おおかみとそうすけ

そうすけは、子供のうさぎです。
そうすけと、そうすけのお父さんとお母さんは
今夜も眠れませんでした
夏の夜の熱い風がもうもうと そうすけたちの
家に入ってくるからと、
岡に住み着いたおおかみが
おぉう おぉうと叫ぶからです
みんな丸くなって寝ています

そうすけは いつものように丸くなって寝ていましたが
我慢できずに はねおきました
「ぼくはおおかみになるんだ。いつもみんなおおかみを
こわがってばかり。ぼくはにげたりしたくない」
「そうすけには、あのおそろしい声が聞こえないのかい」
おとうさんとおかあさんはたしなめました
「みんなが反対しても ぼくはおおかみになりたいんだ」
そうすけはむちゅうで岡の森の中へかけこみました
月に映る森の幹の影は大きな獣の脚のように赤黒く青黒く
そうすけの体にからんできます

「おや うさぎだ」
おおかみは岡の一番大きな岩の上で見下ろしていました

「ぼくはそうすけと言います。 おおかみになりたいんです」
「それは 無理な話だろう おまえのお父さんとお母さんは
どこにいるんだい。早く帰りなさい」

とそうすけが通ってきた暗い森を指さしました
そうすけは怖くなって
「おかあさーん」「おとうさーん」
とこえをあげてなきだしました。

おおかみは黙ってそうすけをお腹の下にいれると
そうすけはすやすやと眠ってしまいました

そうすけの目に朝の白い光がしゅっと入ってきました
そうすけは体についた朝露をはじくと
長く赤い舌を出して寝ているおおかみを起こして
「おおかみになるには どうしたらいいですか」
と聞きました。
「まだ おおかみになりたいのか」
おおかみは呆れて口を開けてしまいましたが
水を飲みに小川へそうすけを連れていきました

おひるになりました
「こうやって穴を掘るんだ」
おおかみは後ろ足で地面をつかむと蹴り上げました
「うおー すごい」
そうすけも真似して蹴り上げました
何度も何度も蹴り上げているうちに

にんじんが出てきました
「やったぁ にんじんだ さすがおおかみになるとすごいねえ」
そうすけはしゃこしゃことあっという間ににんじんをたべてしまいました

「ほかにはないの」
そうすけはおおかみのまわりをぐるぐる回ってたずねました
「あとは 想像することだな」
「想像」
「目をつぶって考えることだな。たとえばこの爪が
もっともっと短かったら もっとそうすけをなでてあげてあげられるのに」
そういうと おおかみは目をつぶって 動かなくなりました
「ぼくもやろう」
そうすけは目をつぶりました。ですが夏の光は強く
まぶたを通して白い光が入り とてもつぶっていられません
目を開けて辺りを見回しました

「あ となりの鹿さんだ」
そうすけは背の高い夏草の群に 見慣れた影を見ました。
そうすけは立ち上がって鹿さんを呼ぼうとしましたが、
鹿さんは雷に撃たれたように、前足を振り上げて走って逃げていきました。
「あれれ鹿さん 返事してくれなかった」
そうすけはさみしくなりました
そのとき

おぉう おぉう とおおかみの鳴きだしました
そうすけは気づいたのです
おおかみは 淋しくて 鳴いているのだと
 
鹿は一目散に山を下りると
「大変だ大変だおたくのそうすけちゃんは、おおかみと一緒にいたよ」
叫びました
「わあ そうすけが 食べられちゃう」
お父さんはめをまるくして おかあさんはしりもちをついてしまいました

お父さんは急いで仲間を集めましたが
みんな おおかみが怖くてなかなか山に登ろうとしません
「起きてるときは とてもかなわない」
「おおかみは いつ寝てるのだろう?」
「今寝てるから 起こしちゃだめだよ」そうすけが山から下りてきたのでした

お父さんとお母さんはよろこんでそうすけをひとしきり抱いた後 
一晩中 叱られました
「もう おおかみに なるなんて 言わないでね」
「うん ぼくは おおかみにはなれないけど おおかみのお友達になる約束をしたんだ」

その日から おおかみのほえる声は聞こえなくなりました
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秋になり風が冷たくなりました あかい葉が岡からぱらぱら降ってくると
そうすけは 目をつぶるようになりました

戻ります おおかみとそうすけ