背 広

雲見 昌弘

 約40年にわたるサラリーマン生活を終えるに当たって、用済みの背広をどうするか。捨ててもいいが新しいのもある。
 蒸し暑い日本の夏やアフリカ、ミャンマーでの勤務以外は毎日背広にお世話になった。ネクタイを締め背広を着ると気分的にもビシッとする。反対に仕事を終え家に帰り、ネクタイをはずし、背広を脱ぎ、テレビの前にどっかと座り、冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出しグビッと一気に飲みほすと急にリラックスした気分になり、その日の疲れが吹っ飛ぶ。すこし大げさだが「公」の時から「私」の時への帰還である。
 これからは「私」の時間が多くなる。多くの「私」の時間の中で今までの仕事に代わって僅かな「公」の時間になりそうなのが日曜日の礼拝だ。背広を着て礼拝に出席すると、ちょっぴり緊張して、集中力が増し、説教がよく頭に残るかも。

(くもみ まさひろ)



越谷教会月報みつばさ2010年7月号「Tea time」より