もう一度行ってみたいブルターニュ(1)
***APERITIF(食前酒)***
 フランスはふくよかなカフェオーレのかおりがする。
 ブルターニュ半島を約一週間かけて回ったのだが、フランス では辺境の地
と言われるこの地域でさえ、オーストラリアのあ
の真っ赤な砂漠やアラスカの
ツンドラとは比較にならない。ど
こまで行っても緑の大地が続いている。肥沃
な土地なのだ。フ
ランスはまことに豊かである。
 パリを歩く。東京や名古屋の街とそれ程違うわけではない。 車も地下鉄も、
百貨店も銀行も、むしろ、その違いのなさに驚
く。ただ、フランスではどこの町
へ行っても大きな教会があ
り、美術館や博物館はいつも賑わっている。宗教
が人々の生活
に根づいているし、芸術が心の奥底まで染み込んでいる。
 心の豊かさを思う

中世の城郭都市、サン・マローへ
  パリ・モンパルナス駅発9:08、
 Exp.サン・マロー行きは
私たち
 夫婦二人を乗せて静かにホーム
 を離れた。15分も走る
と、フラン
 スの大地が広がる。どこまで行っ
 ても緑のじゆうた
んである。豊か
 だ。本当に豊かだ。野を越え、川
 を越え、そし
て、シヤルトルの大
 聖堂を左手に見ながら、列車は
 西へ西へと
走る。サン・マローヘ
 走る。ブルターニュヘ走る。

  今回のフランスの旅のひとつの
 目的は、列車に乗って、自分

 好きな所へ行ってみようということ

であった。そして、フラ
ンスでは少しフランス的でない、異文化を持つブルター
ニュを
選んだ。調べれば調べる程その魅力に取り付かれた。 『フランスよりイギ
リスに近い文化を持つ』『素朴だが、と
っつきにくい人柄』『ブルトン語を話し、
他の地域のフランス
人からは少し軽蔑の意味を込めて田舎者呼ばわりされ
る地域』
『ブドウが採れないのでワインは生産されない。そのため、ブルター
ニュ料理というのは、淡泊で、概して塩っ辛い。いわゆ
るフランス料理とは全く
違う。又、酒はシードロ(リンゴ酒)
を好んで飲む。』『天然の漁港が多く、魚が
おいしい』『ゴー
ギヤンの里』等々、加えて、歴史的に見てもまだ解明されてい
ないという巨石群のあるカルナックや砂地に浮かぶ島モン・サ ン・ミッシェル、
そして何より、旅の出会いのすばらしさを考えると
列車がその夢を運んでく
れるように思えるのだ。

サン・マローは中世の城郭都市である。
現在はヨーロッパの高級リゾート地
ヨットハーバーもあり、
世界各国から観光客がやって来る
***
私は、パリから
モン・サン・ミッシェルへ行くために
まず、サン・マローに入った

予約しておいたホテルに入り、窓を開けると、甘い潮の匂いが胸にジンと迫ってきた。
砂洲の向こうの小
さな島に古い城が見える。青い海に、白いヨットが行き交う。 緩い
カーブを描く砂浜に、海水浴を楽しむ人々の姿がある。遠
くに林立するホテルとカジノ街、
サン・マローはフランスのバ
カンスの中心である。そう言えば、パリの友人がホテルの予約を
てくれた時も、ここサン・マローだけは3軒目のホテルでよう やく予約ができた。それほど
バカンス客で満員だということな
のだが、それでも、日本の混み方とは全然違う。短い夏を
楽し
む人々は、時が止まっているかのごとく、のんびり、ゆっくり としている。
  ***
 ホテルでの少しの休憩の後、私たちの部屋の窓から見える島 の古いお城へ行ってみる
ことにした。砂浜には海水浴や日光浴
を楽しむ人々が大勢いた。刺繍をしている老人に
話しかけてい
る女房の姿を写真に納めようとカメラを構えていると、突然そのアングルの
中に見事なオッパイが入ってきた。日光浴をしよ
うと中年の女性がTシャツを脱いだのだ。
その迫力に『オー!』
と心の中で叫んだが、彼女があまりに平然としているので、むしろ自
分の助平根性に赤面してしまった。
  ***
 サン・マローは海のある落ち着いた中世の城郭都市である。街の周囲を高い壁で囲まれ、
街の中心には教会がある。その教会に向かって坂道を上り、ぶらりぶらりと散策しながら歩く。
時間がのんびり、ゆったりと過ぎて行く。中世の街である。
  ***
 明日はモン・サン・ミッシェルに行く。直ぐ近くなのだから、当然、サン・マローからバスが
出ていると思って案内所に出掛けると、あるにはあるのだが、午後からでダメ。列車で行く
ことにする。日本人の感覚で旅程を立ててもダメだということがわかった。