【Si(100)再配列表面の反射高速電子線回折像】

Si(100) 表面はSiGeの低温エピタキシャル成長によく用いられ、その表面構造の変化を反射高速電子線回折(RHEED; Reflection High-Energy Electron Diffraction)により評価することができる。数10kVから100kVで加速された電子の波長は0.01nm以下となり、結晶中の原子間隔より はるかに小さいため、原子配列の周期構造を反映した干渉パターンを観測することができるためである。

まず最初に、特に平坦度が高くないSi(100)表面のRHEED像を以下に示す。Si結晶試料は、フッ酸水溶液に浸漬して自然酸化膜を除去後に超純水で水洗してRHEED装置にセットし、回折像を撮影した。最表面Si原子が水素終端されて安定であると考えられている。この場合、加速電圧20kV、電子線入射角約2o、カメラ長22cmで撮影したものである。

png/RHEED_Si_20150624a


次に示すのは、特に平坦度の高いSi(100)表面のRHEED像である。Si結晶試料は、高清浄減圧気相成長装置によりSi(100)面基板上にSi薄膜をエピタキシャル成長させて製作した。原料ガスとしてSiH4を用いて800℃でSi成長を行い、Si成長後は水素雰囲気中で室温まで冷却した。その後、基板を大気中に3時間放置した後に、RHEED装置にセットし、回折像を撮影した。この場合、加速電圧100kV、電子線入射角約0.4o、カメラ長33.7cmで撮影した。

(a) [001]方向から電子線を入射させた時のRHEED像。

1次Laue Zoneのスポット列の内側に、
1/2次Laue Zoneのスポット列が見える。
これは、二倍周期構造の存在を示している。

この表面では、マクロに見ると2x1ドメインと
1x2ドメインの二つの領域が混在しているために、
1/2次Laue スポットは完全平坦面
(Single Domain)の場合の2倍の数のスポット
が観察される。

(b) [011]方向から電子線を入射させた時のRHEED像。

0次Laue Zoneのストリーク間隔は、非再配列面
の場合の半分になっている。これも、二倍周期
構造の存在を示している。

また、1/2次Laue Zoneにスポット列もはっきりと
観察される。

(c) (b)のRHEED像の0次Laue Zone付近を見やすくしたもの。

ストリーク間隔は約1.6mmとなった。相対論補正を考慮
すると、100keVのエネルギーを持つ電子波長は
0.0037nmであるので、原子配列周期は波長×カメラ長
÷ストリーク間隔で求まり、おおよそ0.8nm周期の原子
配列構造があることになる。非再配列Si(100)表面の
原子間隔は約0.4nmであるはずだから、2個の原子が
寄り合った二量体(Dimer)が形成されていることを示
している。