(1) 97年度、研究の計画 ここ何年か、手をつけているいくつかの問題について、少しづつ 進展を加えつづけています。今年度の計画として、科研費の実施・申請書にかき ましたものを、ここに再掲載したいとおもいます。 A. 研究の目的 近年の有理特異点に関する研究は目覚ましく、3次元端末的特異点の森による分類および その双有理改変の詳細な研究が、3次元極小モデル理論の発展に大きく貢献したことはその 良い例である。2次元3次元有理特異点、および隣接する類の双有理変換の詳細な解析は いよいよその重要さを増してきている。ここでは、特に局所環の フィルトレーションから引き起こされるブローイング・アップの代数幾何と関連させて分類 するのが目標であるが、より具体的には、 (1) toric 写像で得られる特異点解消の canonical model や minimal model のnewton 境界の幾何による構成と、分類論的な不変量の関係。 (2) 特異点解消の例外集合の数量的データによる、解析的不変量の評価。 特に多重種数 $ \delta_m, \gamma_m $ の上からの評価。 (3) 2次元「星型特異点解消をもつ特異点」をfiltered ring として特異点をとらえ、 associated graded ring との様々な不変量の比較。 (4) 3次元正規特異点に associated graded ring $G$ がやはり正規になるような filtration があるとし、その場合に Pinkham - Demazure 表示 $G = R(E,D)$ における polarized surface $ (E,D)$ の理論より、不変量の 統制をおこなう。 研究実施計画 一般的には特異点のfiltrationは様々なデータから導入され、「general な」filtration に関する命題は同時に様々なデータから定まる不変量達の関係式を与える。(1)Newton境界の コンパクトface から決まるfiltration, (2)(3)特異点解消の例外集合にそっての消滅位数による filtration,(3)(4)特異点の${C}^*$作用から定まる次数付構造より導かれるfiltration, これらデータが絡み合って特異点の分類に幾何学的な視点を与えてくれるのである。これをサポートする理論として、申請代表者と渡辺敬一による filtered ring とfiltered blowing up の 一般論を用いる。 平成9年度に先ず着手するのは、 (1)Arnold-Laufer などによる2次元特異点の 詳細な定義式達に対する Newton 境界の解析と、toric 変換による特異点解消の標準モデル の構成。3次元以上では、非有理特異点を定める特異点の Newton 境界的な分類はまだ存在 しないが、われわれは2次元で進行している問題意識から、この分類を試みる。 (2) 極大条件を満たすクラスに生ずるゴレンスタイン性などの解析的条件の決定。 例えば、$ p_a = 1 $ (弱楕円型)について Laufer , S. S.-T. Yau および 研究代表者 (Publ. RIMS 21) などによってなされた elliptic sequence をもちいた構造論 の拡張。 これまでの結果を精密化することによって、この結果をめざす。 (3) 同特異性の問題として、効果的に考察したモデルとして、日高 - 泊の ruled surface の最小切断のblow down より得られる特異点の考察がある(Manuscripta Math. 65 )。 具体的に2次近坊の構造のみを変化させる特異点の構成法の整備をおこないたい。 (4)特に単純K3特異点と呼ばれるものについて、polarized pair $(E,D)$がモノゴナルK3曲面と 呼ばれる状況が、超曲面特異点としての特性を調べるとき重要であることがわかってきた。 まず、モノゴナルpolarized pair $(E,D)$から定まる環$R(E,D)$を環論的にじっくりしらべたい。 B. 口頭発表・セミナーなど(現在まで、そして予定) 1. Newton boundary では canonical に見える non-rational singularity について (S. Ishii との共同研究)、 京都大学理学部「代数幾何セミナー」,1997年4月25日 2. Hypersurface non-rational singularities which look like canonical from its Newton boundary (S. Ishii との共同研究)、 名古屋大学理学部「代数幾何セミナー」、1997年5月19日 3. Newton boundary では canonical に見える non-rational singularity について (S. Ishii との共同研究) 研究集会「Hodge 理論と代数幾何学」九州大学国際交流会館国際ホール (留学生センター)、1997年5月26日 4. Hypersurface non-rational singularities which look like canonical from its Newton boundary (S. Ishii との共同研究) 研究集会「特異点と複素解析幾何」、 京大数理件共同研究集会1997年7月2日 5. Newton boundary からは canonical に見える non-rational singularity について(S. Ishii との共同研究) 日本数学会総合分科会、東京大学、(代数学) 1997年9月30日〜10月3日 6. 有限位数のdivisor class group をもつ超曲面2次元正規次数付環の分類 (藤枝淳道との共同研究) 日本数学会総合分科会、東京大学、(代数学) 1997年9月30日〜10月3日
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