校事務職員は次のように規定されていました。

 

第10条の9(事務職員)
事務職員は上司の命を受け事務をつかさどる。
2 事務職員をもって充てる職は、主査、主任及び主事とする。

第10条の10(事務主任)
小学校及び中学校には事務主任を置くことができる。
2 事務主任は、校長の監督をうけ事務をつかさどる。
3 事務主任は、事務職員の中から県教委の承認を得て、委員会が命ずる。

 

 参考までに、学校教育法施行規則には

第22条の5(事務主任)
小学校には、事務主任を置くことができる。
2)事務主任は、事務職員をもって、これに充てる。
3)事務主任は、校長の監督を受け、事務をつかさどる。

 と明記されており、基準規則がなくなったからといって、小学校及び中学校における事務主任の設置と職務が消滅したわけではありません。また、事務主任は、校内の任意の職員ではなく「事務職員をもって、これに充てる」ことから学校事務職員は事実上「学校に置かれた事務をつかさどる職員である」のです。これ以上でもこれ以下でもありません。「事務主任の発令がないではないか」というのは詭弁です。
 これらのことを踏まえて、具体的な校務分掌は、教育活動を円滑かつ効果的に展開し調和のとれた学校運営が行われるような教職員の組織となるように、所属長が決めることになっているのです。

 今回の「基準規則」の廃止によって、現在の学校管理運営規則で当面改正が必要なのは、基準を県教育委員会に定めるなどと明記されている部分に限られるでしょう。「基準規則」「準則」が廃止されたからといって、これまでの学校管理運営規則を全面的に見直さなければならないという根拠は、実はどこにもみあたりません。それは、「基準規則」「準則」が「学校教育法」「学校教育法施行規則」をもとに設定されているということと、学校運営規則は学校運営する際の最小限のものを定めているだけで、学校をとりまく法的な環境は多岐にわたって存在しているために、学校運営規則だけで学校にかかわるすべてを規定することは無理だし、だいたい無意味です。

 「基準規則」等の廃止に意味を見出すとすれば、これまで「学校教育法」や「学校教育法施行規則」が改正されると関連した部分について県教育委員会が「基準規則」を改正し、それにならって市町村の学校管理運営が改正されるという流れだったのが、「基準規則」「準則」が廃止されたことで、県教育委員会というクッションがなくなり、市町村教育委員会ごとに学校教育法施行規則等の改正に対応する必要が出てくるという一点についてのみです。そしてそのことは、地方分権の趣旨に沿うものでなければならないことは、言うまでもないでしょう。仮に、市町村ごとにまったく新しい学校管理運営規則を制定する必要があるとしても、基本的な事項のみにとどめるべきで、すぐに改正されるような細部まで定めることは現実的ではありません。

 もうひとつは、注意しておきたいのは、学校管理運営規則が市町村の手に委ねられることになったとしても、主にその財源ということから、あるいは、県の教育水準という観点から、県が担うべき役割はまるきりなくなったわけではない、ということです。
 たとえば、学校の教義第1623号平成12年2月28日新潟県教育委員会教育長「新潟県市町村立及び組合立学校管理運営の基準に関する規則を廃止する規則の公布について」の通知に次のように記載されています。

 

・教職員の旅費等の負担は県であることから就学旅行等については、当分の間、従前と同様の基準とすること

・児童の出欠席の基準は全県的に統一して取扱うべきものと考えられることから従前と同様「指導要録記入の手引き」「出欠の記録」の内容をもって基準とすること

・指導要録は全県的に統一して取扱うべきものとして考えられることから、当分の間、従前と同様県教育委員会制定の「指導要録記入の手引き」によるものとすること

・職員会議の取扱いについては、県教育委員会において「新潟県立学校管理運営に関する規則」を改正する予定であり、3月中旬以降に改正内容を通知するので、市町村教育委員会における学校管理運営に関する規則を改正する上での参考とされたい。

 

 各市町村教育委員会がそれぞれの責任において学校管理運営規則を制定できることになったといいながら、教育という公共事業を行う以上、ある程度の教育水準を維持する必要はあります。そこで、県は全県で統一すべきものを上記のように明記しています。

 さて、ここまで事実を追ってきて、基準規則の廃止をそれを受けて学校現場、市町村教育委員会がどのように協力し、どう振舞うべきか、学校がどうあるべきか見えてきたのではないでしょうか。そしてわたしたち学校事務職員が求めてきた「職の確立」の問題が今後これらのこととどのように調和していくべきか見えてきたのではないでしょうか。

 少なくとも、学校事務職員に関してだけ細部の基準を設けることは間違っているに違いないということは確かなようです。

 

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