3 ノール牧場
        Melbourne=====Henty
   (1) こんにちはヘンテイ
        私たちは、フェロースミスさんご夫妻にメルボルン・スペンサー駅まで送っていただき、
        今度は列車で一路《Henty》という友人の実家のある小さな村に向かった。
        8:40発特急シドニー行き。オーストラリアではほとんど飛行機の移動なので、
        一度列車に乗ってみたいと思い、一番近い距離の間だけを列車にしたのだ。

フェロー・スミスさんご夫妻が駅まで送ってくれた メルボルンからヘンテイまで約4時間:食堂車で

        列車に乗り込むと、早速車掌さんが検札に来た。
        「Hentyまでですね。1時頃には着きます。近づいたら私がここへ又来ます。」
        外国人と見て、大変親切である。助かる。メルボルンからヘンテイまでは約4時間である。
        ***
        広々としたヴィクトリア州の草原地帯を列車は走る。2時間経っても一度も止まらない。
        「さすがに特急だ。全然止まらない。しかし、ヘンテイは止まるだろうな。」
        「車掌さんが来てくれるっていたから大丈夫よ。」
        少しお腹が空いてきたので、食堂車に行ってみた。列車の食堂車は独特の雰囲気がある。
        ビジネスマン、旅行者、老夫婦は息子の所を訪ねたのだろうか。
        コーヒーとサンドイッチを頼んだ。
        ***
        「もうすぐヘンテイですよ。」と車掌さんが教えに来てくれた。
        そして、しばらくすると列車はゆっくりと小さな駅に止まった。メルボルンから約4時間走って
        2回目の停車であった。
        ***
        後から分かったことだが、オーストラリアの特急は全て予約制でお客の乗り降りのある駅にだけ
        列車が止まるのだそうだ。だから、ヘンテイのような小さな村の駅でも特急が止まるという訳。
        国によって色々なんだなあと思った。

        ヘンテイは人口1000人の村である。しかし、駅前には銀行、病院、本屋、ガソリンスタンド、
        ホテル等一通りのものは揃っている。小学校・中学校もある。
        「ちょっと待っててください。郵便物があるかどうか見てくるワ」と言って、お母さんのジョーンが
        駅舎の脇まで行く。郵便だけは配達されるのではなくて、駅まで取りに来るのだそうだ。
        
  (2) ノール牧場        

ノール牧場には羊1000頭、牛200頭がいる。それでもオーストラリアでは小規模の牧場とか

       「昭彦にお願いがある。私の知人の家に今日本の高校生が来ているのだが、その子と話して
       もらえないか。」とジョーン。何でもホームステイで預かったは良いが、ほとんど話しもせず、
       部屋でテレビばかり見ていると言うのだ。
       ***
       「どこから来たの。」
       「高松です。」
       「どうしたんだ。何か面白くない事があったとか、困った事があるとか。奥さん心配しているゾ。」
       「いいえ、別に。テレビを見ていれば、結構英語の勉強になりますから。」
       「・・・それでも折角来たのだから、子供と遊ぶとか・・・」
       「子供と遊ンだって・・・」
       これが日本の高校生かと思うと、何となく寂しかった。
       帰り際、奥さんが、
       「初めて笑顔を見たワ。」と言って感謝された。
       *** 
       ノール牧場では、見渡す限りの草原をプラプラしながら時を過ごした。何となく時間がゆっくり
       ゆっくりと過ぎて行くような感じであった。羊は臆病でなかなか近づく事が出来なかった。
       あまり寒さを感じさせない本当に大きな冬の空が広がっていた。
       夕食を採っているとき、急に激しい雨が降り始めた。
       「こんな時羊はどうしているのですか?」
       「じっと我慢しているのみです。」
       「ム・・・・・・・・・」
       ***
       翌日、私たち夫婦はヘンテイの隣のワガワガという町から飛行機でシドニーに向かって飛び立った。