フランス・旅の極意 ルッソン8
Leçon2 ツアコンでは言えない旅のコツ
① 個人旅行のすすめ
『「パック旅行なんかクソくらえ」という勇ましい題名の本が本屋さん
の棚にあった。それを見て私は、今年の夏のスペイン旅行を冊子にまと
めてみたくなった。今回の旅は「パック旅行」でなく「オリジナル旅行」
であったが、そんなに勇ましい旅ではなく、失敗と不安の交差した旅で
あった。しかし、それだけに今思うと本当に思い出の多い旅であった。』
これは、私が4回目の海外旅行で初めて個人旅行をした時に出版した
「ビーノで乾杯」の冒頭の文章である。それ以降の海外旅行はほとんど
個人で行っている。なぜなら、個人旅行の魅力に取り付かれてしまった
からである。確かに、最初は不安だらけであった。失敗は山ほどある。
ただ、未だに命があるところをみれば大した失敗ではないし、失敗は後
から思えば旅行のスパイス程度のものかもしれない。むしろ、良き思い
出だ。
まず、個人旅行の良いところを上げれば、
*ゆっくり、のんびり自分のペースで行きたいところへ行ける。
*ホテルを1ツ星か2ツ星にすれば、期間が倍で、予算は半分位で済む。
*行く先々で土地の人たちとゆっくり接することができるし、その土地
の文化や生活なども味わうことができる。
*思い出づくりが自分の意志でできる。
ではパック旅行は全て良くないかと言えば、勿論そんなことはない。
次のようなことは個人旅行よりも良いと思う。
*困ったことが起きた時やアクシデントに遭遇した時、添乗員の方が直
ぐに対応してくれる。
*観光地で案内人が付いてしっかり説明をしてくれる。
*バッゲージを運んでくれる。
私が『海外にはツアでなく個人で行く』と言うと、必ず『言葉はどう
するノ?』と聞かれる。それに対して私は、
『フランスへ行けばフランス語、イタリアに行けばイタリア語で話すヨ』
『エエエッ!』
『そんな分けないじゃン。何とかなる。難しい議論をする分けではない
し、ビジネスで行くのでもない。万国共通のボデーランゲッジ。失敗も
また楽しい。』
『食事はどうするノ?レストランで食べる時?』テーブルの周りを見渡
して、美味しそうなものを食べている人を見付けて、『アレ!』と指せば
こと足りる。周りの人が面白がって『これはどうだ。これも美味しいゾ』
と言って集まってくる。そんな経験を何度となくした。コミュニケーシ
ョンの始まりだ。良い思い出となること請け合いである。
ツアで全部食事付きというのがあるが、あれはいけない。大体、胃に
負担を掛けるし、食べたくないものでも食べなくてはならない。
『食べンでおけば・・・』それは勿体ない。
最初は、フリータイムの多い、滞在型のツアも良いかもしれない。慣
れてきたら是非個人旅行で行ってみたいものだ。
② 搭乗はできるだけ遅くする
ピンポンパン、快いチャイムの音がラウンジに響く。
『日本航空437便、パリ行きにご搭乗のお客様、お待たせをいたしま
した。番搭乗口からご搭乗くださいませ。』待ちかねていた客がドッと立
ち上がり、ゲート前には直ぐに長い列ができる。皆の笑顔が旅への期待を
表している。
『飛行機は座席がなくなることはないので急ぐことはない』と言った友
人がいる。何回も乗っているうちにその裏の意味が解った。ほとんどの
人たちが案内されると直ぐに搭乗し、自分の席に着いてシートベルトを
締め、出発の準備に取りかかる。しかし、私たち夫婦は、このところで
きるだけ後の方で搭乗することにしている。なぜか?全部指定席なのだ
から座席がなくなるということはない。その上、遅くに搭乗すれば座席
の空き具合が分かる。運が良ければ空き席を見付けて横になって行くこ
とができるのだ。急いで搭乗することはない。この調子で夜ゆっくり寝
転がって帰ってきたことが何回かある。
アッ、ビジネスクラスで行く方にはこんな話は無用でした。
③ 食料品以外のみやげはデパートか専門店で買う
『ツアではやたらとみやげもの屋に立ち寄る。』『みやげ屋にいる時間
の方が、見学地にいる時間より長かった。』と言う話を良く耳にする。こ
れにはちゃんと理由がある。ツア客がみやげを買うと何%かのマージンが
旅行社かツアコンに入るのだそうだ。特に、安いツアはみやげ屋に立ち寄
る回数が多いと聞く。
私たち夫婦が海外旅行に行き始めた頃のこと。ローマの三越百貨店で、
ツア仲間のA氏が何と1000万円相当の買い物をした。それ以後、ツア
コン氏のA氏ご夫妻へのサービスは、それまでと全然違ったことは言うま
でもない。
私たち夫婦はと言えば、ツアコン氏に喧嘩を売るつもりはないが、みや
げ屋ではほとんど買わないし、又時には、集合時間を聞いて外へ出て行く
有様。ツアコン氏の見込みが良いはずがない。ただ、最近はツアに参加し
たことがないので、状況が変わっているかもしれない。
私たちは、食料品以外のみやげものはデパートか専門店で買うことにし
ている。やっぱり品質やサービスが違う。パリ高島屋は帰国後でもクレー
ムに対して親切に対応してくれたし、バーバリーは前年に買ったコートで
も丁寧な応対で直してくれた。私たちはこのようなサービスを幾度と無く
経験している。回数を重ねる毎に余計に思うことである。
尚、食料品のみやげはスーパーで購入することも付け加えておこう。そ
の土地、地方の美味しいものが安価に手に入る。ただ、生もの等持ち帰り
できないものには注意。『税関で没収』なんてことにならぬよう。
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【思い出の品】
(つづく)