どのようにゲーム理論 を勉強したか


一番私が長い時間読むことになったのは、Abstract の参考文献にも書きました

[1] 渡辺隆裕:図解雑学 ゲーム理論、ナツメ社 (2004)

です。これは、見開き状態で「片面が図による解説、もう片面が文章」という形式です。
通勤電車の中で、気軽に読むような本だと思います。私もまさにそのようにして勉強しま
した。例からの入門というスタイルですが、とても丁寧に書かれていると感じられます。
 ただ、この本は、いきなり本題のナッシュ均衡が中心になりますので、講義で行った
ような Neumann 達の逸話などはすぐには読み取れないと思います。

栄養剤といいますか、お話につかうキーワードなどは、次の2書を斜め読みして
仕入れました。

[2] 中山幹夫:はじめてのゲーム理論、有斐閣ブックス(1997)

ノーベル賞の受賞理由が、ナッシュプログラムの発展・実現であることなどは、
この本から頂戴した台詞です。

[3] 鈴木光男:ゲーム理論の世界、勁草書房(1999)

Nash と鈴木さんが碁をうった話などはここからとりました。

ゲーム理論の数学的部分については、上に挙げました本では(式はところどころ
出ていますが)議論をするという段階ではありません。私が参考にしたのは、

[4] 弥永、布川編:代数学、岩波演習草書1、岩波書店(1968)

の pp.143-148 にある、線形不等式論を用いた MinMax の基本定理の解説。
(この本は、大学2年生の時に買いましたが、本当になんでも書いてある本です。)

そして、不動点定理を使う Nash 均衡点の存在定理については、

[5] 鈴木光男:ゲーム理論入門、共立全書 239 (1981)

が詳しいです。ただし、これらの証明を私は読んだわけではありません。きちんとした
参考文献として確認をしただけです。今、私が反省しなければいけないのは、Nash 
均衡点の定義をキチンとしなかったことです。ジャンケンの例は、Nash でも
混合戦略を考えなければ意味を持たない場合で、(値が 0 になる自然さは
理解できても)Nash 均衡の例としては適切ではありませんでした。少々むずかしく
ても、これは、[5] などを引用しながら紹介した方がよい部分でした。

あと、当教室の先輩の教員の方にうかがいますと、次の書物は入門書として定評がある
ようです。

[6] 武藤滋夫:ゲーム理論入門、日経文庫、「経済入門シリーズ」(2001)

この本は立派な本に見えます。[1]  のほうがより入門的でしょう。今のところ
私は、もう少し[1] を個人的な興味で読みたいと思っています。

状況が簡単な場合、たとえば、今回講義とりあげました入試時期の選択の問題
などは、Nash の考え方ですっきりと解がでるようです。

しかし、ポピュラーですが、もう少し複雑なものとして、チキン(弱虫)ゲームと
いうものがあり、これがあまり(私的には)Nash の考えではわかりません。
これは、Nash 均衡点が2個あり、度胸の無いほうが負ける仕組みがわかるものです。
しかし、現実には、両者弱虫になるのを嫌い破局を生ずるという現象が
たくさん見られます。ある意味で、実社会の現実を解析できないのです。
(素人がこういうことを言って、また誤りをするはまずいかもしれません。)

つい先日、今回の郵政解散を前にして、筑紫哲也氏が News 23  で、反対派と
賛成派の攻防に関し、「今の政局はチキンゲームになっている。」という発言を
していました。なるほどとそのとき思い、また、この文章を書いている8月8日の
解散という結論を見ると、複雑な気分がいたします。