***冬のオーヴェルニュ***
Le Puy en Velay (ル・ピュイ・アン・ヴァレイ)
 リヨン・ペラシュ駅発 7:48==(普通電車)==10:12 ル・ピュイ着          

  中世の落ち着いた都、リヨンで3泊した後、朝早くホテルを出て、普通電車でル・ピュイに向かった。
  車内は年の暮れということもあってかガラガラに空いていた。
 リヨンからしばらくは雪がうっすらとあった程度であったが、
  サン・テテ
エンヌを過ぎると、それまでのどこまでもうね
  うねと続く平坦な景色とはうって変わって山国に入り、
  急に雪が多くなった。途中、小さなロマネスクの教会を
  見ながら、二両連結のジーゼルはゆっくりゆっくりと渓
  谷を縫って走った。
 
***
 「信じられんなあ。これ、これ」と言って、私が女房に一枚の
 グラビアの写真を見せると、
 「行けるといいわね」と彼女が言った。それは、そそり立った、
 とんがった岩山の頂上に質素な小さな教会のある写真であった。
 『世の中にこんな所もあるんだ』と思った。それからもう数年が
 経っていた。

 ***
  そして、今、私たち夫婦は、中世フランスの巡礼たちの
 心の拠り所として10世紀末に建てられた【サン・ミッシェル礼拝堂】
 のあるル・ピュイ・アン・ヴァレイの小さな駅に降り立った。
 「まず、ホテルを探そう。」と言って、雪で足下のぬかるんだ道を、
 滑らないように注意しながら歩んだ。
 『IBISがある』ヨーロッパのホテルチェーンの”IBIS"が、駅から
 すぐの所にあった。
 「年末のバーゲンをやっているよ。」と女房。
 「???ホテルでバーゲン?」
 「これ!」と言って、彼女がホテルのドアに貼ってある紙を指した。
 なるほどそこには『年末・年始の割引』とあった。そう言えば、
 ベルギーのゲントの"IBIS"で泊まった時も年末で割引してくれた
 ことを思い出した。私たちの予算はだいたい2人で1泊1万円位
 である。それに比べれば遙かに安かったが、この時はアメリカ
 ナイズの"IBIS"にはちょっと泊まる気がしなかった。
  ル・ピュイの町中に入り、クラシックなホテルを見つけた。
 案内書にもあるル・ピュイでは老舗の三ツ星ホテルである。
 「高いかもしれないよ。」と言いながらドアを開けると、
 すぐにフロントがあった。値段表示を見ると、信じられ
 ない安さである。1泊295F(約5800円)とある。私が
 その安さに感激していると、女房が、
 「2泊するからもう少しデイスカウントできない?」
 

 「・・・・・」私は、彼女の度胸に少しあきれながら事態を見守る。
 「よろしい。2泊で590フランのところ、550フランにしておきましょう。」
 「言ってみるもんね。」と女房はしてやったりの顔。
 結局、2泊で約11600円で三ツ星ホテルに泊まった。1人1泊2900円、信じられない。
 ***
  ホテルで一休みしてから町の公園の中にあるインフォメーションに出かけた。こちらに来る前、
 インフォメーションに手紙を出していろいろパンフレットや時刻表などを送ってもらっている。
 私たちは旅行する前に現地のインフォメーションから情報を得ることにしている。日本の観光局
 でもいいのだが、どうしても物足りない。詳しいことは現地のインフォメーションに限るのだ。
 「ボンジュール!」と言って中に入ると、にこやかにマドモワゼルが私たちを迎えてくれた。
 日本から来たことを告げると、ちょっとビックリして親切に応対してくれた。
 そして、『
ラ・シューズ・デユーに行くかどうか迷っている』というと、
 「何も迷うことはない。是非行くべきだ。」と強く薦めた。そして、バスの時刻やら地図などを
 出してきて教えてくれた。
 親切なマドモワゼルにハンカチのプレゼントをしてそこを後にした。

 

   昼食はオーヴェルニュの料理を食べた。
 ハムや鳥のももとレンズ豆がマッチした
 煮込み料理で、特に『レンズ豆』は何だか
 醤油で味付けがされているような味でとても
 美味しかった。
 最後に、デザートとしてチーズが出る。
 好きなだけ切ってお皿に盛ってくれる。
 と言われてももうお腹が満腹でそうそう食べ
 られない。しかし、いやしい私はそれでもと
 オーヴェルニュのチーズ2種類とブルー
 チーズを薄くと言って、親指と人差し指を
 近づけるジェスチャーをして頼んだ。
 その仕草が珍しいのかちょっと離れて


 座っているテーブルの夫婦が私たちを
 見て微笑んでいた。
 オーヴェルニュのサン・ネクテールはちょっと
 ミルキーでそれでもって濃くがあって、どれ
 だけでも食べられそうな美味しいチーズで
 あった。オーヴェルニュはハムとチーズの
 とても美味しい所である。
 





 
 ***

  ル・ピュイは石畳の坂の多い中世の町である。とてつもなく大きなゴシックのカテドラルを中心に
 古い町並みが続く。

  圧巻は何と言ってもとんがった奇岩の頂上に立っている【サン・ミッシェル礼拝堂】である。
 よくもまあこんなところに建てたものと驚く。ふと『
ル・ピュイは長野と姉妹都市になると良い。』と思った。
 雪道を滑らないように注意しながら歩く。【サン・ミッシェル礼拝堂】は町のはずれにある。
 近くまで行くと更に迫力があった。
 『どこからか、岩山の頂上の礼拝堂に上れるのかな。』と思い、岩山の真下の家のドアを開けて、
 「裏の山にはどこから上がるのですか」と尋ねると、犬に吠えられた上に奥の方から老婆の声で、
 "
NON! NON!"という投げやりな声がした。『又変な奴が舞い込んで来た』と言わぬばかりであった。

丘の上からル・ピュイの町を遠望〜雲海から見えだしたカテドラル、夢のような景色

La Chaise Dieu(ラ・シューズ・デユー)

  
   ル・ピュイからラ・シューズ・デユーへは駅前から
 バスに乗った。乗客はほんの4〜5人。観光客風な
 のは私たち夫婦だけ。途中、崩れ掛けた古城を
 見ながらバスは雪原を走る。30分もすると、今度は
 森の中。 クリスマスツリーの中を走っているかの
 ようであった。途中のアレグレという村は雪の中に
 埋まって本当に綺麗でお伽の国のようであった。
 
***
  ラ・シューズ・デユーは夏は音楽祭もあって大変な
 賑わいだという。ところが、冬はシーズンオフという
 こともあってがらがらである。ホテルもレストランも半分位                                




 が休暇を取って閉めている。勿論日本人など
 いるはずもなかった。広場では子供たちが
 自転車で遊んでいた。子供は無邪気でかわいい、
 そして元気だ。雪の中を真っ白な息をはあはあ
 させながら走り回っている。最近の日本では
 見られない光景であった。
  女房が話しかけると、寒さで真っ赤になった
 ほっぺたを更に赤くしてはにかんだ。そして、
 雪の中をはしゃぎながら自転車をこぎ回った。

  町中では一家総出で家の前の道路の雪かきをやって
 いる。勿論、スコップを持って親子一緒にやってい



 
 る。この光景も
日本ではあまり見られなくなった。
 『
今の日本は何かおかしい。どこかおかしい。
 そんなことを外から見て思う。
 ***
  町中には石造りのいろいろなモニュメントが雪をかぶっていて面白かった。
 左の写真は『獅子』のモニュメント。天使のモニュメントもあった。村のゆとりである。
 私たちは、昼食のために地元の人たちで賑わうレストランに入った。若いいかにも
 働き者というマダムがメニューを持って来てくれた。いろいろ見てもあまり良くわから
 ない。私たちの困っている様子を見て、大向こうから『これが旨いぞ』と中年の
 ダンナが自分の皿を指して言ってくれた。それは鶏肉の煮込み料理でいかにも
 美味しそうであった。女房がそれを注文した。そして、私はシュークルートを頼んだ。
 果たして、鶏肉と思っていたのは七面鳥であった。初めて食べたが誠に美味であった。

 鶏のような水っぽさや臭みがなく、さっぱりしている。 それに、煮込んである
 チーズがとろけて誠に美味であった。“シュークルート”はキャベツがお皿から
 はみ出んばかりの大変な量で、ハムやソーセージもいっぱい入っている。
 感激であった。味の方も酸味が程良く美味であった。このメイン料理の他、
 女房は“ニコスサラダ”(ニース風サラダ)、私は“パイ皮包みの肉まん”みたいな
 


ボリュームいっぱいの一品。レタスがこれ又山盛りに添えてあった。
 そして、デザートは勿論チーズとケーキ。満腹を通り越して、名古屋弁で言う処の『づつない』状態であった。



  そして、赤ワインを2人で1本空けて、閉めて144F、
 約2900円。信じられない安さである。味も田舎風で
 本当のフランスの家庭料理という感じで美味しかったし、
 これなら土地の人でいっぱいになるのは当然だと思った。
 
***
  ラ・シューズ・デユーのメインは何と言っても15世紀に
 建てられた堂々としたゴシック様式の『サン・ロベール教会』
 である。かってここの修道院からローマ法王を送り出した
 ということで、森の中の小さな村が一躍有名になった。
 教会の中には、16世紀始めに織られたという大きな見事な
 タペスリーが壁に飾ってある。ただ、タペスリーに描かれて
 いる内容が宗教的な物語で全く解らなかったことは誠に


 残念であった。こんな時はパッケージツアの方がいいなあと思う。
 クリスマスの時はさぞかし村人や近在の人たちで賑わったことで
 あろうが、それも過ぎた暮れの押し迫った日であったので、教会の
 中は私たち2人きりであった。静かな時の流れを感じる。重い
 空気が敬虔な気持ちを呼ぶ。外の寒さとは隔絶された、むしろ
 暖かい空気が身を包んでくれているような、クリスチャンでは
 ないがキリストの加護の元にあるような感じを受けた。不思議な
 一時であった。
  建物から裏に出ると、雪帽子をかむった立木のある庭に出た。
 周りには綺麗な回廊があって、ぐるっと回れるようになっている。
 雪がなければ一時そこに座って静かな2人の時間を持とうと
 思ったが、暖かかった中に比べ、冷気が身にしみたのでとても
 そんな雰囲気にはなれなかった。
























Clermont Ferran(クレルモン・フェラン)
 ル・ピュイ 11:52 == SNCF普通電車 == 14:05 クレルモン・フェラン          
  雪がちらちら落ちてきたル・ピュイを後にして、午後2時過ぎ列車は予定通りクレルモン・フェランに着いた。
 
  案内書によれば、『この町は近郊で産出される黒色の
 安山岩を建物に用いているため、全体に暗い色調の
 町である』と有るため、あまり立ち寄るつもりもなかった
 のだが、パリまで戻る列車の時間の都合で3時間程
 立ち寄ることとした。                  
  この町にはタイヤや地図などで有名なミシュラン社
 がある。そのためか、オーヴェルニュで最大の町
 (13万6千人:’98 ミシュラン赤本)であるが、
 大変活気のある賑やかな町であった。                                
  ワインセラーがあったので入ると、元気の良い
 おばちゃ
んが『ボンジュール』と迎えてくれた。
 いろいろ物色しながら見ていると、『こっちに来い』

と言って手招きする。そして、地下の大きなカーヴに案内された。当たり前のこととはいえ、沢山のワインが
並べられており圧倒された。その中から、友人に薦められた『エシェゾー』など赤を3本を買った。
高いワインの
売れたおばちゃんは上機嫌でますますトーンが高くなって、包装の間 『こっちで待っていてください』と言って、
私たちを奥の部屋に案内してくれた。そこでは貫禄のある3人の男の人が飲んでいた。その中の一人は『阿部穣二』の
そっくりさんで、ド演歌風の風貌の彼がフランス語をしゃべっているのが面白く思えた。         
「兄ちゃん、いっぱいやっか」とフランス語で言われ(フランス語が解るわけではないが、そんな雰囲気)元来嫌い
ではないといおうか、むしろアルコール類の大好きな私は、小さなぐい飲み位のグラスに注がれたアルコールを
グイッとやった。                                        
「ヒエ〜!」ワオッカなのか、何なのか、とてつもなく強いもので不覚にもビックリして悲鳴に近い声を出してしまった。
それを見て、『阿部穣二』風のおっちゃん等が、
『カッカッカ』フランス語で笑った。   
***                                                  
 
行ってみないと解らない。クレルモン・フェランは良い町であった。ほんの3時間余りの滞在ではもったいない。
『又いつか来たい』と思う町であった。SNCFの座席を指定で取っていたので、予定通りの列車に乗ってパリに戻った。                                           
 ル・ピュイ2泊3日の短い『
冬のオーヴェルニュ』の旅の終わりである。                    

  クレルモン・フェラン 17:42 == 特急列車 == 21:01 パリ・リヨン駅


私の泊まったプチホテル情報

ホテル名 都市 ロケーション 星数 特 徴 評価
 1 LE MENESTREL ブローニュ・
 シュルメール
(ノール)
駅から徒歩5分
国鉄のガードをくぐる
無星 とにかく安い、さすがに星なし
漢字のプリントのベッドカバーが
掛かっていた

 2 HOTEL FRANCE &
CHATEAUBRIAND
サン・マロー
(ブルターニュ)
サン・マロー城郭入口
*** 部屋の窓からの眺めが最高
モンサンミッシェルへも近い
☆☆
 3 HOTEL
Anne de Bretagne
ヴァンヌ
(ブルターニュ)
駅から徒歩2分
** 家族的、オーナーは大泉晃にそ
っくり。奥さん手作りのケーキの
サービス有り
☆☆☆
 4 HOTEL DU COMMERCE ラ・ロッシェール
(ヴァンデ・ポワトウ)
街の中心部
Verdun 広場
** 部屋の床が傾いていて、クラクラした。
フランスの古典的なホテル
 5 EURL UNIC HOTEL トウールーズ
(ピレネー)
街の中心部
Wilson 広場北東2分
安い。部屋が広すぎる?
朝食のカフェオーレが美味
 6 HOTEL VENDOME ストラスブール
(アルザス)
駅からMaire Kuss通り
を5分右側
** 近代的である。駅と中心部の
中程で、評判はとても良い
☆☆
 7 KEMPF コルマール
(アルザス)
街の中心部
ウンターリンデンなど直ぐ
** 街のど真ん中。親父さんは
ド演歌風だがゲルマン?
☆☆
 8 DU COMMERCE オータン
(ブルゴーニュ)
駅前
安い。12/31(大晦日)
安ホテルはここしかなかった
 9 HOTEL D'AZUR リヨン
(リヨネ)
ペラシュ駅から3分 
Victor Hugo通り直ぐ左側
** 駅から近く
フロントのおじさんが親切
☆☆
10  Regina ル・ピュイ
(オーヴェルニュ)
街の中心部
(駅から徒歩5分)
*** 三っ星にしてはむちゃくちゃ安い
朝食はあまり良くなかった
☆☆

尚、宿泊料金は書きませんでした。その時によってレートが違いますし、5年も経てば違ってきますから。ただ、目安としては
パリ以外でしたら、1部屋1泊(ツイン、バス付き、2ツ星)で1万円〜8000円位でしょうか。その位を目途に私たちは現地へ行って
探しています。日本から予約して行くと随分高くなります。ホテル探しは本当に簡単ですよ。
又、上記の他良いホテルはいっぱいありました。



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