卒業していく子どもたちとワタシ
学校事務職員として採用されて以来、縁あって卒業文集に寄せさせていただいた文章を集めました。
原稿を寄せるとき、手書きのものがそのまま載る場合が多いです。 小規模校の小学校の卒業文集は、ほとんど<自家製>で、担任の先生が学校の印刷機で土日にせっせと印刷するんです。
卒業する子どもが少ないとき、文集に寄せるお祝いの言葉に一人一人の似顔絵を入れました。自家製文集のいいところは、寄稿した職員にも記念にその文集をいただけること。書いたものが冊子になって手元に残るのです。だけれど、中規模以上の学校の多くは印刷・製本を業者さんにまかせるため単価も高くなり、卒業生分しか作れません。悪いことに、その場合はたいてい原稿は戻ってきません。(自分でも、原稿の控えをとっておかなかったのはうかつでした。)それらのものが、ここにまとめられなかったは、ちょっと残念です。あらためてまとめてみると、青臭いことを言っていて恥かしい気もしますが、そのときごとにそのときを一緒に過ごした子どもたちの、顔をひとりひとり思い浮かべて、いっしょうけんめいに言葉をしぼりだしたことを思い出しました。
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ご卒業おめでとうございます。
「自分こそ正しい、という考えが、
あらゆる進歩の過程で
最も頑強な障害となる。
これほどばかげていて
根拠のない考えはない。」
byJ.G.ホーランド
文明が進化し科学はどんどん発達しているのに、
人の心は100年前からちっとも変わっていないそうです。
「知性や教養とは、
たくさんの知識を持っているかどうかではなく、
人の心をわかろうとする心だ」
とは、
ある解剖学者の言葉です。
中学生になってもたくさん勉強して、
心の柔らかい人になってくださいね。
2002年3月
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ご卒業おめでとうございます。
立派に大人への道に一歩踏み出した皆さんに贈る言葉は、
「人の批評をする暇があったら自分自身を研鑚しよう」ということです。
心に余裕がない状態にいると、人を見る目も厳しさが増し、
どうしても批評的な目で物を見てしまいがちです。
そして、だんだんと人の短所ばかりを意識する方向に
気をとられやすくなるものです。
批判がましい意地悪な気持ちになったら、次のように考えるといいかもしれません。
「人や周囲を変える事が本来の目的なのか?そうではなくて、
自分の力を向上させるのが目指していることではなかったのか?」
人を非難するだけでは、言いっぱなしの無責任な評論家と同じです。
「批評」の域を越えて「周りの空気がよい方向にかわる」ようにできたら、
その非難は「批評」ではなく「ものごとをよりよく解決する力」となり、
とても素敵なことだと思いませんか。
どうか、そんなパワーのある大人になってくださいね。2001.3.吉日
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卒業おめでとうございます。
「やってみるをかなえる」
夢をかなえる前に、
やってみるということを
かなえるんだ。
わかるかい
やってみるということをかなえろ
三代目魚武濱田成夫
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自分の夢は です。
そのためには という困難があるけれど
いま自分は を頑張っているところ。
できることからはじめよう!!
卒業生の皆さんへ 1996.3
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卒業おめでとうございます。
6年生になったばかりのみんなが、なんだか
心細くて心配だったのに、今ではみんな
すっかり立派な6年生になりました。
それを考えると1年に入学したての頃から
どんなか大人になったことでしょう。
「きのう」と「今日」と「あした」を比べてみても
そんなに変わっていなくって、毎日がいつのまにか
過ぎているみたいな気がするけれど
「きのう」と違う自分が今ここにいることを
しっかりとかみしめながら、充実した中学校生活を
送ってください。
♪人生楽ありゃ、苦もあるさ〜♪ってね。
卒業生の皆さんへ1995.3
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卒業おめでとう
大きくなったらなんになる?大きくなって考える?(テレビのコマーシャルみたい。)
じゃあ、いま何がしたい?いま君に何ができる?何をしなくちゃいけない?
偉い人ってどんなひと?カッコイイってどんなこと?気分のいい時はどんなとき?
頭にくるのはどんなこと?「ムカツク〜」ってどういう場合?
涙が出るのはどんなとき?
なぜそう思う?じゃあどうしたい?
これから君たちが大人になる途中で、ぜひ考えてもらいたい「?」です。
ええい、面倒だから人のマネをしちゃえ〜って思うかもしれません。考えていくうちに
どんどん答えがかわっていってもかまいません。
考えても考えても、ひょっとしたら答えなんてないのかも…。
「でもね、だってね。」って、言い訳するのはカンタンです。
でもずっとずっと言い訳してるだけじゃ、カッコワルイよね。
これから先、カッコイイ大人になった君たちと、どこかでばったり出会うことを
心から期待しています。1994.3
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桃のつぼみもふくよかにふくらみ、待ちかねた春の訪れを告げています。
みんな、元気でなによりです。
小学校に入学してからこれまでに、いろんな出会いがあったことでしょう。
修学旅行や親善大会で新しい友達を出会った人、絶体絶命の大ピンチに遭遇して、
思いがけず自分の強さに出会った人。
私がもし、あと10年早く生まれていたら、みんなの中の誰かのお母さんだったかもしれないし、
10年遅く生まれていたら、みんなと机を並べて
一緒に勉強していたかもしれない。(え?計算が合わない?)
もしかしたら、町ですれ違うだけの、まるきり他人だったかもしれない。
そう考えると、これはきっと宝くじに当たるよりも運のいいことかもしれません。
お茶目で、優しくて、まじめで、力持ちで、涙もろくて、運動が得意で、
歌も得意で、辛抱強くて、とんちがきいていて、ちょっぴり大人びたところもあるけど、
とっても愉快な皆さんと、同じ時間を一緒に過ごすことができたことに、
感謝の気持ちでいっぱいです。
もし気持ちが弱くなって、くじけそうになっても、
みんなで過ごした確かな時を思い出して、元気に乗り切ってください。
1993.3.吉日 卒業生の皆さんへ
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卒業おめでとう
生まれたての頃、笑った!と言ってはほめられ、
おすわりができたとほめられ、歩いた、しゃべった…あなたが何かをするたびに、
お父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、近所の人たちも
みんなが喜んでくれました。
だけど、いつのまにか、早くしなさいと怒られ、きちんとしなさいと叱られ、
しっかりしろと励まされ、そうして大きくなるにつれ、
ついにはほめるどころか叱ってもくれない…そんなこともあるかもしれません。
「自分の人生、どう生きようと勝手でしょう!」なんて
叫んでみたくなることも、これから先、あるかもしれない。
けど、ちょっと待った。
たとえほめてくれなくても、おうちの人や先生やまわりの大人たちは、
あなたのことを心配している。
「がっはっは!」とおなかの底から笑える日がたくさんありますように、と。
たとえ傷ついても、自分の力で立ち上がれるようにと。
他人がくれた100点満点ではなく、自分でつけた65点に自信が持てるようにと。
そして、何よりあなたがあなたらしく、自分の人生に誇りを持てるようにと。
たくさんの愛につつまれて、ここまで成長したみなさんに、
心をこめて、卒業おめでとう。
1992.3.吉日
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まわりにまどわされず、同じことのくり返しをおそれず、そうしてどこまでも高みをめざす…。
小学生の頃、私は早く大人になりたくてしかたがありませんでした。
勉強とかお手伝いとかにしばられずに、時間もお金も
自分の思うように使えると思ったからです。
「子どもですから私。あはははは、」と、ごまかしがきかなくなって
何年か経ちますが、自分のことを自分できめることのむずかしさが
ようやくわかってきたところです。
一見豊かで平和な今の世の中ですが、実は一番きびしい時代に
皆さんも私も生まれてきたんだなあ、と思います。
楽(らく)であることは、決して楽しいことではないし、
お金をもうけることだけがしあわせではないこと。
世の中にはいろんな価値観があって、どれも優劣つけがたい、
かけがえのないものであること。
抽象的な言い方になってしまいましたが、
皆さんがそれぞれ自分自身に誇りを持って
潔く生きていくことを願ってやみません。
小学校卒業という1番目のハードルを
元気に乗り越えようとしている5人の卒業生の皆さんへ
1991.3.吉日
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いつの時代でも、現在進行形でそのとき目に映っていることに
手に触れているものに、耳に届いた音に
素直に感動できるやわらかい心の持ち主でいてください。
「あの頃は良かった」と、
くよくよばりしているような、
今を簡単に放り出してしまうような
不マジメな人生を歩まないためにも。
最初の門出に、まずはオメデトウ。1990.3吉日
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まだ歩きはじめたばかりの16人のなかまたちへ
人と違った言葉をつかい、人と違った服装をすることが
とても格好よく思えたりします。
雨降りなのに長靴をはいているのが
なんだかはずかしかったり
おとうさん、おかんさんの言ってることが
うそっぽかったりすることもあります。
コドモと呼ばれているあいだは、
みんながいろいろと手を貸してくれるけど
だんだん、だんだん
自分で決めなくてはいけないことが多くなるんだよ。
急ぐことはないけれど
素敵な生き方を見つけてください。
1989.3