カウンター

Concept of "Virtual Laboratory on Materials"
”材料仮想研究所”構想

2015年7月20日  櫻庭政夫 / Masao Sakuraba

私の管理下にある分析機器には汎用性があるものも多い。その中でも自由度の高いものをピックアップしたリストを以下に示す。必ずしも最先端の性能を持つものばかりではないが、使い方を工夫することにより未知の物性をうかがい知る可能性を秘めている。

これらの分析機器が研究において実際に役割を果たすには、管理者による日常的な試運転・点検・調整が必須である。もし長期間放置されればどのような機能・ 性能が失われたのかを把握できず、再立ち上げにおける部品交換やオーバーホールに多額の費用が発生したり再起不能につながりかねない。

また、これらの機器 の有用性については、原理的に分かっていても実際にはいまだに不明な点も多い。そのポテンシャルを探り、材料に関する未知の知見を引き出す可能性を追求す る態度は個人的には極めて重要であると思っている。

上記のような管理者としての立場と材料分析方法の新規開拓の立場の両面から、これらの機器を利用した私自身による分析測定をできる限り実施していきたいと 思っている。そこで分析測定するサンプルは特定のものに限定される必要はなく、もし他者の希望があれば希望者のサンプルを受け取って私自身が分析測定する ことも、双方にとって大きなメリットが出てくることになるだろう。

このような考えに基づき、ここに”材料仮想研究所”構想を立案し、早速運営開始していく こととする。これはあくまで仮想的な研究所であり、構成員は私一人であるので、すべての判断は私一人によって速やかになされる。

これは一般的に依頼分析と呼ばれるものに相当するように思われるかもしれないが、通常のそれと大きく異なる点は私自身が私自身のためにボランティアとして 行うものであって費用が発生しない点が挙げられる。

したがって、受け入れ可能なサンプル数や測定時期については、私自身の精神的・時間的・資金的な余裕と 装置運用上の都合に直接的制約を受けるものである。だから、評価分析結果の納期やその内容の信頼性の保証などに関して、一切のことを約束できないことが大 前提となる。

このように多くの制約が存在しながらも、依頼する側のメリットとしてタイミングさえ合えば無料で有益なデータを獲得できる可能性があるので、あまり過大な 期待をし過ぎることなく、まずは気軽に依頼してみるのが良いであろう。そして、それに関わる経験は私自身のスキルアップにもつながり、今後の私の研究展開 を促進する可能性も出てくると期待するものである。

Many of the analysis equipments which are under my management can be used for multi-purpose. A list of such equipments with relatively high degree of freedom is shown below. They do not always have the most advanced performance. But they have a potential to explore and unveil unknown physical properties of materials by devising how to use.

For these analysis equipments to play an important role actually in research, daily test run, check and adjustment by an administrator are indispensable. If they were not cared for long period, we could not know what kinds of functions and performance were lost, and I would need a huge cost to fix them by replacement of parts and overhaul for restart. In the worst case, they can never run forever.

Concerning utility of these equipments, even if it has been clarified theoretically, there are still a lot of unclear points actually. I think that it is very important to have an attitude to try to explore unknown potential and pursue a possibility to get unknown knowledge about materials.

From both of the viewpoints as an administrator and as a pioneer on material analysis method like the above, I would like to measure and evaluate as much as possible by myself by using these equipments. Here, the samples to be evaluated does not have to be limited to something specific. If someone requests me, I will receive their samples and try to evaluate them by myself. There seems to be a merit for both.

Based on this idea, I have begun to draft the plan and manage "Virtual Laboratory on Materials". This is just a virtual research laboratory and I am the only member. Therefore, all dicision will be made immediately by me.

This may seem to be equivalent to a generally called "requested analysis". But, a different point is that I do it by myself as a volunteer and that a cost does not occur therby. Therefore, conditions (e.g. acceptable number of samples and measurement period) will be strongly restricted by my mental/time/financial allowance and by convenience on the practical use of equipments.

From these things, it should be a major premise that everything cannot be promised about a due date, guarantee of the reliability of the results and so on.

Although such many restrictions exist, as a merit at the client side, there is a possibility that a client can get useful data for free of charge if the timing is right. It would be better to request casually first without so excessive expectation. Finally, the above experience leads me to my own skill-up, and I expect that this might become an important step to exploration for my future research.




汎用分析機器のリスト

No.01 反射高速電子回折装置 Reflection High-Energy Electron Diffraction (RHEED) 稼働中
No.02 フーリエ変換赤外吸収分光装置 Fourier-Transform Infra-Red Absorption Spectroscopy (FTIR) 稼働中
No.03 反射分光膜厚計 Reflective Film Thickness Monitor 稼働中
No.04 四探針抵抗測定システム Four-Point-Probe Resistivity Measurement System (4PP) 稼働中
No.05 Hall効果測定システム Hall Effect Measurement System 稼働中
No.06 X線光電子分光装置 X-Ray Photoelectron Spectroscopy (XPS)
準備中
No.07 原子間力顕微鏡 Atomic-Force Microscope (AFM) 準備中





汎用分 析機器の概要

装置番号 No.01
装置状況 稼働中
名称 反射高速電子回折装置 Reflection High-Energy Electron Diffraction (RHEED)
型式・構成・製造会社など 装置の組上げは自分で行った。チャンバーの一部と架台(和泉テック)、電子銃 EK-2035-R(STAIB Instrumenteーボ分子ポンプ(67L/s)+ダイアフラムポンプ(15L/min)(Pfeiffer Vacuum)、アクターポンプ(スパッタイオンポンプ、30L/s、不活性ガス対応型、ULVAC
装置 概要 高電 圧で加速された真空中の電子がサンプル表面で反射することによって蛍光板上に形成される回折像を観察する装置。
期待 点 回折 点が現れる場合には、表面に周期的原子配列が存在することがわかる。回折 点の間隔からその周期を算出することができる。同時に、最表面より内部の周期的3次元配列 に起因した回折模様が観察される。
装置 の特徴 加速 電圧は最大20kVまでの間で任意に設定可能。蛍光板上での電子ビーム径は0.5mm以下。サンプル中心から蛍光板までの距離は220mm。サンプル寸法は5mm角以下(直径7mm以下)で、導電性両 面テープを用いてサンプルをサンプル台に貼り付けるゲートバルブはなく、サンプルをロードする度に、チャンバーを窒素ガスで大気圧に戻す必要がある。サンプルを取り付けてから1〜2時間程度の真空引きを行った後に、5x10-5 Pa以下の高真空〜超高真空中で電子ビームを照射する。長期間真空引き後の到達真空度は5x10-6 Pa付近(ベーキングなし)
注意 点 20kVにおける電子波長は0.0087nm(λ[nm]=√(1.5÷V[V]))、蛍光板までの距離は220mmであることから、原子間隔0.384nmに対応するストリーク間隔は220×0.0087÷0.384≒5.0mmとなる。例えば、水素 終端されたSi単結晶表面からの回折点が観測できる。試料ローディング前に、表面が大気中で変質する可能性を考慮する必要がある。また、た とえ超高真空中であっても、電子ビーム照射による変質の可能性がある。
測定 例 RHEED


装置番号 No.02
装置状況 稼働中
名称 フーリエ変換赤外吸収分光装置 Fourier-Transform Infra-Red Absorption Spectroscopy (FTIR)
型式・構成・製造会社など Nicolet iS5 FT-IR + iD1 (Transmission Accessory) + iD5 (ATR Accessory, Ge Prism) (Thermo Scientific)
装置 概要 サン プルを反射・透過する赤外光強度を分光測定することによって、各波長成分ごとにサンプル中の原子・分子によって吸収される量を測定する装置。
期待 点 吸収 された波長成分はある特定の原子の振動エネルギーに変換されたものと考え、過去のデータベースを参照することによって、原子やその配列構造の推定が可能に なる場合がある。
装置 の特徴 Ge 結晶をプリズムとした減衰全反射(Attenuated Total Reflection (ATR))法と透過法のいずれかを選択可能。測定可能波長範囲は600〜4000 cm-1(GeプリズムATR法)、あるい は、400〜4000 cm-1(透過法)。
注意 点 水素 終端されたSiやGeに起因すると考えられる吸収が観測された実績がある。しかしながら、大気中で変質する可能性を考慮する必要がある。
測定 例

装置番号 No.03
装置状況 稼働中
名称 反射分光膜厚計 Reflective Film Thickness Monitor
型式・構成・製造会社など 膜厚モニター FE-300UV(大塚電子)
装置 概要 垂直 入射/反射光による絶対反射率スペクトルを測定し、多層構造の膜厚解析や屈折率や消衰係数などの光学定数解析を行う。
期待 点 非 接触・非破壊で多層構造の各層の膜厚や光学定数を推定できる。
装置 の特徴 重水 素ランプとハロゲンランプの混合光源を用いており、可視光領域から紫外光領域の広い領域にわたって(波長230〜800nm)についても測定・解析が可能である。ただし、推奨波長領域は300〜800nm。
注意 点 膜厚 測定下限は材料に依存する。
測定 例 Thicness Monitor

装置番号 No.04
装置状況 稼働中
名称 四探針抵抗測定システム Four-Point-Probe Resistivity Measurement System (4PP)
型式・構成・製造会社など システムの組上げは自分で行った。四針プローブ+手動昇降架台(共和理研)、デジタル・マルチメータ 7352A(エーディーシー)
装置 概要 4つ の探針が直線状に等間隔に並んだプローブを試料 表面に押し当て、外側2探針(端子1と端子4)によって電流(I14)を制御し、内側2探 針(端子2と端子3)の間の電圧(V23)測定を行う。光照射による影響を排除するために、黒ビ ニール袋中で測定を行う。
期待 点 電 流経路の広がりを考慮することにより、試料のシート抵抗(Ω/□)や抵抗率(Ω cm)を求めることができる。探針間距離より十分に薄い薄膜の場合のCorrection Factorは π/(ln 2) ≒ 4.53 であり、シート抵抗 ≒ 4.53×V23÷I14 となる。
装置 の特徴 探針 間隔は1mm。探針先端曲率は150μmあるいは40μm。電源電圧0〜32V。電圧極性切り替えスイッチあり。外部直列抵抗(2MΩあるいは20kΩ)の 追加により、ナノアンペアオーダの電流制御が可能。
注意 点 探針 と試料の間の接触抵抗がシート抵抗より十分に低くない場合には、電流や電圧の測定値の安定性・再現性が低下し、信頼性を確保できない場合がある。
測定 例

装置番号 No.05
装置状況 稼働中
名称 Hall効果測定システム Hall Effect Measurement System
型式・構成・製造会社など No.04のプローブをUSBコネクタ接続方式にして簡単に交換可能とすることにより、No.04の測 定系をそのまま利用できるようにした。Van der Pauw型四針プローブ+サンプル固定ヘッド(和泉テック)、ネオジム磁石 N-30(表面磁束密度0.5T、2個、ケニス)、テスラメーター TM-701(カネテック)
装置 概要 4つ の探針が正方形状に等間隔に並んだプローブを試料 表面に押し当て、2探針(端子1 と端子3)によって電流(I13)を制御し、2探 針(端子2と端子4)の間の電圧(V24)の磁場印加による変調(Hall起電力、V24)を測定する。光照射による影響を排除するために、黒ビニール袋中で測定を行う。
期待 点 観 測されるHall電圧から試料のキャリア密度を推定できる。さらに、四探針抵抗測定で求めた抵抗率を用いることにより、キャリア移動度を求めることができ る
装置 の特徴 探針 間隔は10mm。試料表面における磁束密度は0.25テスラ。
注意 点 キャ リアの種類はプラスあるいはマイナスのいずれか一方である必要がある。サンプル冷却を想定していないので、室温測定に限定される。探針 と試料の間の接触抵抗がシート抵抗より十分に低くない場合には、電流や電圧の測定値の安定性・再現性が低下し、信頼性を確保できない場合がある。
測定 例

装置番号 No.06
装置状況 準備中
名称 X線光電子分光装置 X-Ray Photoelectron Spectroscopy (XPS)
型式・構成・製造会社など X線光電子分光分析装置 ESCA-3400(島津製作所)、ドライポンプ PDV-250(荏原製作所)
装置 概要 真空 中でのX線照射によってサンプル表面から放出される電子(光電子)を検出し、その運動エネルギー分布を測定する。
期待 点 光 電子の運動エネルギー分布に現れるピークが原子の内殻電子や価電子の放出に起因するものと考えることにより、電子の結合エネルギーを推定することが可能と な る。原子組成比や結合エネルギーの変化を見積もることができる
装置 の特徴 サ ンプル寸法は最大10mm径まで。デュ アルターゲット・コニカル形X線銃(Alターゲット(1486.6eV)あるいはMgターゲット(1253.6eV)を選択可能)。阻止電場形アナライザ +チャンネルトロン。X線モノクロメータがない分、X線照射強度が大きいので、測定時間を短くできる。0.5〜2kVのArイオンによるスパッタエッチン グも可能。2台のターボ 分子ポンプ(150L/sと50L/s)のタンデム搭載。
注意 点 X線 がモノクロ(単色)化されていないので、サテライトピークの存在を考慮する必要がある。
測定 例 ESCA3400

装置番号 No.07
装置状況 準備中
名称 原子間力顕微鏡 Atomic-Force Microscope (AFM)
型式・構成・製造会社など Nanopics1000 (SII)
装置 概要 試料 表面を探針で走査しながら各点の高さを測定し、3次元形状の観測や段 差・表面粗さの計測を行う装置。
期待 点 ナ ノメートルオーダの微小段差の測定が可能。
装置 の特徴 試料 寸法は最大30mm角、厚み5mmまで。自己検出型カンチレバー。除振機構内蔵。

注意 点 高さ 分解能は0.5nm程度。
測定 例









Return to Top Page


This home page is produced by KompoZer (free and open software).