奇跡の旅、そして感動の瞬間 by TERRY

2月13日ネバダ州リノ、ヒルトンホテルシアターで行われた、LYNYD SKYNYRD “VICIOUS CYCLE TOUR”ライブ、大変僭越ながらレポートさせて頂きます。

 私達SOUTHWESTは広島をベースにLYNYRDの後期の曲を中心にカバーする、結成後2年少々のバンドです。SOUTHWESTより私TERRY、コーラス隊のJUNKO・CHIHARUの3名がこの度渡米をしました。すでにVICIOUS CYCLEのCD・DVDは入手し、擦り切れるほど予習しておりましたので、ただひたすらステージ上の生ジョニー、生ヒューイに会えることを楽しみにしておりました。

突然カジノで!

 12日の夜、私達3人は宿泊中のヒルトンホテルカジノでスロットマシンで遊んでいました。するとコイン片手にアロハシャツ姿のビリー・パウエルが歩いているではないですか!そしてその周りにはコーラスのキャロル・チェイス、ベースのイアン・エヴァンズが!日本と違ってアメリカではプライベートモードの芸能人には声をかけてはいけないという暗黙のルールがあるのを私は知っていましたが、ここで何もしないと一生後悔すると思い、勇気を出して非常に丁寧な英語で話しかけました。

TERRY『お話中大変失礼致します。私たちは明日のコンサートを観る為に、わざわざ日本の広島からやってきたファンです。あなたはミスターパウエルですよね?』

BILLY『おいおい、本当かよ?わざわざ日本から来てくれたのか?(握手とハグの嵐!)お〜い、イアン、キャロル、大変だぁ。この方たちは日本から俺達のライブに来てくれたんだぜ!いや〜本当によく来てくれたね!ところで広島はヒロシーマかヒローシマか、どちらが発音正しいのかな?』ビリーは本当にフツーのオジサンでした。

TERRY『たぶんヒローシマかな(笑)』

IAN『マジかよ?いやーはじめまして、ベースのイアンだよ。明日ライブが始まる前に《ファンクラブの集い》があるんだけどそれに招待するよ。お〜いい、ツアーマネージャーぁ〜』と言ってカジノBARに走ってゆくと、すぐにツアーマネージャーのゲイリーを連れて戻ってきて紹介してくれました。イアンは本当に優しい男でした。

 ここからは4−5分だったでしょうが、JUNKO・CHIHARUはキャロルと歓談、VOODOO LAKEやLUCKY MAN、LIFE’S LESSONが好きだと言うと、3人でコーラスの一部をハモったり。キャロル自ら『スィーホー、ア〜ラビャ〜マ』なんて歌ったりと一瞬でしたが大騒ぎになりました。彼女も本当に気さくな方でした。

左からビリー、キャロル、イアン(上)、CHIHARU(下)、JUNKO、TERRY

 あまり時間をとっては失礼なので記念写真を撮らせてもらい、キャロルに私達SOUTHWESTの2003年12月最新ライブ2枚組みCDを渡してその場を後にしましたが、数時間後スロットに没頭するビリーとそれにつきそうキャロルをまたまた発見!会釈をして分かれたのでした。

 

翌朝売店で!

 ホテルの朝食チケットを持っていながら、たった10分遅かったということで入店を拒否された私達3人は、ロビーの横の売店で朝食を買うことにしました。コーヒーにパンを持ってレジに並んでいると、これまた見覚えがある女性が・・・

TERRY『あの、失礼しますが、ロッシントン夫人(Krantz Dale)ですか?私達は日本から〜〜・・・』

夫人『あらま〜、よ〜く来てくれたわね〜!・・・・・・』とここでも2−3分立ち話、最後に『これ主人の使っているピックよ。記念にあげるわ、どうぞ〜』とロゴ入りのロッシントンオリジナルピックを頂きました。

あっというまの出来事でしたが、昨夜と翌朝に聞いた内容を箇条書きにすると、

     ジョニーは今夜は疲れて寝ている

     ここ8日間ずっとロードだった。リノで一旦終わり、来週からニューヨーク

     ロッシントンはとても元気になった。脳に障害が残る可能性があると言われていたが、全く問題なく回復した。エナジーレベルもライブ毎に高くなっている。

     タバコはもう7−8年前から辞めている。メンバーは健康そのもの

     日本のレナードトリビュートバンドのビデオをネットで見たと、マネージャーから聞いたことがある。やっていた曲はFREE BIRDだったと記憶している(恐らくFAS)

えっ?ライブ当日お昼過ぎにカジノで!

実は昨夜8時頃、一人テーブルポーカーをやっている、ヒューイそっくりの人を私は目撃していました。長い髪を後ろに縛り、ハーレイのオフィシャルジャケットに身を包んだそれはそれはヒューイな人でしたが、JUNKOは『いや、ヒューイはもっとゴッツイ体をしているからきっと別人よ』と言うので何もしなかったのです。ところがライブ当日のお昼過ぎに再びそのヒューイな人がベースのイアンとスロットマシーンで遊んでいるではないです!ヒューイ命の私としては、全く躊躇せずに声かけしました。OUTLAWSからのファンであることを告げると『Thank you!』と握手を求められました。

生ヒュ〜イだぁっ!

身長体重体型ほぼ同じ。でもなんとなく引き締まってるヒュ〜イ。

相変わらずイアンは『マネージャーにファンクラブの集いの招待状を用意させたから待ってるよ!』とまたまた優しいお言葉。でもあと4−5時間したらライブが始まるというのに、この人たちは大丈夫なんだろうか?とちょっと思ってしまいました。

 

ファンクラブの集い

8時からスタートのライブ、夕方5時くらいから会場のホテル内シアターの周りのBARやカジノには、テンガロンハット・タットゥー・ウエスタンブーツ・ハーレイコスチューム・レナードTシャツと、一目見て分かるレナードのファンが続々と増えてきます。開演時間の45分前、我々はステージ右手のバックステージ入り口に誘導され、そこには既に10数名のファンクラブの招待客が並んでいました。『Lynyrd Skynyrd Meet & Greet』と書かれたパスは明らかに、Lynyrdのヘビーファンのみに与えられる特別なものだということに気づき始めた私達に、恐らくファンクラブの合言葉のような挨拶なのか、『Simple Man!』と声をかけてきたコテコテのサザンロック好きカップルはなんとフロリダから追っかけて来たそうで、なんとなくミーハーな私達は恥ずかしい思いがしてきました。『OK, come in and follow me!』といよいよバックステージに案内されます。

バックステージにはこのようにメンバーが揃って・・・

着ていたT-シャツにヒューイ、リッキー、そしてドラムのマイケルのサインをゲット。(もう着れないよぉ)

記念グッズをゲット。『まだ俺たちはタバコ吸ってるぜ!』と言わんばかりのバンダナ。

 

ツアー記念T-シャツのA面

同じくB面

バックステージにて

大きなステージを脇に見ながら、さらにステージ奥に入るとそこにはちょっと広い場所があり、長机と椅子が数脚用意されていました。間もなくクランツ・デイル・ロッシントンを除くメンバー全員がステージ衣装で出てきました。一人一人と握手・挨拶をし、サインや記念撮影をする設営なのです。あと数分でステージが始まるというのに、この人たちはなんとサービス精神旺盛なのか?それはまるで大リーグの選手がとてもファンを大事にするという、その精神と同じなのです。これまたあっという間でしたが、握手したりサイン貰ったりしつつ、日本のトリビュートバンドのアピールも十分出来たと思います。メンバーと別れる寸前に勇気を出してジョニー・バンザントに声を掛けました。

TERRY『君たちを待っている日本のファンが沢山いるからジョニー、どうか来日公演を考えて欲しい。』

JOHNNY『そうだな。まだ正式にはまだ決定していないが、きっと実現させるよ(I’ll be Back!)』

ジョニーは本気で言ったように、私には見えました。

優しいキャロル

予想通りのチビデブのジョニー。腕はTATOOだらけでした(汗)。

この人だけは本気でハーレーしてました。リッキーもTATOOだらけ。

ジョニーの胸に顔をしばし埋めていたCHIHARU

うう、信じられない。。。

ヘビーファンとハグするイアン君。左の南軍旗Tシャツがジョニー。

ライブスタート

スポンサーのJIM BEAM のロゴや樽を前面に出し、先ごろ発売されたDVDライブとほぼ同じセッティングのステージ。会場はTHEATRE形式のゴージャスな席配置で、テーブルと席あわせて2000人くらいでしょうか?ラッキーなことに、私達はオーケストラピットと呼ばれるステージ直前のかぶりつき席でした。目の前にはベースのイアン、その後ろ上段にはコーラスのキャロルとクランツ。ライブの音量は馬鹿デカくも無く、小さすぎず、非常によいバランスだったと思う。ただ残念だったのは、どうやらPAエンジニアはステージに立っているメンバー通りの定位、つまりロッシントンが右、ヒューイがセンター、リッキーが左に固定させていたようだ。もちろんソロの時には音量が大きくなるので十分聞こえるのだが、我々がいた右前方はロッシントンのギターはよく聞こえるのだが、左にいるリッキーやビリーの音が聞こえずらかったのである。メンバーは本当によく動き回る。ギター・ベースは完全にワイヤレス。ステージの床の上には何も置いていない。すべてのエフェクトワークはオペレーターによってコントロールされているようでした。たまにロッシントンがギターのボディーボリュームとトーンを調整する程度。演奏リストは次の通り、DVDとほぼ同じ。

1.       Workin' for MCA

2.       I ain't the One

3.       What's Your Name?

4.       That Smell

5.       Pick 'em Up

6.       Dead Man Walkin’

7.       Red White & Blue

8.       メドレー Down South Jukin'〜Gimme Back My Bullets〜Double Trouble

9.       The Ballad of Curtis Loen

10.    Tuesday's Gone

11.    Gimme Three Steps

12.    Call Me The Breeze

13.    Sweet Homw Alabama
 (encore)

14.    Travelin' Man

15.    Free Bird

イアンのベースの裏には亡きレオンのイラスト、そして光るあの帽子が!!

演奏終わって

まるでDVDを観ているかのようで、ソロはアドリブほとんど無しの完全コピー。演奏力は言うまでもなく『メチャメチャ上手い』のです。完全にコントロールされリハーサルを積んだ総合芸術という感じが強い。ギタリストとして非常に高度な技のひとつがフィードバック奏法ですが、That Smellのエンディングにヒューイとロッシントンがハモリながら決めるフィードバックは圧巻でした。またAlabamaのイントロが始まる前にヒューイが少しだけフリーインプロビゼイションで早弾きを披露してくれましたが、それはOUTLAWSでよく使っていたフレーズが機関銃のように出ていました。オーバーアクションはDVD収録ためだけのパフォーマンスと思いきや、リッキーはこれまたDVDと同じく汗だくになってのオーバーアクションを最後まで続けていましたし、ロッシントンは終始にこりとも笑わない(笑)。

ステージが進行するにつれ、段々彼らのプロフェッショナル、エンタテーナーとしての高いスピリットに心を打たれてきました。同じミュージシャンとしてとても考えさせられたのはバンド哲学。ステージとは何か?=それはファンサービスと販売促進、という哲学と理念が30年という長きにわたりこのバンドを支えてきているエンジンであるということを、私達3人ははっきりと感じ取ることが出来たのです。本当は演奏して欲しかったLucky ManやLife’s Lessonは、ライブで盛り上がることを期待して来ているお客には相応しくない選曲と考えるのも、彼らの哲学からすれば当たり前のこと。でもそれらの曲に込められたメッセージはこれまた、彼らの素直な現実感が込められていることを忘れてはならないと思う。演奏中にコーラス隊の二人と目が何度も合ったが、その度に笑顔で投げキッスをしてくれる姿に、プロとしてファンサービスとは何かを考えさせられた。世界中120都市を1年以上かけて回り、毎晩同じ演奏をし、毎晩変わらぬ笑顔でファンの期待に応えている偉大なLYNYRDのメンバーに心から敬意を表したい。

ちょっと気になったのは、アルバムVICIOUS CYCLEからすべてのチューニングが半音下げられていること。ライブでもそうでした。ジョニー限界説浮上・・・半音下げてホンキートンクピアノを弾けるわけがないビリーパウエルのグランドピアノも、どうやら半音下げたチューニング、もしくはMIDIグランドと化していました。

家庭を持ち、生きてゆくための仕事を持ちながら、趣味が行過ぎてLYNYRDカバーバンドをやり、いつもライブハウス満員のお客様に囲まれている自分達、なんて幸せなんだろうと思ったと同時に、もっとお客様の事を考えて総合芸術を高めて行かねばと思った次第である。

トラベリングマンで登場のロニー!(でも半音落としたロニーの声はややオカマっぽかったのは事実)