【La France Ensemble (豊橋日仏サロン)】
《現地報告》2:パリ・ナンシーから(安部幸代さん)
<アールヌーボーの旅> 2007.1.1−1.7
お正月を娘とパリで過ごすことになった。今回の旅は「いつもお世話になっているから」と娘の招待。
従って主導権はスポンサーの娘が握ることに。娘は芸大で油絵を専攻しているので今回のテーマは
美術、特にアールヌーボー発祥の地ナンシー訪問と、最近通い始めたパン教室に因んでパンを中心
とした食ということになった。
エールフランスのチケットは迷っているうちに1日で2万円も値上がりしてあわてて購入。空港税が
22,320円と高い。1/1出発、1/7帰国便で12万強。eチケットというのは座席の予約もでき、プリント
アウト1枚でチェックインでき、こんなに簡単なものとは思わなかった。
廣田先生からは懇切丁寧なホテルや界隈の案内を頂き、同級生というだけでそれほど面識があっ
たわけでもないのにと感激。
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1/1(月)曇り 元日ということで機内でお屠蘇が振舞われた。偏西風が強く少し遅れてパリ到着。
ちょっともたもたしていてRERの乗り場に行くのが遅れ、元日のせいか5つある窓口の2つしか開いて
いず、切符を買うのに30分以上も待たされた。東駅でナンシーへの切符を買うのも、地下鉄のカルネ
(回数券)を買うのも行列。個人旅行ではこれも仕方がない。ホテルには6時半着。
娘が「自分はたまにしか海外へ行かないからいいホテルでいいよ」というので、廣田先生ご推薦の
サンジェルマン・デ・プレのしやれたプチホテル、マロニエに投宿。屋根の形に合わせて壁が斜めにな
っていて少し屋根裏部屋の趣。カーテン、壁紙とも花柄のかわいらしい部屋であるが、少し小さめ。
明日からの下見を兼ねて界隈の散策。
【マロニエの部屋】
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1/2(火)曇り 今日は買物の一日で、まず娘の
行きたいというパン屋さん巡り。たまたま一番行
きたかったというエリック・カイザーの支店を見
つけ、胡桃とレーズンのパン、珍しい栗入りパン
などとコーヒーの朝食。その後もbio(自然食)の
パン屋さん数軒で買い物。ガイドブックに紹介さ
れて日本人客が増えているらしく、一軒には日本
人店員もいた。ムフタール市場は開いていなかつたが、小さな市場などで買物。
そのあと初めて名前を聞くザッキンの美術館見学。オシップ・ザッキン(1890-1967):ロシア生まれで
若くしてパリに移住したエコール・ド・パリの彫刻家。ちょっと奥まった場所にあるこじんまりとした美術館
で、庭に展示してある作品が周囲の木立や壁と調和。展示は3部屋のみで、仏語の読めない娘にタイト
ルを読みプロメテウスやレダと白鳥の説明をしてやると、「作品を鑑賞するにはギリシャ神話も知っておく
必要があるね」とちょっと情けない感想。キュビズムの作品など結構面白かった。
ザッキン美術館 | カフェ「ル・ドームj |
藤田継治やロートレック、ユトリロなどがたむろし談論風発したカフェ「ル・ドーム」でお茶。大通りの向かい
には同様のカフェ「ラ・ロトンド」がある。ボンマルシェで買物のあと、ホテルに荷物を置きに帰って小休止。
次はデパートのラフアイエットとプランタンヘ。ここのクリスマスイルミネーションはとてもにぎやかで、ナベや
ヤカンや動物が動くウインドウディスプレイはいつも子供達に大人気、黒山の人だかりである。ショッピングの
あと、最後にシャンゼリゼのイルミネーションを見に。インターネットには1月2日頃までとあったが残念ながら
終わっていた。折角だから凱旋門まで歩く。ヴィトンの店の前には入店待ちの長蛇の列。相変らず日本人の
姿が多い。
実によく歩いた一日。万歩計は3万歩を超えてしまった。私は山へ行くから歩くのは慣れているが、娘は意外
に強くて、若さかと感心。
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1/3(水)雨、曇り 一旦ホテルをチェックアウトして、大きな荷物は預かってもらい、ナンシーへ向かう。パリ
東駅では、表示板にホームの番号が出ると、それまで表示板を見上げて待っていた大勢の人たちが一斉に
動き出したのでついていく。ミュンへンまで行く長距離列車だ。257号車というので戸惑ったが、結構いい車両。
新幹線ほど速くないが、ナンシーまで2時間40分ノンストップとは恐れ入る。
キオスクでsudoku(数独)を見つけた。日本のアニメや漫画が今フランスで大人気だそうだが、数独まで仏語
版が出ているのにびっくり。暇つぶしに1冊購入。
1:30 ナンシー着。まずナンシー派美術館へ向かう。エミール・ガレの作品を中心にナンシー派の作家達の
ガラス製品、家具調度品が並ぶ。ガレが日本人画家「高島北海」の影響を受けているというのはうれしい。
庭園もいい雰囲気。
【ナンシー美術館】
このあとアールヌーボーの建築群巡り。娘はマジョレルの家、
ロンバールとラノールの家、]]番地の家などと事細かにチェッ
クしてあり、私はついていくだけ。こんなことは珍しい。これらの
建築物はどこかバルセロナのガウディのカサミラを思わせると
言うと、ガウディもアールヌーボーだからとの返事。街並みは非
常に美しく散策だけでも楽しい。こんな街に住んでみたいものだ。
【マジョレルの家】 | アール・ヌーボー建築群のxx番地の家 |
スタニスラス広場は最近修復したそうだが、市庁舎、凱旋門、美術館、噴水などのある美しい広場。クリスマ
スの飾りつけがまだ残っている。広場近くのメルキュールに投宿。その後広場横のGrand Café、FOYで夕食。
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1/4(木)雨 ヴァイセンビュルガー宅などいくつかの建築物を見た後、ロレーヌ歴史博物館、ナンシー美術館
の見学。ここの地下にあるドーム兄弟のコレクションは圧巻。700点ほどの所蔵品のうち350点が展示されている。
初期の透明なものから、吹きガラス、被せガラス、カボション、色・形・大きさも様々の美しい作品が並び、まるでガ
ラスの森を歩いているような心地。これだけでも来た甲斐があるというもの。
【リヨン銀行の天井】
リヨン銀行は天井にすばらしいステンドグラスがあり、
断わって写真を撮らせてもらう。ナンシー商工会議所、
エクセルシオール・フロもすばらしい。娘のおかげですっ
かりアールヌーボーに魅せられた。
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6時半頃パリ東駅に到着。欲張ってこの日3つ目のポン
ピドーセンターの近代美術館に行く。かつて悪評紛々だっ
たチューブのエスカレーターで最上階まで運ばれていくと、
ライトアップされたパリのモニュメントが姿を現し、
これはもうけものといった感じ。近代美術は興味が無いし、わけが分からない。ガラクタを集めたような作品、
青く塗った四角のキャンバスだけが並ぶ部屋、剥製のヒツジの胴体にタイヤをはめたものなど、本当にケス
クセ?(これは何?)美術館は毎晩9時まで、図書館は10時まで開いていて、大人が大勢勉強しているのが
印象的。再びマロニエに投宿。この日も25,000歩とよく歩いた。
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1/5(金)曇り パン屋さんで買物のあと、コンコルド広場に出る。今日は私の趣味が強いコース。お目当ての
オランジェリー美術館は改装後、個人客は12:30からとなったので、先に装飾美術館へ行く。しかしここも11時か
らの開館なので、リヴォリ通りのカフェ・アンジェリーナでお茶とモンブラン。若い人はこんなことが嬉しいのか。装
飾美術館はルーブルの向かい側、時代毎に分けられた展示室も広く9階まであり、アールヌーボー、アールデコの
作品も少しあった。広くていくら時間があっても足りない。次があるので心を残しながら出る。
オランジェリーでも入場券を買うのに30分ほども並んだ。1日券があると便利だが、1日に3箇所くらい見ないと元
が取れないし、3つ見るのは疲れるから利用しにくい。並ぶ時間の節約と考えれば買った方が利巧かな。館内で
は楕円形の2つの部屋にあるモネの大きな睡蓮の絵をソファに座ってゆっくり鑑賞後、地下の常設展、企画展を
見る。その後、もう一度睡蓮の部屋に戻る。このくらいの規模が適当だ。
サントシヤペルまでセーヌ河岸を歩く。サントシヤペルはもう5回目だが、床から天井まで壁面を埋め尽くしたス
テンドグラスの、あの燃え立つような緋の色に出合うことは滅多にない。今の季節は天気がよくないから無理か。
ノートルダムを見た後、食料・ワインを買いながらホテルまで歩いて帰り、宴会。
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1/6(土)雨、曇り ホテルをチェックアウト後、荷物を預けて、最終日だからホテル近くのLes deux Magots(二人の
中国人形の意)でカフェ。ポットにたっぷりのコーヒーとミルクがついて税込み4.8E。娘が市庁舎まで歩きたいと言う
ので昨日とは違う道を行く。ノートルダムではミサの最中で少しオルガンも聞けた。市庁舎は見事な建物で、2ケ月
前までに予約すれば中の見学もできるようだが、今回は予約方法がわからなかった。市庁舎前の広場にはスケート
リンクがしつらえられ、子供達に混じってリュックを背負ったままのおじさんたちも滑っている。このあと、娘がケーキ
の型、手芸品など、道具屋さんを3,4軒回るのでデパートBHVの前から別行動。2時にホテルで待ち合わせの約束。
私は月並みだけどやっぱりパリの定番も見たいとサントウシュタット教会、コメディフランセーズ、パレロワイヤル、
オペラ座、ヴアンドーム広場を通り、マドレーヌ寺院まで歩く。84番のバスで街を眺めながら、リュクサンプール公園
まで行く。大勢の人が走ったり、太極拳をしていた。公園の中には多くの彫像があり、ニューヨークの自由の女神の
原型となった像の前では外国人(?)が記念撮影をしていた。ちょっと寒くてベンチでぽんやりする気にはなれず、
あずまやでサンドイッチを食べて戻る。途中のオデオン座は立派な劇場。
サントゥシュタット教会 | メディチの泉 |
カフェで休憩後、ホテルで娘を待つ。4泊もしたのに可愛らしい庭園をゆっくり眺めるのも初めて、ウエルカムドリンクを
いただくのも初めてという、せっかちな私たちだ。娘は買物のシステムが違って一人でちょっと苦労したらしいが、発酵
用のパン籠だの、貝のボタンだの、小道具をたくさん買って、ぎりぎりに帰ってきた。時間が足りなくてリュクサンプール
公園はちょっとしか見られなかったと。
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1/7(日)晴 セントレアは強風のため閉鎖。成田までつれて行かれ、新幹線で帰ってきた。名古屋までの交通費
14,000円が後日銀行振り込みされることになった。
正味5日間の滞在でナンシーにも行き、たくさんの美術館やお店を回り、街を散策した。でも本当はもう少し長く滞在
して、娘はもう少しゆっくりとスケッチなどもしたかったそうだし、私ものんびりと座っていられる時間があるとよかった。
娘にパリに連れてきてもらって本当に幸せに思う。「お母さんは自慢したがりだねえ」。ええ、ええ、こんな風に親を
パリに連れてきてくれる娘などいないもの、いくらでも自慢したいわ。
(2007.1.15 記)
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