第八機動部隊




第八機動部隊が駐屯するというので街はにわかに浮き足立っていた。
とりわけ少年たちの興奮はひと通りでなかった。
わけもなくわめきちらし走り回りながら瞳をキラキラ輝かせて憧れの部隊の到着を待っていた。

マポンもその一人だった。
マポンは背が小さくケンカも強くはなかったが、他の少年たちと同じく心ひそかに第八機動部
隊に入隊したいという夢を持っていたのだ。

マポンは木を削って作った立派なナイフを持っていた。それはマポンの唯一の誇りと言ってよかった。
部隊が来たら機会を見つけて隊員達にぜひ見せたいと思っていた。自分の作った自慢の武器を、武器のプ
ロフェッショナル達に見てもらいたくて仕方がなかったのだ。この自信作を見た時の隊員達の反応を思うと
楽しくて楽しくて、マポンは居ても立ってもいられなくなるのだった。それで毎日そのナイフにより一層の
磨きをかけつつ、首を長くして部隊の到着を待っていた。

マポンがあまりに一生懸命磨き過ぎてナイフを折ってしまった日、第八機動部隊はやってきた。
来てみるとあっけないものだった。
第八機動部隊はまず、歓声をあげて走り寄る少年たちを機関銃で一掃すると、すかさず面食らった
住人たちに手榴弾を投げつけ、残った奴らは火炎放射器でしらみつぶしに焼却していき、仕上げに
爆撃機がありったけのナパーム弾で跡形もなくなるほど街を焼き尽くすのだった。
街の住人たちは一人として生き残らなかった。
もちろん、マポンも死んだ。




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