医療棚の修理
地方の診療所等でしか今はほとんど拝見することがない、医療用の棚を再生いたしました。昭和の前半のものらしいです。痛み、汚れ等は当然ありますが全体の塗装の劣化と棚等のベニア板が剥がれかかっておりました。塗装は既に粉のようになり強く触ると手に塗装が付着するくらい劣化しておりました。硝子は棚の本体にパテで付けられておりました。扉の閉開をとめるフック(手かけ)も破損しており、このような金物もないため、パーツレベルからの再生をいたしました。
医療棚 テレビドラマでよくおめにかかる医療用の棚です。
前面の硝子、側面の硝子は、パテ(昔の水槽の硝子に使われていたもの)で本体に固定されておりました。硝子もにごり、パテがあまりにも硬化し、パテをはがすと硝子まで割れる状態でした。医療棚の底板、裏板、引き出しの底板のベニアが劣化し使い物にならない状態でした。
医療棚 取り外せるものは全て取り外しいたします。全体塗装をするため塗装に邪魔になるからです。また痛んでいるものもきれいに取り除きます。
医療棚 枠だけ残し、側面の板、底板、硝子等は全て新しいものと交換いたします。
表面の白い塗装を研磨し、落とします。キズ、汚れをも研磨により取り除きます。
塗装ための下地を整えます。
医療棚 研磨後、下地を整え下塗りをおこないます。青色になっておりますが下塗りの塗料の色です。下塗りをおこないながら、キズ、へこみ等を修正いたします。下塗りを一回するごとに研磨し、また下塗り剤を吹きつけ、研磨をおこないます。これを数回繰り返し、表面を整えます。その後に上塗りをおこないます。ベージュ色の塗料を吹きつけ、仕上げていきます。
医療棚 数回にわたり上塗り塗装をおこないます。もちろん本体だけでなく、扉の枠、引出し等も同様に塗装いたします。塗装終了後、硝子、底板、作面板を取り付け、扉も取り付けていきます。きれいに再生されているのが分かるようになりました。
塗装が終わり、パーツを付けていきます。
医療棚 硝子、引出しの組み込みも終了し、完成です。
医療棚 鍵、ノブ等は破損していたため、修理いたしました。新しい部品(今の金具)にはあえて交換しませんでした。私のこだわりです。・・・・・
医療棚 引き出しに新しい取っ手をつけ本体に収めます。
医療棚 きれいに再生できました。昭和、平成、次の世代でも役目を果たしている事でしょう。

この医療棚は、ある内科医の先生から修理を頂きました。もともとは先生のお父様がこ利用になられておりました。病院を改築するにあたりまして、この棚だけはお父様の思い出であり、お父様の思いを継ぐ象徴的な意味もあるためこの医療棚のレストアをご決断になられました。
今までに多くの修理を承り、ものを直して参りましたが、この仕事で一番うれしいのは、私にとって修理させて頂いたものがお客様の「思い出」への架け橋になった時です。
ホームページの中で、木目をいかす塗装を紹介してまいりました。木目を消すことなく、木目を引き出す塗装です。しかしながら今回の医療用の棚の塗装は、その限りではありません。木目を完全に消し去る塗装例のひとつです。
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